木曜日の夕方、
母から電話が鳴り、
父が救急車で運ばれたという。
足腰が痛いというので、
近所の接骨院に行って、
施術を受けている時に
意識が遠のいたとの事。
金曜日に
MRIの検査を受ける病院に運ばれ、
入院する事になった。

どちらにしても、
金曜日に行くはずだったので、
たいして驚かなかった。
姉も仕事を休んで、
一緒に電車で行く事にする。

母と一緒に
病院に行くと、
点滴やら、
血圧計やら、
心電図?やら、
やたらと身体につけられ、
しかも手には手袋をはめられている。
そして、身体にも
以前入院していたときと同じように
ベルトをつけられていた。
私たちに気づき、
「俺には、大人がついていてくれてるから、
お前たちは、きちんと子供の面倒を見なさい」
と言う。
そして
「手袋を外してくれ」
と。
看護婦さんに声をかけ、
外してもらう事に。
病室から出る時に、
「ご家族の方がおかえりになる時に、
一言ナースセンターに、
お声をかけてください。
手袋をいたしますので」
と告げた。

父と話し始めると、
「俺は、もうだめだ」
とか、
何か夢でも見ているのか、
変な事を話し始める。
「ご飯は食べたの?」
と聞くと、
「食べた」と答えるが
何を食べたとかは言わない。
時計を見るとお昼だ。
「俺は良いから、
帰りなさい」と
気を遣ったりもする。

とりあえず、
母と姉と私は、
お昼を食べにいき、
食後にもう一度
父のところへ行くと、
「お前たちは、一体どこへ行ってたんだ!!
何度も電話が鳴って、
大変だったんだぞ!!」
とかんかんに怒っている。
ここは、病室だ。
当然、電話等ない。

でも、そんなやり取りにも
みんな慣れて来てもいる。

色々な物に
縛り付けられている父を後に
また、自分の生活へ戻る。

翌日、
また母から電話が鳴る。
「血圧が下がったので、
ICUに入る事になった」と。
脳梗塞を起こした部分が、
広がっていて、
血圧も下がっているとの事だ。
手術でもするのかと思ったら、
そうでもなく、
母の説明もよくわからないまま。
日曜日に行こうかと思いつつ、
結局疲れて行かれなかった。

父の命が
病院に管理され始めた気がした。
冷たい自分に気づきながら、
父の望む事が
そんなことなのか、
姉と話した。

手袋をされ、
ベッドにベルトで身体をくくりつけられ、
点滴をされ、
一定の時間ごとに
血圧計を計られ、
おかしな数値になると、
ブザーが鳴るような暮らし。

命に対して。

父を家に帰したい。

ただ、日々の父の世話をするのは
母なので、
簡単に提案できない。