多くのテクノロジー企業の経営者にとって、新規株式公開(IPO)は大金を手に入れるチャンスだが、IPOに先立って大金を手に入れる新興企業の創業者が増えつつある。16日に株式を公開したソーシャルゲーム開発大手ジンガのマーク・ピンカス最高経営責任者(CEO、45)もその一人だ。
当局への提出文書によると、ピンカス氏は今年3月、保有する自社株の一部をジンガに売り戻し、1億900万ドル(現在のレートで約84億円)以上を受け取った。
ジンガはピンカス氏から1株当たり約14ドルで株を買い戻したのに対し、ジンガの公開価格は1株当たり10ドルで、ピンカス氏はIPOで得る以上の利益を手に入れていたことになる。公開価格に基づいたジンガの時価総額はストックオプションを含めおよそ89億ドル。
ジンガの広報担当者はコメントを拒否した。
IPO前に株式を売却したテクノロジー企業の創業者はピンカス氏が初めてではない。例えば、2004年に上場したクラウドコンピューティング大手セールスフォースのマーク・ベニオフCEOは上場の数カ月前に保有する自社株の一部を投資家に売却した。
当時と今で異なるのは売却額の大きさだ。クーポン共同購入サービス、グルーポンの共同創業者エリック・レフコフスキー氏とブラッドリー・キーウェル氏は先月の株式公開のおよそ1年前にそれぞれ3億ドル分と1億3300万ドル分の同社株を投資家に売却した。アンドリュー・メイソンCEOは1000万ドル分の株式を売却した。
レフコフスキー氏、キーウェル氏、メイソン氏は代理人を通じて、コメントを拒否した。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは昨年、同社の株式1億ドル分をニュージャージー州ニューアーク市の公立教育機関に寄付することを申し出た。この際、ザッカーバーグ氏が自身の保有株式をフェイスブックか投資家に売却したかははっきりしない。フェイスブックの広報担当者はコメントを拒否した。
IPO以前に大型の株式売却が行われるということは、人気の高い一部のテクノロジー企業は株式公開前から数十億ドル規模の高い評価を受けているということだ。ベンチャー投資会社エルドラド・ベンチャーズのチャールズ・ビーラー氏は「株式公開前にここまでの規模に達している企業はほとんどなかった。だから、(株式を売却する)機会もなかった」と述べた。エルドラド・ベンチャーズはジンガに投資していない。
ビーラー氏はIPO前に株式を売却する経営者は増えているが、数億ドル単位で株式を売却する創業者はほとんど見たことがないと言う。
しかし、IPO前に株式を売却できるのはその企業の株式への需要が高いことを示しているとみる向きもある。ビーラー氏は「自分が投資した企業の経営者が株式公開前に1億ドルを引きだせるようであれば、それはうれしい悩みだ」と語った。ビーラー氏はまた、経営者は1社に自分の財産を集中させず、分散投資すべきだと述べた。
ピンカス氏が3月に売却した株式は保有する自社株のほんの一部で、同氏の財産はジンガに託されている。当局への提出書類によると、ピンカス氏が3月に売却した株式数は780万株で、現在の保有株式数は1億1200万株超(全株式の16%に相当)。公開価格に基づくと、ピンカス氏の保有株の価値はストックオプションを除いて11億2000万ドルに上る。
ピンカス氏がジンガに株式を売却したときには、同社の社員のほとんどが自社株の売却を禁じられていた。ジンガは同じく3月にベンチャーキャピタルファンド数社などの投資家からも株を買い戻していた。
当局への提出文書によると、ジンガは今年上半期の同社の企業価値が140億ドルに相当するという第三者評価を受けており、これがピンカス氏の株式売却額の根拠となっている。事情に詳しい関係者によると、同社は200億ドルの企業価値を目指していたが、今夏の株価下落で多くのIPOが低調だったことを受けて、価値は半減した。
3月にジンガ株を売却した投資家のうち、最大の売却額はベンチャー企業ファンドリー・グループの2250万ドルで、ピンカス氏の売却額1億900万ドルにははるかに及ばなかった。
今月、ジンガが当局に提出した文書によると、ピンカス氏以外で同社の現在および過去の従業員がこれまでに売却した株式は合計5120万株で、売却価格は1株当たり25セントから17.09ドルだった。ジンガは誰がいつ何株を最高価格の17.09ドルで売却したのかについては、明らかにしていない。同社によると、2010年に実施した公開株式買い付けには298人の従業員が応じている。
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