読了。
台湾の女性作家による「台湾漫遊鉄道のふたり」の主人公である日本人女性作家の設定の参考となったのが林芙美子。
近現代の日本女性作家を紹介した「悩んでもがいて、作家になった彼女たち」にも林芙美子は取り上げられており、本書に触れていた。
林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里 (編)立松和平
読み終えて、「解説」で立松和平氏が編者だと気づいた。なんと、なんと。
中国の東北部を中心とする各地、シベリア鉄道、パリ、ロンドン、樺太、日本各地などの旅のエッセイを収録。
シベリア鉄道のこの部分には驚いた。(太字部分は本書からの引用)
「モスコーへ行く日本人は私一人なのです。マンジュウリの領事から、モスコーの広田大使へ当てての外交書類を是非持って行ってほしいと云う事が持ち上がりました」
ひえ~。
この「外交書類」というのが…「五ッ所も赤い封蝋のついた大きな状袋」で、もし調べられた場合の備えとして、「露文で、外交官としての扱いをして戴きたいと云った風な、大した添書」ももらったらしい。
昭和6年発表のエッセイである。この時代に…、密使のような役割をよくまあ引き受けた、なんて「肝っ玉」の大きな女性なのだ…。
ロンドンのこの部分には、吹き出してしまった。
「倫敦の博物館は素的ですよ。全く、大きな声では云えないのですが、よくもあんなに世界各地から大泥棒が出来たものだと思いました。」
本書によると、日本の青銅器なども沢山あったそうだ。
このような感想は様々なメディアでよく目にするが、「大きな声では云えないのですが」と書かれていて、どんな顔の表情で林芙美子はこう書いたのかと思うと、吹き出してしまった。
そして、この部分もイギリスでの記述。
「ここで一番面白く見たものに、均一百貨店が沢山ある事でした」
え?「均一百貨店」とは?と読み進めていくと、
「この百貨店に入ると、六ペンス(約二十四銭)以上のものは絶対にないのです。六ペンス以下の商品ばかり」
とある。この「六ペンス(約二十四銭)」は現在でいうといくらくらいか。
本エッセイは昭和7年発表である。
検索すると、昭和7年の銭湯入浴料が7銭。白米10㎏が1円41銭。
昭和10年の物価の記載も見つけ、並寿司が25銭、蕎麦1杯が10銭。こちらのほうがイメージしやすいか。
「日本にもあるでしょうか?きっとまだ出来ていないと思います。一ツの街々にはかならず一軒はその百貨店があるのですけれど」
え、そんなに一般的な?現在の100円ショップの高級版(?)のようなイメージか。
エッセイには詳しい販売品目も記載されており、日用雑貨、アクセサリー、裁縫材料、食器、調理具、食品、衣類などなど、それこそ「百貨」のラインナップ。
食堂やカフェも併設されていたようだ。
「全く豊富な六ペンスの店で、一ペンスの散紙まであるのですからチョウホウです。ここだけは芋を洗うように繁盛していました」
こう書いてあると行ってみたいと思う。現在はないのだろうなあ。
巻末の「林芙美子略年譜」を見て、これらの旅の前にご結婚されていたことに気づいた。そして、エッセイ中に配偶者についての記述が無かったように思う。
この時代の女性として、かなり特別で、斬新というか。
そしてエネルギッシュ。
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三越日本橋本店で催されていた「あんこ博覧会」で求めたものを、賞味期限を見つつ、毎日のお楽しみに味わっている。
少し前に味わった記録。
「御菓子司 庵月」のブースでは色々求めた。
「栗岩瀬」
栗入りかるかんである。
ピンぼけの写真であるが、記録のため掲載。
かるかん、村雨、栗、と素晴らしい組み合わせ。
大変美味しかった。売っていたら手が伸びると思う。
金沢の「茶菓工房たろう」の「キューブもなか 窓」。
左は「あんこ de チャチャ茶♪」のテーマで作られたもの「濃茶」
右は定番のもの。
ずっと食べたいと思っていた「窓」である!
左が「濃茶」で、しっかり抹茶味で美味しかった。右の定番のものも美味しかった。両方とも、ホイップバターと粒あんが入っており、味の組み合わせがナイスである。
中身の濃厚さと本体の大きさもとても良い。