プロ野球は開幕カード3連戦を終えて移動日だった3月28日(月)に、華々しくスタートをきったとあるリーグの開幕戦を観戦してきた話をさせていただく。
平日真昼間の空いた電車に揺られて、やって来たのはこの球場。
東京湾岸幕張の、ZOZOマリンスタジアムである。
かつては毎シーズン結構な頻度で足を運んでいたこの球場だが、コロナ禍中の直近2年はめっきり足が遠のいていたため、記憶をたどってみたら前回ここに来たのは2019年11月の『プレミア12』。 実に2年半ぶりというとんでもないご無沙汰となっていた。
この球場の主マリーンズのホーム開幕戦を前日に控えたこの日。この球場で開催されたのは……
50年を超える歴史を誇る『日本女子ソフトボールリーグ』が刷新、再編されて今年新たに誕生した『ニトリJDリーグ』の、記念すべき開幕初戦である。
ソフトボールには詳しくはないが、野球の弟分といえるスポーツゆえ人並み以上には興味はあり、2016年には東京ドームで行われた日本代表VSアメリカ代表の一戦に足を運んだこともある。
東京五輪ソフトボールは現地で見ようとチケットを取っていたのだが、ご存知の通り1年延期のあげく無観客で幻に……。
それが今回、うまいこと当スタジアムの休場日に、行ける範囲の球場で歴史的開幕戦が開催されると聞きつけ、久々のソフトボール観戦に足を運んだ次第である。
新リーグ『ニトリJDリーグ』の正式名称は、『ジャパンダイヤモンドソフトボール』。ダイヤのごとく輝くようにという願いと、フィールドのダイヤモンドのダブルミーニングだそうだ。
東西の2地区制で、各地区8チームずつ合計16チームで発足した『ニトリJDリーグ』の記念すべき開幕戦のマッチアップは……
東地区に属するビックカメラ高崎ビークイーン(本拠地:群馬県高崎市)と、西地区所属のトヨタレッドテリアーズ(同:愛知県豊田市)。
旧リーグ時代の優勝回数はビックカメラが14回(前身の日立含む)、トヨタは10回を数え、ともに日本代表選手を複数擁する東西の強豪同士の一戦であった。
新生リーグの記念すべき開幕戦とあって、プレイボール前のフィールドでは様々なイベントが。
ノックイベントに登場したのは、日本代表監督としてシドニー、アテネでメダル獲得するなど、日本女子ソフトボール界を牽引し続けたレジェンド宇津木妙子さん。
この日は試合がない14球団の選手代表も、晴れの門出に全球団集合。
見たところ赤系のユニが多い。この日の対戦両チームも赤いユニ。
各球団代表からのビデオメッセージ、千葉市長のファーストピッチセレモニーと、様々繰り出された華やかなオープニングイベントのトリを飾ったのは、この方だった。
かつてこの球場のエースだった元マリーンズの黒木知宏さんが、始球式に登場。
小学校時代はソフトボールチームのエースだったということもあって……
なかなか様になっていたダイナミックなウインドミルの投球フォーム。
「下手投げのジョニー」などという珍しいものが見られ、得した気分になる。
盛りだくさんのセレモニーを経て、試合は18時ちょいすぎにプレイボール。
ビックカメラ高崎の先発は、濱村ゆかり投手。
ご当地千葉県の木更津総合出身。
対するトヨタの先発は、昨夏の東京五輪金メダリストのひとり。
大会での活躍はもちろん、そのあと金メダルをかじられるというもらい事故でも話題となった、左の後藤希友投手。
この両投手の好投、そして両チームとも堅い守備もあり、試合はスコアレスの投手戦に。
試合中、内野スタンドの一番端から眺めたフィールド。
見慣れたZOZOマリンスタジアムの、見慣れぬソフトボール仕様のフィールド。
ホームベースから両翼までが約67メートルと、野球に比べてかなりコンパクトなサイズのフィールドゆえ、仮設のフェンスが設置されて、その後ろには「フィールド外野席」とでも呼ぶべき臨時の席が用意されている。
内野のみの開放だったスタンドには、月曜だというのに大勢の観客が。先着3000名配布のタオルが試合中盤にはもうなくなっていたところから察するに、3000名以上は来ていたのだろう。
試合中、試合とは関係ない場面でちょっとスタンドがざわつく。
カメラを引き連れていたので何かの番組の取材だったのだろう。フィールドからスタンドのファンに手を振る古田敦也さん。
一応念のため、ご本人の名誉のために申し添えておくと、あごマスクは手を振っていたこの時だけで、周囲に人はいない。
5回終了時には花火の打ち上げもあり。
今季初の、そして2019シーズン以来3季ぶりの球場で見る花火となった。
試合は0-0のまま終盤戦に。
目を引いたのは、トヨタの3番手で6回から登板したこの投手。
アメリカ代表の一員として北京、東京五輪で日本代表と好勝負を繰り広げたモニカ・アボット投手。
190センチの長身ととんでもなく長い手足から繰り出される剛速球は、この試合最速の115キロをマーク。さすがはワールドクラスのものすごい迫力であった。
膠着状態だった試合は、最後の最後に動く。
最終7回表、2アウトながらランナー三塁のチャンスで、4番下山絵理選手がセンター前にタイムリー。
土壇場で生まれたこの1点が決勝点となり、トヨタレッドテリアーズが歴史的一戦の勝者に。
特にどちらの応援というわけではなかったが、座っていたのがトヨタサイドの一塁側だったので、なんとなく勝者の気分に浸る。
普段見ている野球ボールよりもはるかに大きい、グレープフルーツくらいのサイズのボールをすごいスピードで投げ、それをガンガン打ち返し、強烈な速い打球を難なく処理して素早く送球と、コンパクトなフィールド内でところ狭しと繰り広げられたスピード感あふれるプレイはとても小気味よく、国内最高峰の選手たちによるレベルの高い勝負に目を奪われっぱなしだった。
3月のマリンのナイターは想像通りの寒さだったが、足を運んでよかったと大いに満足感が得られたいい試合であった。
野球とルールは似ていても、また違った魅力があるソフトボールの生観戦。機会があればまた『ニトリJDリーグ』観戦に足を運びたいと思う。
約2年半ぶりに訪れたこの日のZOZOマリンスタジアムだったが、久々でも抜け目なく、むしろこの手の特殊試合はチャンスとばかりに、当スタジアムの野球観戦的ライフワークである「各地の球場のちょっと変わった席種に座ろう」活動にいそしんできた話は、また次回に。
直近2年に比べれば、球場へ行くハードルがぐっと下がった今シーズン。行ける試合は現地で、行けない試合は当スタジアムとの使い分けで、引き続き皆様のご来場を心よりお待ちしております。