読了!

 

昭和13年。

作家・青山千鶴子が台湾講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。

現地の食文化や歴史に詳しい王千鶴とともに、台湾縦貫鉄道に乗り、各地を訪れて台湾の味に魅了されていく…、そして…。

 

台湾漫遊鉄道のふたり (著)楊双子 (訳)三浦裕子

 

 

描かれている台湾の料理が美味しそうで、いてもたってもいられないような気分になった。(太字部分は本書からの引用)

 

麥煎餅は丸い鉄板で焼かれる大きなパンケーキのようなものだ。(中略)熱した丸い鉄板に生地を流し入れ(中略)表面が乾き始めて黄金色に変わるころ、その上に粗糖、落花生粉、すりごまなどを振り返る。こてで真ん中から二つに折り、(中略)半円形のところを二つから四つの三角形に切り分ける。小豆やクリームの餡を挟んだものもある。だが、生地の香ばしい麦の香りに一番合うのは、やはり落花生とごまだと思う

 

ピーナッツ&ごま味のどら焼きを想像した。

 

王千鶴が「伝説級の女性料理人が作ってくれたまかない料理」として青山千鶴子に語る「蛤仔煮麺」。

 

これは「蛤スープの煮込み麺」で、「さいの目切りの豚肉とみじん切りの青葱を強火で炒め、蛤と扁魚酥[舌平目の干物を揚げて粉末にしたもの]でとったスープを加え」、「大麺」を入れて煮て、「どんぶりによそってから肉臊をのせ、ほんの少し白胡椒をふります」とある。

 

肉臊」は、物語に何度も出てくる。豚ひき肉の肉みそのようなものだ。

 

扁魚酥」も興味がある。舌平目の干物をそのまま粉末にしたのではなく、揚げてから粉末にするしたもの…手がかかっている。

 

蛤と豚肉でどんな味になるのだろう…。

 

そして、「伝説級の女性料理人」が料理のコースも物語に登場し、これが、また、何と言っったら良いのか…。

 

料理名だけでもメモしておこうと思ったのだが、非常に品目が多いので諦めた。

 

今まで出てきた品々は、すべてあっさりと上品な味わい。それでいて余韻が長く残る。味付けや食感が重複した品は一つもない。下にも腹にも過度な負担を強いることなく、いくら食べても飽きさせないのだ

 

うーん。

 

日本語版あとがきに、食べられる季節や地域が限定されるものもあるが、「小説に登場させたほぼすてべの食べ物は、現代の台湾でも味わえるものを選んでいます」とあった。

 

本書は大変読みやすい文章で、上述した美味しい食べ物も登場し、すいすいと読み進められる。

しかし、「訳者あとがき」にこうあった。

 

土地や財産のみならず、言葉、文化、アイデンティティまでを奪われる台湾人、統治者と被統治者の間に存在した越えようのない溝、そして日台の女性たちが置かれていた不自由な境遇……。本作の著者・楊双子は、こんな重い論点を、楽しげな要素をちりばめた小説の中で、直球で読者になげつけてくる

 

まさに、甘いも辛いもある物語であった。

 

また、王千鶴のモデルとされる台湾人初の女性新聞記者の楊千鶴について書かれている部分があると、この書籍が紹介されていた。

 

少女中国 書かれた女学生と書く女学生の百年 (著)濱田麻矢

 

青山千鶴子の設定の参考となったとされる林芙美子のこの書籍も読んでみたいと思った。

 

愉快なる地図-台湾・樺太・パリへ  (著)林芙美子

 

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最近食べた美味しいもの。

愛知県の「美濃忠」の「紅茶レモン羹」。

 

 

これがまあ、びっくり。

 

 

本当にレモンティーの香りがする。味も。

このようなタイプの羊羹は初めてかも。

 

 

お店のウェブサイトに「レモンを浮かべた紅茶を表現した洋風羊羹」とあった。

これから、名古屋に行ったら、色々美味しい物を求めるのに忙しくなりそうだ。