ギリシャ旅行記(2)ウィキッド | ***Walk on the light side

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銀河に煌く星たちのように

現在スクリーンで上映中の「ウィキッド」がオーストリア航空の機内で上映していたので、鑑賞しました。ちょうど観に行きたいと思っていたので、よかったです。

 

未鑑賞の方に補足いたしますと「ウィキッド」は「オズの魔法使い」の前日譚で、ドロシー御一行様に倒される「西の悪い魔女」が主役の物語のブロードウェイ・ミュージカル。日本では劇団四季の、おそらく一番人気の演目です。

 

私も過去に四季で複数回、観ておりまして、四季のベストを問われたら、やっぱり「ウィキッド」と答えると思います。

 

何が良いのか? と問われたら、歌とダンスとシナリオでしょうか。魔法が出てくるので、派手な演出もあり、グリーンのエメラルド・シティなど舞台映えする内容だと思います。

 

占星術的な観点からすると、これは女性の両極の統合の話になります。それが非常にわかりやすく書かれているので、人気があるのではないでしょうか。

 

物語で描かれるストーリーの多くは、姫と王子の観点から、2人が苦難を超えて結ばれることで、男性性と女性性が統合されることが通例ですが、こちらの物語では真反対の性質の2人の女性が統合するんですね。王子様的な男性も出てきますが、メインはあくまで2人の女性です。

 

女性の1人は、のちの「西の悪い魔女」となるエルファバ。彼女は生まれつき全身が緑色の醜い姿をしていて、強い魔力を持っており、それゆえに親から疎まれて育ちます。彼女は誰からも醜い容姿を揶揄されて、孤独で、それでも強い自尊心を備えた、非常に頭がよく、思いやりもある女性です。

 

もう1人の主人公となるのは、のちの「南の善き魔女」となるグリンダ。類稀なるブロンドに白い肌の美しいモデル体型の女性で、愛されてリッチに育った彼女は、美しいものと楽しいことが大好き。オープンで親しみやすく、いつもみんなの輪の中心にいて、誰からも愛される存在ですが、勉強よりも恋やオシャレに興味がある女性。

 

とまあ、わかりやすく「エルファバ=孤独で賢く火力の強い、火星&土星タイプ」「グリンダ=陽気な愛され美女、金星&月タイプ」を象徴するキャラクターです。

 

この2人が魔法学校の寮でルームメイトとなり、最初は何かと反発し合って、お互いに「もう無理」と言っていたのですが、ある出来事をきっかけに、友情が芽生え、急速に仲良くなります。

 

学校、同級生、ルームメイト……ときたら、これは3ハウスのテーマですね。

 

異なるタイプの者同士が、反発し合い、競合しながら、次第に共闘するようになるというのは、3ハウスのセオリーといえます。

 

お互いに負けたくないし、自分の方が正しいと感じているので、最初はぶつかり合うのですね。しかし、自分に足りていないところを相手が持っているかもしれないと感じるや、それを受け入れようとするところに、3ハウスを守護する水星の柔軟性と賢さが働きます。


 

双子座のカストルとポルックスのように、真反対の性質を持ちながら、仲良くなったエルファバとグリンダは、理想と憧れのエメラルド・シティに出かけます。しかし、そこでオズの秘密を知ってしまったエルファバは、そこに巻きこまれ、運命が大きく変わってしまうのでした。

 

理想と現実のギャップ……これは7ハウスからの8ハウスへの移行でしょうか。素敵な人だと思っていたのに、実際に付き合ってみたら、今まで見えなかった裏の顔が見えたとか、そんな出来事ありますよね。普段は隠れている人間の本性を露わにするのが8ハウスです。

 

その人がどんな性癖を持っていて、どれだけカッとしやすく、どんな種類の執着があり、どれだけの欲望やパワーを持っているのか……そういったものを、外から窺い知ることはできません。そこに近づき、内部に入って初めて、見えてくるのですね。

 

そしてひとたび、それを知ってしまったら、もうそれを知らなかったときに戻ることはできません。相手の強い力に触れることは、自分自身の中にある強さと激しさもまた目覚めさせます。欲望が欲望を、力が力を、激しい感情が激しい感情を呼び覚ますのですね。火星が火星を、冥王星が冥王星を活性化させるのです。

 

8ハウスはパワーとビジネスの部屋。自身の中で隠れていた力や欲望が露わになり、また闇にあったものが姿を現す変容の部屋でもあるでしょう。

 

そうして、2人の女性は変容します。お互いが自分の中には「ない」と思いこみ、相手に見出していたものを、それぞれが手に入れるのです。

 

投影を超える9ハウス。物語の最後は感動しますよ。

 

神話の最後で、双子座のカストルが天上に暮らす力を手に入れて、ポルックスが地底で過ごす体験をするように、相反する質が育つに至って、私たちは「統合する」のですね。

 

そう思うと「慣れた役割ばかりをこなすこと」ではなく、あえて「いつもの逆をやってみること」がどんなに大事なことか、よくわかるかと思います。

 

機会がありましたら、ぜひご鑑賞を。映画版は前後編に分かれています。