『シウォンさん!』
 
キュヒョンくんのパパは控室のベンチに座っていた。顔を両手でおおって。俺に気づくとすぐにたちあがって
 
『ドンへさん。この度は本当に申し訳なく...』
 
それはもーいいですから。それより、キュヒョンくんは?ヒョクチェを抱っこしたまま。俺から離れよーとしないから、看護師さんに断ってつれてきた。彼も一緒に
 
『生命に別状はないようなんですが...』
 
まだ手術が終わらなくて...そのとき、廊下をあわただしく看護師さんが行きかっているに気がついた
 
『保護者の方ですか?』
 
シウォンさんを見つけて。はぃ。私です。キュヒョンに何か...
 
『出血が想定よりひどくて輸血が追いつかないんです。他にも重症者がいて血液が足りなくて...』
 
え...こちらでも手は尽くしているんですが、提供できる方がいらしたら申し出ていただきたいんです
 
『キュヒョンくんの血液型は?』
 
『A型です』
 
お、俺、A型です!彼が手をあげる。そーはいっても彼もケガ人だ。この後急変しないともかぎらない
 
『シウォンさんは?』
 
シウォンさんをふりかえると、ふっと顔をくもらせた。俺は...B型なんです...え...なんで...
 
いや、俺が動揺してる場合じゃない。そーだ。キュヒョンくん
 
『俺、A型なんで提供できます。献血は何度かしたことあるし』
 
ドンへさん...
 
『キミは会社のひとに連絡して。提供者を募って』
 
こんな天気だから、無理なく来れるひとを。わかりました!ともだちにも連絡してみます!
 
『いや...私的なことに社員を使うわけには...』
 
シウォンさんが難色を示す。何をいまさら...
 
『それならキュヒョンくんの名前は出さないで話しをします』
 
俺の知り合いを助けたいと。それならいいですよね?彼がシウォンさんの顔を見上げる
 
シウォンさんがうなづくのを見て。俺、ちょっと電話してきます
 
ヒョクチェ。抱っこしていたヒョクチェをベンチにすわらせる。パパはちょっとご用があるから、キュヒョンくんパパと一緒にいてくれる?
 
ん...すぐ?すぐきてくれる?うん。すぐもどってくるよ。あたまをなでて。キュヒョンくん、いたいいたいなの?またじわっとなみだをにじませて。大丈夫だよ。パパがお手伝いしてくるから
 
シウォンさん、ヒョクチェをお願いします
 
キュヒョンを...キュヒョンをよろしくお願いします
 
シウォンさんが深々とあたまをさげた
 
 
《つづく》