バックドラフトという映画。 | むすめの右フック

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バックドラフト (1991)
原題:BACKDRAFT
時間:136分
製作国:アメリカ
ジャンル:サスペンス/アクション

【監督】ロン・ハワード
【出演】カート・ラッセル / スコット・グレン / ジェニファー・ジェイソン・リー / レベッカ・デモーネイ / ロバート・デ・ニーロ / ウィリアム・ボールドウィン


コチラは、ネタバレしてます。
ネタバレ無しは、コチラ→バックドラフト


この映画は、消防士の男たちが炎と闘うお話ですが、火災パニックな面白さだけじゃなく、消防士の父の跡を継いだ兄弟のドラマと、連続放火事件のサスペンスな面白さも合わさり、とても見応えがあります。

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で、その炎と闘うシーンの描写はスゴイです。炎が唸り声を上げて舞い上がる様は、猛獣でも襲いかかってくるかのような迫力です。まるで、炎に意思でもあるかのように、うごめきコチラを睨みつけてきます。

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そして、放火事件の犯人を突きとめる件は、ロバート・デ・ニーロ扮する捜査官とドナルド・サザーランド扮する服役中の放火魔が、重厚感たっぷりに盛り上げてくれます。

この二人のエピソードだけでも、一つの映画になりそうなぐらい魅力的です。





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そして、放火魔のサザーランドが、放火犯の心理を見抜き、犯人の人物像を特定して行く様は、羊たちの沈黙のレクター博士のようで面白い。

で、サザーランドが「ケダモノの目を見たか?」と主人公に詰め寄るシーンでは圧倒されます。言ってるサザーランドの目が、すでにケダモノの目ですからね。はっはっはっ



そして、私が、この映画で好きなトコロは、兄弟のドラマの部分ですね。
とくに、兄と弟の関係が、父と息子のように描いてあり、とても面白い。

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この兄弟の父は、彼らと同じ消防士だったんですが、彼らが幼い時に殉職しています。それも、たまたま現場についてきていた次男の前で爆死という壮絶な最期。このコトは、その後の彼の生き方にも 影響してるんですが、この映画は、そんな彼の心の葛藤や苦悩、そして成長していく様をじっくりと丁寧に描いていきます。

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で、そんな過去のせいか この弟君、大人になっても意気地がない。
でも、なんとか覚悟を決め、消防士の道を選ぶんですが、人事課に酒を送り、楽な部署に送ってもらうよう頼んだりして、やっぱり意気地がない!

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そして、そんな弟に立ちはだかるのは、すでに消防士のお兄ちゃん。
そんな弟の企みなんか アッサリ見抜いて、一番キツイと言われる17小隊に配属させちゃいます。17小隊はアレです。お兄ちゃんの隊! そして、
お兄ちゃんのモーレツしごき教室が始まる。はっはっはっ

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$むすめの右フックしかしカート・ラッセルは、ハマり役でしたねぇ。とくにあの、少し狂気じみた目が良いですね。あと、弟から見た長男の傲慢さや 身勝手さが見事に描かれてます。

っていうか、見事すぎる!

たぶん この脚本家は次男ですね。まるで、
ウチの兄貴を見てるようだ!はっはっはっ




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そして、この弟くんは、何かにつけて 子ども扱いするお兄ちゃんに、一泡吹かせたいと頑張ります。いや、ちょっとでいいから褒めてもらいたいと頑張るんですね。おそらく、お兄ちゃんに父の姿を重ねてたんでしょう。

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このアタリ、お兄ちゃんの初登場シーンで、火災現場の中から出てきた兄の影を、まるで、父の亡霊でも見てるような、そんな、ちょっと、ビックリした表情を見せてます。で、そうそう、冒頭の父役は、カート・ラッセルの一人二役でもありましたね。

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で、このお兄ちゃん。とにかく強い信念の男として、弟とは、対極な感じで描いてあります。おそらく、目の前で壮絶な父の死を見た弟と違い、彼は、父の勇敢なトコロだけを見て育ったからでしょう。あと、父の死後は、文字通り彼が、弟の父親代わりとして、面倒を見てきたので、弱い部分を見せるワケにはいかなかったのかもしれませんね。

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でも、そんな彼も、時には凹みます。そんな時、誰にも頼るコトが出来ず、つい別れた妻のトコロに行き、慰めてもらうシーンは、そのギャップに胸が熱くなりますね。そして、次の日の朝、息子に「またな」とお別れを言いますが、それが、息子の見た父親の最期の姿となります。

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で、そうそう、この映画で、いつも上手いなぁって、感心させられるのが 弟の顔つきですね。最初と最後で まるっきり違うんですよね。最初は、本当、甘ちゃんな顔してて、このお兄ちゃんでなくても イジメたくなるんですが、ラストの顔はね。


酸いも甘いも噛み分けたような良い顔してるんです。で、後輩の服装をチェックしてあげたり 貫禄さえ見てとれます。たかだか2時間のドラマで、これだけ、しっかりと成長を見せてくれるアタリは、いつも驚かされますね。

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そして、それぞれのお話が、一つに収束していくクライマックスは圧巻。

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$むすめの右フックお兄ちゃんの強い信念と激しい感情が 凄まじい炎のように爆発します。この時のカート・ラッセルの形相は観てて怖いほどです。

ただ、弟の雄姿を見つめる目には、まるで、我が子を見守るような、そんな優しさも見てとれます。 見てくれ、さすが俺の弟だ。


あれほど弟が聞きたかったであろう言葉を 最後の最後に投げかけます。
そして、救急車で運ばれる兄の最期の言葉、もうサイレンは うんざりだ…

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お兄ちゃんは、仕事の鬼でも、炎にとり憑かれた狂人でもなく、
ただの 弟想いのお兄ちゃんだったんですね。

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そしてラスト、感傷に浸る暇もなく、すぐに出動のサイレンが鳴り響き、思わず苦笑いしながらも、車に乗り込む弟の目の光がね。お兄ちゃんソックリなんですよ。そして、それは、父親から受け継がれてきた光でもあります。ただ、弟の方が、優しく余裕があるように見えますね。

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