2019.12.10 ドメーヌ・ユドロ・バイエのドミニク・ル・グエン氏を迎えてのワイン会。 | SINのブログ

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ブルゴーニュのシャンボール・ミュジニーにドメーヌを構えるユドロ・バイエのグエン氏とは4年ぶり、3度目。
顔をクシャクシャにしての笑顔がチャーミング。
 
元フランス空軍のメカニック("Dassault Mirage 2000"を担当)していた彼は、ラガーマンでもあり、とにかく真面目に厳しく丁寧に真剣に、ワイン造りに情熱を注ぐ職人。
 
 
今回のラインナップは以下。
 
<泡>
(泡は作っていないので、ヌーヴェルさんのオススメ)
・Simon-Devaux Brut NV
PN60%,Ch20%,PM10%,PB10% 柔らかく深い余韻、冬に合うシャンパーニュな感じ。
 
<白>
・Bourgogne Chardonnay 2017
グリーンがかった淡いイエローがエチケットとぴったり。キレがあり中程度の酸のバランスがきれい。
 
<赤>
・Bourgogne Rouge 2017
ピンクがかった鮮やかな色はガメイを連想。キャピキャピしたとてもフレッシュさがかわいい感じ。
 
・Chambolle-Musigny Vieilles Vignes 2016
深い色合い。クリアでピュア。シルキーでそよ風のよう、ざらついた要素など一切感じさせず綺麗。
 
・Chambolle-Musigny 1er Cru Les Charmes 2017
村名CMより濃密さがあり、超ピュア。非常に滑らかでネガティヴな要素が皆無。深く暗い海底に静かに引きずり込まれるのに抗えず、むしろ一緒に沈んでいきたいような感じ。
 
・Bonnes Mares 2016
濃厚さはシャルムの比ではなく、一回りも二回りも大きなスケール感。もう美味しい。すごく。
 
総じてエレガント。
若いうちから美味しいが、熟成でも良くなる。でも今からこれだけ美味しいのだから、もし熟成保管に失敗したら悔しくてやりきれないので、早く飲みたくなってしまう。
しかし15年後のボンヌ・マールがどうなるのか、気になる・・・
 
 
グエン氏は本当に日本のことを気に入っていて、他国の場合プロモーションで訪れても、参加者たちは一緒に飲んで楽しむだけだが、日本人は本当に一生懸命話を聞いてメモを取ったりしている(←私とM川さん該当)。そういう想いはとても嬉しい。
 
終了後の片付けではグラス拭きを手伝ってくれたグエン氏、また来てほしい。
ビストロ・プペさんの料理も相変わらず美味しゅうございます。今年最後になるかもしれないなぁ。

 
 
 
 
== 以下、備忘録 ====
 
・ワイン造り
シャンボール・ミュジニーらしさをちゃんと造りたい。奇をてらった事は何もしない。ブドウはすべて手摘み、6人で厳しく選果、茎の苦味をワインに付けたくないので100%除梗。発酵中に生じるCO2で果帽が浮かび上がり表層に固まるので、撹拌のために2つの作業。
1.櫂入れ(パンチングダウン/ピジャージュ)→力強いワインになる
2.ポンプで下から上へ循環(ポンピングオーバー/ルモンタージュ)→抽出が穏やか
ということで、シャンボール・ミュジニーは最初にピジャージュをやって、あとは主にルモンタージュを行う。

樽についてはいろいろ実験中。新・古・産地・ロースト具合もすべて別々の40種の樽で仕込み、あとで大きな樽で混ぜる。ベストを探っている。この辺は技術者の要素なのだろう、おもしろそうだ。
環境や持続可能サステイナブルへの意識が非常に高く、HEV認証を来年には取れそうだ。(ドメーヌで使う紙はすべて再生紙だったり、車はHVエコカーだったり、とにかく環境を強く意識して取り組んでいないと認証は取れない)

厳しい選果の基準は、そのブドウを食べたいかどうか。はじいたブドウは格下のワインに使うのか?と聞いたら、そこはマジメな彼、はじいたブドウは使わない。その代わり、家族や仲間で飲む用としてロゼを仕込んでおり、それに使っているとのこと。CM1級のブドウで仕込むロゼも興味深いが、はじかれるブドウはむしろACブルゴーニュからの方が多いそう。たしかに上のクラスだと収穫以前に房で間引くからね。
 
 
・温暖化の影響
異常気象は深刻で、ゲリラ豪雨のような異常天候などもあり大変だ。ここ数年はそれまでの50年間をはるかに凌ぐ勢いで温暖化が進んでいる。冬が短く、早くに芽がでてしまう。しかし春の霜で芽が凍り落ちる。これを防ぐために霜対策で焚火をたくのだが、そこで生じるCO2も真面目な彼を悩ませる。ヒーターによる温風は平地には効果的だが、シャンボールの斜面の畑には・・・。
ただ、早くに出た芽が落ちた後にもう一度出た芽が成長してやがてブドウになる。収穫も1カ月ほど遅らせ、収量は減るが何とかワインのクオリティは維持。
温暖化による気候変動で、ブルゴーニュではいずれHautes-Côtes de Nuitsがとても重要になるかもしれない。ヴォーヌ・ロマネでシラーを作る、"ブルゴーニュ・ロティ"なんかができたりしてね! と笑うが、笑えない。

気候変動は大変だが、やりがいもある。経験を結集し、昨年より美味しいワインを造ろうとしている。
 
 
・メカニック
元・戦闘機のメカニックにとっては、トラクターの修理などお手の物。どうしても直せない部分だけディーラーに依頼するが、ディーラーの修理判断にも「違う、そこじゃなく、ココがこうなっているからこうしなくてはいかん」と正しい指摘ができるほど。なので、ワイン造りに使う機材などはあまりに簡単。。。
 
 
・ラグビー
グエン氏はラグビーを通じて奥様と知り合い、婿としてドメーヌに参画。長男のコランタンもラグビーをしていたが、怪我(脊損)により車いすラグビーへ。18歳の時に自身でチームを作り活動していく中でチームはどんどん強豪へ。そして今やフランス代表のトップ選手に上り詰めた。来年の東京はもちろん、さらにその次のパリでのパラリンピックではフランス代表キャプテンになって活躍するといわれるほど。

現在、22歳の次男はドメーヌの仕事を手伝っており、25歳の長男もパリ五輪後はドメーヌで働く予定。そのためにカーヴを拡張し、バリアフリー化。拡張工事の写真をたくさん見せてもらった。かたい岩盤を地下6メートルほど掘削する現場、並ぶ重機の写真を見て、グエン氏が作業服とヘルメット姿で現場に立つ姿を想像してしまった。似合っている。