全国の都道府県で暴力団排除条例が施行され、「暴排元年」とも
言われる今年。紳助の引退を契機に、芸能界と暴力団の関係が
注目を集めた。
両者の関係は古く、昭和33年に山口組が芸能プロダクション
「神戸芸能社」を旗揚げし、美空ひばりらを専属歌手として抱えた
のはよく知られた話だ。
むろん、「興行」の世界が暴力団との持ちつ持たれつの関係で
成り立った歴史はぬぐいようもない事実である。それだけに紳助の
引退が引き金になった芸能界と反社会的勢力の決別キャンペーンには、
芸能界の「常識」の中で長年生きてきた人間ほど複雑な感情を抱いた
に違いない。
あるベテラン漫才師もその一人だ。
「芸能に従事する人はみな、近世まで『河原者』と呼ばれ、庶民の
あこがれと同時に、蔑視の対象でもあったでしょ?
僕はそういう意味で、芸人もヤクザも根っこのところは同じやと思うてます。
芸人にとって、堅気の人でも、ヤクザでも劇場まで見に来てくれたら、
お客さんには変わりないんですよ。
でもね、それは昔の話なんです」