昨日に引き続き、早速第1回をお届けしたいと思います!
いきなりですが質問です。
SFC受験生の皆さん、そもそも「総合政策」って何か分かっていますか?
指導をしていて気がついたのは、一番基本的な「総合政策学部が何を勉強するところなのか」を、曖昧にしか理解していない人が非常に多いことです。でもそんな状態で、総合政策学部の理念に沿った良い論文なんて書けるはずがないと思いませんか?理念が分からないんだから。
そんな方にオススメなのが、2010年度の総合政策学部の問題です。
この年度の問題では、資料1で「総合政策とは何か?」についての学生と教授の対話文が掲載されています。これがパンフレットよりも分かりやすくてなんともご親切です。
問題文や回答の添削に沿った解説などは他のブログで沢山やっていますから、僕はこの資料の要点について説明していきます。要するに…
(1)「政策」とは:「ガバメント」ではなくて「ガバナンス」
(2)「総合」とは:「諸科学横断主義」=「問題中心主義」
(3)大切なことは:「問題の構造化」と「解決策の検討」
この3点が、総合政策学部の基本的な考え方です。ここが分かっていない人は、どの年度の小論文を書いても的外れになってしまうので、ちゃんと読んでください。
今日は、このうちの(1)の解説をします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)ガバナンスって何?
元来、政治は「中央政府(ガバメント)」が行うものでした。そして政治の役割の一つは、社会を正常な状態で維持すること(言い換えれば、社会問題を解決すること)です。
ところが、現代にむかって社会の構造が複雑になってくるにつれて、政府の行う政治だけでは社会の問題を解決することが出来なくなってきました。
この最たる例が2010年のテーマになった「介護労働者不足問題」です。
「自力で生活出来ない高齢者をサポートする人がいない」のは大きな社会問題ですから、当然政治によって解決されなければいけません。
ではどうするか。極端な話をすれば「政府が必要な人員を全員公務員として雇って訓練する」ことが出来ればこの問題は解決してしまうわけです。
でもそんなこと出来るわけないのは分かりますよね。
・政府には全員を雇うお金もないし、訓練する技術も人もいない。
・地方によって高齢者の人数や事情も違う。しかもそれらを把握しきれない。
これはともに「中央政府の能力だけでは、現代の問題を解決できない」ことを表しています。
そこで、政府以外の色々な登場人物が必要になってきます。
・法人…人を雇って訓練して、実際の介護活動を担う
・地方自治体…地方ごとの情報や事情を把握して、その地域にあった政策を決定する
・NPOやNGO…上記活動から漏れてしまった人たちを支えたり、穴を埋める
・コミュニティ…高齢者の家を訪問したり、地域で支えるボランティアを行ったりする
というように、それぞれの組織だからこそ出来るアプローチを組み合わせて、1つの問題の解決にあたるわけです。中央政府にできることは、これらの活動が最大限有効になるように、制度を整備してあげること(つまり方向性をしっかり示して、レールを敷くこと)くらいです。こうした統治方法をガバナンスと呼びます。
そして総合政策学部は、現代社会は「ガバナンス」によって統治されるしかないと考えています。
この考え方に沿って見るならば、
・「政府による診療報酬の引き上げ」は、中央政府(ガバメント)による政策の限界と見ることができます。
・そして、各主体の活動をサポートする制度整備を行っていない点が、批判されなければいけません。
ex.)離職理由や不満を見ると「経営者の能力不足」が介護労働者不足の大きな要因になっていることは確実である。であれば、能力開発の為の制度支援を行わなければ、報酬を上げても離職解消にはつながらない。
問題の順番が前後してしまいますが、
これが、問3の回答(A党の政策提言へのコメント)の基本方針になってきます。
「診療報酬引き上げ」を肯定的に論じて終わってしまっている回答は、「基本理念を理解していない」と見られかねないので、気をつけた方が良いですよ。
<回答例>
私は有効でないと考える。何故なら、資料2表1から介護業界の人材不足が高い離職率を原因としていることが分かるが、資料2表3・4より、その原因が賃金だけにあるとは言えず、たとえ介護報酬引き上げがなされたとしても離職率が直ちに減少するとは考えにくいからだ。むしろ労働環境の改善勧告及び支援、人材教育の制度支援などを通して事業所の自助努力を促し、離職原因となっている不満を減らすよう努めるべきだ。(190文字)
また後日紹介しますが、「ガバナンス」の概念をしっかりと理解しておくことで、総合政策学部が期待している「回答の指針」が自然と見えてくる場合が数多くあります。
(逆に言えば、この部分が分かっていないと見えてこないということです。)
【推奨する課題】
自分が知っている社会問題を、この視点で一度分析し直してみてください!
![ロゴスタガヤス!](https://stat.ameba.jp/user_images/20130727/17/logosies/b5/0b/j/t02200165_0800060112624391998.jpg?caw=800)
※次回は、(2)「総合」とは:「諸科学横断主義」=「問題中心主義」の解説です。お楽しみに!
いきなりですが質問です。
SFC受験生の皆さん、そもそも「総合政策」って何か分かっていますか?
指導をしていて気がついたのは、一番基本的な「総合政策学部が何を勉強するところなのか」を、曖昧にしか理解していない人が非常に多いことです。でもそんな状態で、総合政策学部の理念に沿った良い論文なんて書けるはずがないと思いませんか?理念が分からないんだから。
そんな方にオススメなのが、2010年度の総合政策学部の問題です。
この年度の問題では、資料1で「総合政策とは何か?」についての学生と教授の対話文が掲載されています。これがパンフレットよりも分かりやすくてなんともご親切です。
問題文や回答の添削に沿った解説などは他のブログで沢山やっていますから、僕はこの資料の要点について説明していきます。要するに…
(1)「政策」とは:「ガバメント」ではなくて「ガバナンス」
(2)「総合」とは:「諸科学横断主義」=「問題中心主義」
(3)大切なことは:「問題の構造化」と「解決策の検討」
この3点が、総合政策学部の基本的な考え方です。ここが分かっていない人は、どの年度の小論文を書いても的外れになってしまうので、ちゃんと読んでください。
今日は、このうちの(1)の解説をします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)ガバナンスって何?
元来、政治は「中央政府(ガバメント)」が行うものでした。そして政治の役割の一つは、社会を正常な状態で維持すること(言い換えれば、社会問題を解決すること)です。
ところが、現代にむかって社会の構造が複雑になってくるにつれて、政府の行う政治だけでは社会の問題を解決することが出来なくなってきました。
この最たる例が2010年のテーマになった「介護労働者不足問題」です。
「自力で生活出来ない高齢者をサポートする人がいない」のは大きな社会問題ですから、当然政治によって解決されなければいけません。
ではどうするか。極端な話をすれば「政府が必要な人員を全員公務員として雇って訓練する」ことが出来ればこの問題は解決してしまうわけです。
でもそんなこと出来るわけないのは分かりますよね。
・政府には全員を雇うお金もないし、訓練する技術も人もいない。
・地方によって高齢者の人数や事情も違う。しかもそれらを把握しきれない。
これはともに「中央政府の能力だけでは、現代の問題を解決できない」ことを表しています。
そこで、政府以外の色々な登場人物が必要になってきます。
・法人…人を雇って訓練して、実際の介護活動を担う
・地方自治体…地方ごとの情報や事情を把握して、その地域にあった政策を決定する
・NPOやNGO…上記活動から漏れてしまった人たちを支えたり、穴を埋める
・コミュニティ…高齢者の家を訪問したり、地域で支えるボランティアを行ったりする
というように、それぞれの組織だからこそ出来るアプローチを組み合わせて、1つの問題の解決にあたるわけです。中央政府にできることは、これらの活動が最大限有効になるように、制度を整備してあげること(つまり方向性をしっかり示して、レールを敷くこと)くらいです。こうした統治方法をガバナンスと呼びます。
そして総合政策学部は、現代社会は「ガバナンス」によって統治されるしかないと考えています。
この考え方に沿って見るならば、
・「政府による診療報酬の引き上げ」は、中央政府(ガバメント)による政策の限界と見ることができます。
・そして、各主体の活動をサポートする制度整備を行っていない点が、批判されなければいけません。
ex.)離職理由や不満を見ると「経営者の能力不足」が介護労働者不足の大きな要因になっていることは確実である。であれば、能力開発の為の制度支援を行わなければ、報酬を上げても離職解消にはつながらない。
問題の順番が前後してしまいますが、
これが、問3の回答(A党の政策提言へのコメント)の基本方針になってきます。
「診療報酬引き上げ」を肯定的に論じて終わってしまっている回答は、「基本理念を理解していない」と見られかねないので、気をつけた方が良いですよ。
<回答例>
私は有効でないと考える。何故なら、資料2表1から介護業界の人材不足が高い離職率を原因としていることが分かるが、資料2表3・4より、その原因が賃金だけにあるとは言えず、たとえ介護報酬引き上げがなされたとしても離職率が直ちに減少するとは考えにくいからだ。むしろ労働環境の改善勧告及び支援、人材教育の制度支援などを通して事業所の自助努力を促し、離職原因となっている不満を減らすよう努めるべきだ。(190文字)
また後日紹介しますが、「ガバナンス」の概念をしっかりと理解しておくことで、総合政策学部が期待している「回答の指針」が自然と見えてくる場合が数多くあります。
(逆に言えば、この部分が分かっていないと見えてこないということです。)
【推奨する課題】
自分が知っている社会問題を、この視点で一度分析し直してみてください!
![ロゴスタガヤス!](https://stat.ameba.jp/user_images/20130727/17/logosies/b5/0b/j/t02200165_0800060112624391998.jpg?caw=800)
※次回は、(2)「総合」とは:「諸科学横断主義」=「問題中心主義」の解説です。お楽しみに!