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空の欠片　魂葬屋奇談　　九条菜月

空の欠片―魂葬屋奇談 (C・NOVELSファンタジア)/九条菜月: ￥945; Amazon.co.jp

　本日ご紹介するのは、九条菜月さん作『空の欠片　魂葬屋奇談』です

　この作家さんは以前『ヴェアヴォルフ　オルデンベルグ探偵事務所録』という作品でご紹介しました

　『ヴェアヴォルフ』が大変面白かったので、別シリーズのこの作品にも注目していました

　私の場合、特定のシリーズに入れ込むと、その作品の世界観を大切に思うあまり、別コンセプトの作品に対して躊躇することが往々にしてあります

　「魂葬屋奇談」シリーズにもそういった思いが無きにしも非ずだったのですが、思い切って読んでみてよかったと思います

　２０世紀初頭のヨーロッパを舞台にした「オルデンベルグ探偵事務所録」シリーズとは違い、「魂葬屋奇談」シリーズは現代が舞台ですが、それぞれ世界設定がツボに入りました

　「魂葬屋奇談」シリーズは、現代日本の高校生活をベースにして描かれます

　そこにファンタジー要素として、死後の世界の住人を登場させています

　魂葬屋と名乗るその人物の役割は、不慮の死に遭い、この世に留まってしまった魂を成仏させることです

　突然の死を遂げた魂は、魂が欠損してしまって成仏できないので、欠落部位（魂の欠片と呼ばれます）を探し出し、魂を補修することで成仏させることが出来るという設定です

　主人公は、普通の人には見えない霊的なものが見える特殊な能力を保有しています

　その能力を買われて、魂葬屋が魂の欠片を探す手伝いをさせられるというストーリーです

　相原深波は男子高校生

　ある日、同級生の須藤楓が学校の３階にある音楽室から転落死しました

　音楽室の窓には転落防止の手すりがついており、事故ではないようです

　転落の状況に不審な点があることから、警察が捜査を開始します

　そんな時、学校の中で他校の制服を着て歩き回る少年に出会います

　その少年は魂葬屋のユキ

　ユキは普通の人の目には見えないはずの自分の姿が深波には見えていることに驚き、深波に自分の仕事の手伝いをせよと迫ります

　ユキの仕事は、成仏できない須藤の魂を補修して、成仏させること

　不信感でいっぱいの深波でしたが、押しの強いユキに巻き込まれ、魂の欠片の行方を探すことになります

　魂の欠片は、死を迎えたときに傍にあったものにくっついている可能性が高いことから、転落現場や遺留品を調査しますが、欠片は発見できません

　何らかの理由で遺留品が持ち去られていたとしたら？

　須藤の死には第３者が関わっている可能性が強くなります

　それは須藤を殺した犯人なのでしょうか？

　設定はファンタジーですが、ストーリーの性質上ミステリ要素も多分にあります

　主人公の深波の年の離れたお兄さんが刑事さんだし

　超能力抜きで捜査するし

　本格とは言えないまでも、事件の謎解きもあるしで、ミステリとしても楽しめると思います

　また、主人公が思春期の高校生ということもあって、成長物語としても楽しみです

　さらに、押しが強く底抜けに明るい魂葬屋のユキのまだ語られないバックグランドには陰の気配があり、物語に深みを与えています

　この作品に興味を持った方に他にもおススメする作品があります

　神永学さん作『心霊探偵八雲』です

　この作品は、霊を視ることができる赤い左目を持った男子大学生が主人公

　その瞳をもってオカルト絡みの事件の謎を解きます

　『心霊探偵八雲』はシリーズ化されており、角川文庫から順次文庫化しています

　それから、赤川次郎さんの『三毛猫ホームズの傾向と対策』です

　大学教授殺害事件とその裏に隠された受験に関わる大掛かりな犯罪の謎をホームズと片山が追いかけるというストーリーです

　『空の欠片』とは事件の真相が似ています

　本選びの参考にしていただけたら幸いです

【映画】なくもんか

　先日、「Disney'sクリスマス・キャロル」と自主的に２本立てで、宮藤官九郎脚本、水田信生監督の「なくもんか」を鑑賞しました

　主演は阿部サダヲさん

　この面子は、映画「舞妓Haaaan!!!」と同じです

　実は私、「舞妓Haaaan!!!」も劇場で観ました

　何気にこのメンバー、好きなのかしらん？

　コメディタッチで場面転換のテンポがよく、ドタバタ劇の印象があります

　前作「舞妓Haaaan!!!」では、舞妓好きの男の、舞妓に情熱を傾けるが故の、サクセスストーリーでしたが、今回の作品「なくもんか」はホームドラマです

　物理的にも精神的にもバラバラだった家族の再生が描かれていると思います、断言は出来ませんが（笑）

　本作品にも、コメディタッチの手法は活きていて、登場人物はそれぞれに苦悩を抱えているのだろうけれど、その悩みすら笑えてしまう感じなので、あまり深刻に悩んでいるように思えないのです

　家族の再生などと書くと、家族が本音で真剣に向き合って、ボロボロになりながらも、家族のよさや絆に気づいて一つになっていく…というイメージがあります

　「なくもんか」でも、そういうシーンがあるにはあるのですが、話し合いながら論点がずれていったりして、まるでコントのようで、冗談を言い合っているようにしか見えません

　それなのに、なぜかほろっときてしまう

　阿部サダヲさんのオカマちゃんに爆笑し、そして感動しちゃったりします

　不思議な映画です

　「舞妓Haaaan!!!」より、確実にいい映画になったと思います

　この作品の主役は、お互いに名前も顔も知らない兄弟です

　両親は別居し、父に引き取られたお兄ちゃんの祐太は、父の友人の家に置き去りにされてしまいます

　しかし、父の友人の山ちゃんは、祐太を実の息子のように育ててくれ、店まで譲ってくれます

　祐太は恩返しのために、働きに働き、商店街の人たちの手伝いをします

　その様子は、バカがつくほどのお人好し

　度が過ぎたお人好しぶりのため、働くバカ、と呼ばれています

　一方、弟・祐介は幼くして母をなくし、親戚中をたらい回しにされてきました

　度重なる転校でもいじめられずに済ますために身につけた技、それがお笑いでした

　祐介はお笑い芸人を志し、今は「金城ブラザーズ」というコンビを組んで大ブレイクしています

　そんなある日、祐太に店を譲ってくれた山ちゃんの実の娘で、１０年前に家を出たきり音信普通だった徹子が帰ってきます

　以前はどうしようもなくおデブちゃんだった徹子ですが、すっかりやせて美人になって戻ってきたのです

　ドサクサに紛れてプロポーズしや祐太は、めでたく徹子と結婚することになります

　婚姻届を出すために取った戸籍謄本で、弟が「金城ブラザーズ」の祐介だと祐太は知ります

　しかし、生き別れた弟との再会は思ったような甘いものでなく…

　祐太は兄弟の絆を取り戻すために頑張り、そのことが予想外の出来事を巻き起こしていきます

　思わず「うっそ～ん！」と言ってしまうような出来事の数々、丁々発止のコミカルなやり取り、散りばめられたパロディ、そして何故か泣き所がある、笑ったり泣いたり忙しい映画です

１１月のまとめ♪

　またまただいぶご無沙汰をしていました

　先月末より姪っ子&甥っ子タイフーンが我が家を席巻しておりました

　子どもっていうのは絶えず体を動かしていないと駄目な生物らしく、飛んだり跳ねたりめまぐるしく活動していました

　そういう姿を見るのは大変心が和むのですが、５歳になる姪っ子の「遊んで！遊んで！」攻勢にはやられました…

　７ヶ月の甥っ子の必殺技「魅惑の微笑み」にも抗しがたいものがあり、結局遊び相手を務める羽目になって、くたくたになるという日々を送っておりました

　お陰で本を読む暇もなく、況やブログをや、という状況でした

　彼らは昨日ようやく帰宅したので、これで思う存分本を読めると幸せを噛み締めています

　ブログも少しずつアップしていくので、よろしくお願いします

空の欠片 魂葬屋奇談 九条菜月

【映画】なくもんか

１１月のまとめ♪

空の欠片　魂葬屋奇談　　九条菜月