大朝日岳に行く前の日、5月4日のことです。(ショウブを見に行った日のことですね)
わが家のちいさな池のショウブを見てから、ついでにクリの林へ歩いていくと、ややや、春が来ておりました。
と言っても、ここには毎朝立ち寄るので様子はわかっているのですが、なんというのでしょうね。とある日に、ああ、これはもう春の盛りだなという瞬間があるのです。
山の草とか花とか虫とか-背景が田んぼのカタクリとキクザキイチゲ群生

ほらね。花だらけ。
カタクリの赤紫、キクザキイチゲの白。
山の草とか花とか虫とか-花畑

咲いていますね~。
これらは植えたわけではありません。生えてくるのです。
山の草とか花とか虫とか-花畑2

カタクリの大きな株。
山の草とか花とか虫とか-カタクリ

カタクリは、山形では山菜として食べます。
花と茎をすいっと抜いて、さっと茹でて干したり、そのままおひたしにしたりします。
山菜にする、というのは、数があまりそろわないような繁殖力のあまりに弱いものは美味しくても山菜にはならないように思います。食べるのが定着するには、幾年もずっと毎年食べるられるものであるからですね。当たり前ですけれど。もちろんむやみに採ってしまえば無くなってしまうので、おなじ場所からは三年に一度だけ採るだとかそういったおつきあいの仕方があるわけです。
山の草とか花とか虫とか-カタクリ群生

上のキクザキイチゲは白ですが、青紫のものもあります。
山の草とか花とか虫とか-キクザキイチゲ 青

ルリザキイチゲと呼ぶような地域もあるようですが、葉の様子などからは白と同じ種類であるように思います。ところが、青いものはスギの林の近くや日当たりが少なめなところに多く、白はより日当たりの良いところに多いような気がしています。また、白いほうが季節の早くに咲くような気がします。
山の草とか花とか虫とか-キクザキイチゲ 青 群生

清楚な白のエゾエンゴサク。
うちのクリの林にエンゴサクは数パターン咲くのですが、特徴を見て歩くと、エゾエンゴサクとヤマエンゴサクとあるようです。変化がいろいろでそのうちに気が向いたらまとめてみたいなあと思っていました。
山の草とか花とか虫とか-エゾエンゴサク

これもね、たくさん咲くのです。
写真の中心のちょっと左上にはアズマイチゲ、その奥には茎を伸ばしたフクジュソウがあります。
山の草とか花とか虫とか-エゾエンゴサク 群生

キバナノアマナもあちこちに咲いておりました。
ちいさなチューリップの仲間の草です。畑のふちや、あるいは畑のなかにも入ってきて咲いていたりしますね。
山の草とか花とか虫とか-キバナノアマナ

クリやコナラなどの落葉樹の人が入って使っているような林の林床には、これらの花がたくさん咲きます。
山の草とか花とか虫とか-キバナノアマナと枯葉の積もったの

今日載せたのはいずれも、春の雪解け後に一気に花開く植物たちで、「春植物」だとか、「スプリングエフェメラル」だとか呼ばれたりするものです。落葉する木々の林床に春早く、ほかの背の高い草たちが生える前に一気に咲くのです。この時期には、ほんとにあちこちがお花畑の様相になっているのでありました。実は今日現在は、このあとに育つ背の高い草たちがぐんぐん育ってこれらの花の背丈を追い越しています。春の進む様子の速いこと速いこと。

この日には、沢沿いにはたくさんの雪が残っていました。
残雪の融雪にともなって下へひっぱられる木。
日本海側に多く分布する樹木の共通の特徴に、幹が束生したり、枝がしなやかだったり、地面に伏すように生えたりするということがありますが、このひっぱられ具合であれば納得もいくことでありましょう。もはや、幹がひものように素直にひっぱられておりますね。これくらいに伏した木々が、雪が無くなって葉の出るころにはまた立ってくるのだから驚きです。
山の草とか花とか虫とか-引っ張られる木

このような花の時期を迎えた雪国の農村では、これから田んぼの仕事のあれこれや、山には山菜の季節になります。
山に行く前の日のことです。頼まれた用事があってこの日は家におりました。
頼まれた用事の時間まで近くの林に小鳥を見にいきます。
黄色いのがおりますね。これはキビタキのようです。
山の草とか花とか虫とか-キビタキ

キビタキは、時折地面に降りて虫をつかまえているようでした。
枝に戻って、くちばしを振り回して虫を枝にぺちん!
まわりに水滴が吹き飛ぶほどの勢いで振っておりました。
山の草とか花とか虫とか-キビタキ、虫をぺちん

なんとも難しいような声で鳴きます。
山の草とか花とか虫とか-キビタキ鳴く

用事というのは、うちの近くのショウブを見に行くことでした。
先っちょが細くて、紫色を帯びたのがショウブのようです。
その中に、いくらかガマも混じっています。ガマは葉がねじれるように生え、先っちょが丸く明るい緑色です。
山の草とか花とか虫とか-ショウブ

手に取ると、つやっとしていますね。
山の草とか花とか虫とか-ショウブの葉

葉の断面。すこしちぎると爽やかな香りがありました。
山の草とか花とか虫とか-ショウブ 葉の断面

実は、ぼくもショウブはこの時期にはっきり確認したことはありませんでした。
もう少し季節が進んだころに、花の咲くのを見たことはたびたびあります。
ふむふむ、根っこはこんなふうでしたか。
山の草とか花とか虫とか-ショウブ 根っこ
なにゆえ、ショウブを見に行ったのかというと、町のほうの町内会の子ども会で、菖蒲たたきという行事をするのに、最近はショウブが自生するところが少なくなり、行事そのものができなくなりそうだというので、どんなところにどのくらいあるのか、一緒に見に行って欲しいということなのでした。で、子ども会の大人の役員さんと一緒に下見をしたのです。

ショウブはかつて、街の近くのちょっとじめっとしたところなどにいくらでも生えていたのだそうです。ところが、宅地の開発や、川近くの護岸やそういったことが進んできたために住処がすくなくなってしまったのですね。
沼地のようなじめっとしたところは、そういうところでないと住まれない生き物や植物が多くあります。
ところがヒトのほうは、そういったなんでもないような湿ったところを好まない方がいるのです。使い道が無いような場所が身近にあるのがいやなのですね。(ぼくはそういう使い道のよくわからない場所が大好きなのですが)
この子ども会の菖蒲たたきは、ショウブとヨモギを袋かなにかに詰めて、四方から縄でひき、地面にどんどんとやるのだそうです。楽しみですね。

これは5月の4日のことでした。
サクラは満開になっておりました。山のサクラは今もまだ近くの山で咲き誇っております。
山の草とか花とか虫とか-サクラ

さて、ショウブですが、これから紫色の花の咲くアヤメなどの仲間にハナショウブというのがあります。身近にショウブというと、そちらのショウブを思い浮かべるのですが、こちらのショウブ(ショウブ湯にしたりするほう)は、サトイモに近い仲間の植物だそうです。
なお、古くは、ショウブをあやめと言ったそうです。(ややこしくてすみませんね)
それで、こちらはミズバショウです。
山の草とか花とか虫とか-ちいさな池とミズバショウ

ショウブの花はどんなのかというと、このミズバショウの白い衣の中の部分、これと似た花が咲くのです。ミズバショウもサトイモに近い仲間なのです。
ふむ、そのショウブのほうの花は、咲く頃にまた探しに行ってみましょう。
山の草とか花とか虫とか-ミズバショウの花

この日に見に行ったショウブとミズバショウの生えたところはかつて田んぼであったところでした。
うちの近くの田んぼというのは、ちいさな谷になった地形のところにその上の山から水が出て作っていた谷内田と呼ばれるところが多くありました。
平らなところの田んぼは休耕田になると堰から水を入れなくなって乾燥した草むらになったりしますが、ここでは湿地のようになっていました。
耕されなくなった田んぼには、スゲやガマが生え、それらが水面を浅くしていくとヤナギやハンノキが生え、やがて乾いた土地になっていきます。(自然に出来た湿地もそのように変化をしていきますね)
ここは谷間にダムのようになっていますから、乾いていくのにはかなりの時間を要するように思います。それまでには、いろんな生き物が住んでいくことでしょう。田んぼが減るのは残念なことですが、せめていろんな生き物が住まれるのはまだ気持ちが楽な気がします。
山の草とか花とか虫とか-休耕田

実は、うちの山のなかにもショウブがちらほらと生えるところがあります。
ついでにその近くに行くと、残雪とフクジュソウ。
山の草とか花とか虫とか-フクジュソウ

うちの山のショウブはこれですね。
うちの山のちいさな谷間にちいさな池が出来ており、ちいさい池ながら田んぼとはまた違ったトンボが飛んだりしておりました。
山の草とか花とか虫とか-ショウブうちの山
ハナヌキの分岐から古寺鉱泉へ戻ります。
ハナヌキ峰の南側には、ちいさいながら雪庇が育って、そこから雪崩が起きたりします。
前の日の登りの際には表層雪崩の跡がありました。
雪庇が崩落して落ちてくることもありえるので、ひとりひとり距離をとって歩きました。
山の草とか花とか虫とか-ハナヌキの下

下るに連れてだんだんとブナの枝は赤くなっていきます。
芽がふくらんでいるのですね。
山の草とか花とか虫とか-赤くなるブナの枝

小屋番さんがしきりに北の尾根を気にしながら歩いていました。
そのうちに、なにか見つけたようで、足を止めて小声でみんなを呼び止めました。
なにかいるのかな?
山の草とか花とか虫とか-向かいの尾根

お。
山の草とか花とか虫とか-黒いもの

おお。ぼくがうっかり声を出してしまったので、気が付かれたかもしれません。
この黒い山のおやじさんは、たいへんに耳が良いようなのです。距離はかなりあるのですがこちらに気づいているようでした。
近くでいきなり出会うと怖いものですが、これくらいに距離があると見つけてたいへんに嬉しいものですね。うわあ~、もこもこっと歩く様子がたいへんに愛らしいです。
山の草とか花とか虫とか-黒いもの大きく
ふう~。ありがたいものだなあ、とまた出てきてはくれまいかと気にかけながら歩きました。
このあたりは山のおやじさんの個体数が多く、あるてっぽうぶちする方は、おなじ場所から一度に三つも見つけたそうです。それだけ山が豊かであるという証左でありますね。
(うちの近所では、猟をする人に対してマタギという呼称は用いていませんでした。「てっぽうぶち(実際の発音はてっぽぶづ)」と呼びます。父方のじいさまや叔父、母方の親戚や近所のとうちゃんもてっぽうぶちで、猟は山菜採りやかんじきやわらじやかごやそういったのを作るのと同じくいろんなことをする山の仕事のひとつであったようです。)

登りも撮ったあのブナの木。
山の草とか花とか虫とか-あのブナの木

こちらが前日の登りで撮ったもの。
昨年は、一日で芽の様子がたいへんに違う実感がありました。
今年は微妙です。どうでしょうね。写真の撮り具合でしょうか。
山の草とか花とか虫とか-あのブナの木、前の日

道を行くと、アカミノイヌツゲの雪に伏したものがありました。
ハイイヌツゲなどは、全体がひょろひょろして雪の下にいますが、こちらは雪の無い時期には結構高く立ち上がります。今は幹全体が横たわっておりますね。
夏になったら根元の様子など見てみたいと思います。
山の草とか花とか虫とか-アカミノイヌツゲ

ヒメコマツの尾根に着くと、古寺鉱泉はもうすぐ。
下山の際にここに着くと、もうそろそろ山にいるのがおしまいの淋しさと、無事に帰られる安心なのとが心にありますね。
山の草とか花とか虫とか-ヒメコマツの尾根

イワウチワは数多く咲いていました。
山の草とか花とか虫とか-イワウチワ

古寺鉱泉へ斜面を下ります。
こういったところも割合に危ないので、滑落しないようにしないといけません。
小屋番さんが手を広げているのは、くつの底でスキーのように滑っているのです。
山の草とか花とか虫とか-斜面を下る

古寺鉱泉あたりに着くと、ショウジョウバカマやオウレン、キクザキイチゲにミヤマカタバミなどが咲いていました。
山の草とか花とか虫とか-ショウジョウバカマ

古寺鉱泉について、12時48分に。
下山はみんなでわいわいとのんびりくだりました。
駐車場の近くの沢には、ミズバショウとリュウキンカが咲いていました。
山の草とか花とか虫とか-古寺の駐車場の裏手の沢

帰りは、小屋番さんが気になっている木がとある公園にあり、それを見に行くことにしました。
そのまえに大井沢のそばやさんではらごしらえ。
焼酎を背負ってきてくれたから、というのでそばをごちそうになってしまいました。
板に盛った板そばでした。しっかりした食感のそばです。このあたりの水はまぎれもなく美味しい水で、それゆえにそばもおいしゅうございます。
山の草とか花とか虫とか-そば

ということで、長くなりましたが、今年の5月の大朝日岳に行ったおはなしはおしまいになります。
なお、ルートなどのまとめはヤマレコという記録用のサイトに載せました。

ヤマレコ:5月初旬 雪の大朝日岳へhttp://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-297302.html

こちらの記載は、あっさりしております。危険箇所なども記入しました。参考まで。

しばらく、この山登りの記事を書いている間に、里の季節はかなり春が進みました。田んぼにはカエルも鳴く夜になったのです。