今週来週と、忙しいので、
父のお見舞いには行かれそうにない。

なので、母には
毎日電話をしている。

父は、血糖値が300もあり、
今は、熱が高く、血圧も高いらしい。
が、お医者さんからは
何にも説明がない。

母は、友人のご主人が入院したとき
入院費が高くて大変だった、
聞かされたらしい。

そうだよね。
ホント、私もなんとかしたいと思いつつ、
申し訳ないが、
自分の暮らしに余裕がない。

「ホントだよね」
と相槌を打つ。
「困るよね」
なんて言ってもみた。

「でもさ、お父さんが一生懸命働いて来たのに、
粗末には出来ないもんね」
と母が言った。

そりゃあそうだ。
粗末にはする気はないけど、
あんなにイヂワルをされて
困らされて、
嫌な思いして、
たくさんたくさん泣いてたくせに、
そんな風に思う母に
驚いた。
これが、夫婦ってもんなのか?

私には、わからない世界だ。
だけど、
いつか歳をとって、二人の暮らしになったら、
そんな風に思うのかな?

2月の半ばには、
うちまで電車で来れた父が、
あっという間に動けなくなり、
栄養は鼻から、
そして排泄はオムツ。
なんて、
想像もしてなかった。

人が生きて行くのも
またわからない世界だ。






ICUから、出てからお見舞いに行った。

口をポカンと開けたまま、
目はうつろ、
鼻にチューブがつながれ、
栄養をそこから取る。
一定の時間に血圧が測られ、
身体は動く気配がない。

ただ、人の気配は感じるようで、
目の前に私と母が立ち、
「わかる?」と問いかけると、
うなづく。
誰?
と聞くと、
小さく息のような声で
「にょうぼう」と言った。

わかっているようだ。

お医者さんの説明を聞くため、
兄も一緒にいた。

病院というところは、
入院患者の家族が説明を求めない限り、
お医者さんは動かないものなのだろうか?

前回入院していた病院も、
今回の病院も、
同じ対応だ。

今、父が、
というか入院している患者が
どんな状況で、
コレからどうなって行くのか、
家族は知りたいところであり、
知る必要があるのではないかと。

そして、
脳外科の先生からのお話は、
入院してからまた、脳梗塞を起こしたこと。
今後は、リハビリの専門病院の空きが出たら
転院予定だということ。
父が家に帰る、という事は、
当分先になる事。
(可能性は、低そうだ)
というお話だった。

父も家族も
選択肢はない。

私たちが出来る事は、
介護ではなく、
励ましなのか。

ただ…。
正直、今後のお金の事が気になった。

病院にいるしか
選択肢がなくて…。



木曜日の夕方、
母から電話が鳴り、
父が救急車で運ばれたという。
足腰が痛いというので、
近所の接骨院に行って、
施術を受けている時に
意識が遠のいたとの事。
金曜日に
MRIの検査を受ける病院に運ばれ、
入院する事になった。

どちらにしても、
金曜日に行くはずだったので、
たいして驚かなかった。
姉も仕事を休んで、
一緒に電車で行く事にする。

母と一緒に
病院に行くと、
点滴やら、
血圧計やら、
心電図?やら、
やたらと身体につけられ、
しかも手には手袋をはめられている。
そして、身体にも
以前入院していたときと同じように
ベルトをつけられていた。
私たちに気づき、
「俺には、大人がついていてくれてるから、
お前たちは、きちんと子供の面倒を見なさい」
と言う。
そして
「手袋を外してくれ」
と。
看護婦さんに声をかけ、
外してもらう事に。
病室から出る時に、
「ご家族の方がおかえりになる時に、
一言ナースセンターに、
お声をかけてください。
手袋をいたしますので」
と告げた。

父と話し始めると、
「俺は、もうだめだ」
とか、
何か夢でも見ているのか、
変な事を話し始める。
「ご飯は食べたの?」
と聞くと、
「食べた」と答えるが
何を食べたとかは言わない。
時計を見るとお昼だ。
「俺は良いから、
帰りなさい」と
気を遣ったりもする。

とりあえず、
母と姉と私は、
お昼を食べにいき、
食後にもう一度
父のところへ行くと、
「お前たちは、一体どこへ行ってたんだ!!
何度も電話が鳴って、
大変だったんだぞ!!」
とかんかんに怒っている。
ここは、病室だ。
当然、電話等ない。

でも、そんなやり取りにも
みんな慣れて来てもいる。

色々な物に
縛り付けられている父を後に
また、自分の生活へ戻る。

翌日、
また母から電話が鳴る。
「血圧が下がったので、
ICUに入る事になった」と。
脳梗塞を起こした部分が、
広がっていて、
血圧も下がっているとの事だ。
手術でもするのかと思ったら、
そうでもなく、
母の説明もよくわからないまま。
日曜日に行こうかと思いつつ、
結局疲れて行かれなかった。

父の命が
病院に管理され始めた気がした。
冷たい自分に気づきながら、
父の望む事が
そんなことなのか、
姉と話した。

手袋をされ、
ベッドにベルトで身体をくくりつけられ、
点滴をされ、
一定の時間ごとに
血圧計を計られ、
おかしな数値になると、
ブザーが鳴るような暮らし。

命に対して。

父を家に帰したい。

ただ、日々の父の世話をするのは
母なので、
簡単に提案できない。