勝手に論愚選 【日経俳壇2024.06.08】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【日経俳壇2024.06.08】
[横澤 放川 選]
捨ててこそ黒田杏子の花の闇 (東京 藤井 正幸)
〔評〕一遍は自身の全ての文書も焼き捨てて入滅した。杏子さんの生涯も同じ心のいわば俳句賦算(ふさん)の道だった。氏のもう一句を添えたい。〈花の奥より南無観世音観世音〉
ビル街は白骨遺跡遠霞 (広島 山根 吉久)
〔評〕都市構造に対する痛烈な意見表示。高い塔に登って見下ろしてみればいい。碌に樹木もない悍(おぞ)ましいビル郡。遺跡とも墓碑群とも。
先生に問ふやうにして花に問ふ (東京 筑史 善正)
〔評〕追悼句としてよく心鎮めて、しかも平明で深い詩として詠いあげた。年どしの花に問いゆかん。
五十四帖のみ照らし出す春ともし (取手 長瀬 道子)
〔評〕桐壺から夢浮橋まで、源氏物語がほのと灯に浮きたつがに。
交番へ母手づくりの桜餅 (島根 重親 峡人)
もう一年まだ一年と杏子の忌 (楢 辻本 照代)
荷風忌や何はともあれ神谷バー (東京 朝田 黒冬)

[神野 紗希 選]
初夏や龍眼食めば汐のあじ (日野 ayanok)
〔評〕初夏の汗ばみじゃ舌に沁みる汐の気配が、龍眼という果物のアジアンな印象を濃くする。本物の龍の眼を嚙む壮大な想像も愉しい。
アボカドの芽出でし日とや書き留めむ (芦屋 増崎 直子)
青艸番屋の主婦の蛸カレー (横須賀 門馬 恵子)
かの国の孑孑自由ありやなし (神戸 井上 徳一郞)
山鳩や枕を濡らす春の夢 (志木 谷村 康志)
ちびちびと一パイントの薄暑光 (東京 黒木 慶英)
万緑や唐十郎の赤テント (下妻 神部 貢)
花筏部活LINEを去る先輩 (さいたま 出島 千穂)