小学5年生の頃。
もうずいぶん昔の話だけど、この事はよく覚えてる。
私の通っていた小学校では、5年生の夏になると1泊2日でキャンプをする自然教室という行事が行われていた。
その場所は、G阜県の川の近くにあるキャンプ場で、昼間は川で遊び、夕方になると飯ごうで米を炊き、皆でカレーを作って食べた。そして夜になるとキャンプファイヤーをして何かの踊りを踊らされた。
キャンプファイヤーが終わると、森の中の静けさを感じ、微かに川の流れる音と虫の音だけが聞こえてきた。
そんな自然の中で、友達と笑い話をしたりふざけあったりして遊んでいた。
夜が更けて来た頃、遠くの方からカーン、カーンと不規則に乾いた音が鳴り響いてきた。
明らかに誰かが何かを叩いてる音が山の中に響き渡っていたが、なんだろう?くらいにしか思わなかったし、一緒に起きていた周りの皆も気にした様子は無かった。
深夜に真っ暗な山の奥深くで、誰が何を叩いていたのか、結局分からなかった。
私がまだ低学年だった頃、5-6年生のお兄ちゃんやお姉ちゃんから聞いていた自然教室の噂話があった。
5年生になったら自然教室へ行く事になるけど、絶対に川の石をもってきたらダメだよ。と言われていた。
合戦場だった場所だから、川の物を持って来たらダメなんだよと。
だが当時はよく分からず、ふーんそうなんだくらいに思う程度だった。
そんな噂話の事はすっかり忘れて、小学生の自然教室に土産といえるような物は何もないので、川の石をお土産に拾い、自宅へ持って帰ってきた。
そしてその石を寝室の足元の方にあるタンスの上に置いて寝た。
川の字の形に、母が隣、その向こうに弟が寝るといった具合に寝ていた。
夜中にふと目が覚めた。足元に目をやると、その石からモヤモヤと煙のようなものが出ていた。
なんだこれは??と不思議に思い、起き上がろうとするが体が動かない。
どうがんばってもまったく動かない。初めての金縛りというやつにあい、心底ビビった。
隣で寝ている母を起こそうと、がんばって体を動かそうとしてみたが、全くビクともしなかった。
目の前の現実に驚きながらも、睡魔には勝てず、次第に意識は遠のき眠りについていた。
しばらくして、また目が覚めた。
目が覚めたというか、目の前に何か気配のようなものを感じて、目を開いた。
距離にして1cmくらいだろうか。
自分の目の前に、何かがあるのが分かった。
ほぼゼロ距離で、近すぎて何なのかはよく分からなかった。
しばらくじーっと見つめて、それが何なのか確認してみると、
目、鼻、口、それぞれの位置や輪郭で、それが顔だと分かった。
そしてはそれは温度の感じられない呼吸というか、息のようなものを吐いていた。
吸う事は一切無く、ゆっくりと フワーっと 吐き続けていた。
その顔は自分と同じ向きで目の前にある。
あれ、おやじ? おやじはまだ起きてるはずだから、おやじ?
おやじがイタズラしてるのか? え?
いたずらにしては近すぎる距離感と、顔色の悪さにおやじではない事に気づいた。
なんだこれは。。
目をつむり、顔に当たるか当たらないか、ギリギリの距離に手をあててみると分かるが、目をつむっていても手の気配を感じつつ、体温を少し感じて何かモワっとした感じがあると思う。
その気配だけを感じられて、体温のない感じと言ったらいいだろうか。
血の気の無い気配だけ、モワっとした何かそういうものを感じて目を開けると、それがいた。
いや、目の前にあった。
体を動かそうと思っても、まったく動かない。声を振り絞って出そうとしても出ない。
その何者かとしばらく至近距離で見つめ合った後、というか正確には顔だと確信した時、急に怖くなり目をつむった。
しばらくしてだろうか、また目が覚めた。
恐る恐る起きていない振りをしながら、うす目で少しずつ目を開いた。
周りに知らない人が4-5人座り、私を囲んでいた。
そして全員がこちらを見ていた。
着物を着たお婆さん、まさに武者という感じの甲冑を着た男達がいた。
完全に今の時代のものでも 人でも無き何者かに、周りを囲まれていた。
この時は動いてみようなどと抵抗もせず、恐怖の余りまたすぐに目をつむった。
次に目を開くと、天井がいつもよりかなり近くに見えた。
足元に目を向けると、テレビの高さくらいまで自分が浮いている事に気づいた。
浮いてる!?と思うと同時に、一瞬で元の寝ている位置に叩き落された。
その瞬間、まるで寝ていたかのようにバッと飛び起き、目が覚めた。
怖くてすぐに起きていたおやじの所へ行き、お化けでたー!と一部始終を説明したら、酔っ払ったおやじがなぜか手作りのラーメンを作ってくれて、一緒に食べてまた普通に寝た。
こんな幼少の頃の記憶がある。
それ以来、そんな体験をする事は二度となかったが、その日をきっかけにしばらく金縛りには合うようになった。
大人になって全部夢だったのだろうなとは思っているが、あまりにも真に迫る夢だった。
そして当時、あれは絶対に夢なんかではない、夢だという事にしてはいけないと思っていた事を覚えている。
























