ブリーフにはスタンダード、セミビキニ、ビキニといった種類の区別のほかに、ハイレグ、ローレグさらにはハイカットやローカットといった形(カット)の区別もあるようです。ではこのような種類や形はどのように区別され、その相互関係はどうなっているのでしょうか? さらに穿き心地との関係はどうなのでしょうか?
と改めて振り返ってみると、意外と種類や形の区別というか定義について知らずに、各人各様で漠然と捉えているケースが多いようです。そこで今回は、生地が木綿主体の一般的で標準的なブリーフを対象に、この問題を採り上げます。
以下はkia***さんから頂いた解説です。国内WEB等でよく目にするような説明とは違い、具体的かつ客観的で明快です(私自身もスッキリとしました)。なお、kia***さんは幼少年期に欧州居住で、その後も中長期および短期の滞在を繰り返してこられた方です。このため、国内的視点だけでは要領を得なかったことが明確化されていると思います。
図1.国内型(米日型)ブリーフの種類と足口カットの比較.A:スタンダード、B:セミビキニ、C:前開き型ビキニ、D:前閉じ型ビキニ.「腹部―腰部―太股」が互いに重なるサイズに縮尺調整して比較.足口カット位置の比較のために、足口の最下端=股の付け根と足口の最上部に赤い水平線を引いてあります。
2.足口カットの種類および前開きとの関係
次に、足口カットについてもう少し詳しく述べます。足口の前裾が太股の付け根のV字型ラインよりも下側に来るのがロー(レグ)カットlow (leg) cut、ラインと一致するのがノーマルカットnormal cut、上側に来るのがハイ(レグ)カットhigh (leg) cutと定義されています。したがって、図1のブリーフは種類名によらず、すべてがロー(レグ)カットです(下の参考図を参照下さい)。
前開きが和服の前合わせと同じ構造(米国式)の場合は、よりシャープなカットにして股幅全体を狭めることが幾何学的に難しいこと、無理にそうすると前開きの実用性が失われてしまうのがその理由です。要するに、あの前開き構造、同一の足口カット」に対して、「バリエーション=穿き込みの深さ」となるのは必然的ということになります(注1)。
前開きがない場合は、足口カットの制限がなくなります。これを例示したのが図2です。Dは前閉じなのでよりシャープなカットが可能な筈ですが、A~Cに親しんだ国内状況を考慮してローレグカットにしているのでしょう。
図2.国内のビキニブリーフと欧州型クラシックブリーフ(非ビキニ型)との比較.C:国内前開き型ビキニ、D:同前閉じ型ビキニ、S:欧州型クラシックブリーフ(フランス製).CとDは足口の裾が太股の付け根ラインよりも下側に沿っているローレグカット、Sは裾が付け根のラインに沿ったノーマルカット。またさらに、CとDは股上が短いローライズ型であるのに対して、Sは穿き込みがより深いミッドライズ型であることに注意。
穿き心地については各個人の好みの問題ですので善し悪しは一概に言えないと思います。私個人はSのブリーフが気に入っています。子供の時から慣れていることのほか、下半身の動きを邪魔せず、ホールド感はあっても圧迫感がなく、高湿度の夏でも蒸れにないことなどがその理由です。
本記事から個人的に感じたこと: 以上の説明を改めて読むと、「国内で広く普及していたブリーフが近年は流行外れとなり、廃れ気味になっていること」の一原因をも指し示していると感じます。それは、「国内ブリーフのデザイン・形状の単調さ」です。
つまり、再掲図1のA~Dを見れば明らかなように、名前(種類)付けを色々と変えていても、実質的なバリエーションは「股上の長さの長短」だけしかありません。ブリーフという下着で重要な、太股の付け根~股間部の被覆状況やフィット性は単調そのものです。したがってA~Dを穿き分けても、変わるのはへそ下長さの触感だけとなります。またいくらカラーや模様を変えても肝心な「穿き心地」には影響しません。
と言うことで、重要部形状と穿き心地がオソロシイほどの単調さで半世紀以上を経ていますから、飽きられるのは仕方がないでしょう。
今後はこの辺の国内事情を海外とも比較して考えて行きたいと思います。