大島真寿美さんの『ピエタ』を読みました。18世紀のヴェネツィアを舞台に描かれた、美しい小説です。ヴェネツィアの美しい運河と音楽、仮面のカーニバル、貴族、高級娼婦、そして孤児の女たち……。
「ピエタ養護慈善院」では、音楽の才能を持つ女児の孤児たちが選りすぐられて「合唱・合奏の娘たち」として育成されていました。
少女たちを指導するのが、ヴィヴァルディ。とはいえ、彼は主役ではなく、物語を引き立てる名脇役として登場します。
孤児たちは成長するとそれぞれの道へ進みます。嫁ぐ者、ピエタに残って後進の育成にあたる者、音楽界で華々しく活躍する者……。
これは、その彼女たちを取り巻く、なんとも豊かで繊細な「シスターフッド(姉妹的な絆)」の物語でした。
「ピエタ」とはイタリア語で「憐れみ」「慈悲」を意味するそうで、十字架から降ろされたイエスを抱くマリア像をそう呼ぶこともあるらしいですね。
養護院は占星術でいう12ハウスの象徴であり、人々の慈しみによって支えられ、守られてきた場所です。傷ついたときに人々が避難する場所であり、癒やしを求める人のためのスペースですね。
その中で暮らす子どもたちは、6ハウスに象徴される規律や修練と共に、ストイックな日々を送りながら成長していきます。6ハウスでは新しい技術を学び、傷が修復されるでしょう。
姉妹という存在は3ハウスの象徴であり、ともに学び、励まし合い、遊び、支え合う絆そのもの。時に競合し、時に協力しながら、知恵を分かち合います。
そして彼女たちを導くのは9ハウスの指導者たち。個々の資質を見極め、それぞれにふさわしい役割や方向性を与えるのが彼らの役目です。ここで私たちは人生に意味や希望を見出すことにもなるでしょう。
これら、カデント・ハウス(3-6-9-10)は、どこまでも柔軟に人生を支えます。
知恵と技術を分かち合い、支え合って生きていく――それは世界中どこでも、太古の昔から現在に至るまで、女性たちが築いてきたシスターフッドの営みです。
私自身、振り返ってみても、学生時代から今に至るまで、つらいときに支えてくれたのは、いつも女性の友人たちでした。
親のこと、人間関係、仕事のこと、旦那のこと、子どものこと……人生で起こるさまざまな危機的な局面で、駆けつけてくれたり、話をずっと聞いてくれたり、ただそばに寄り添っていてくれたり、美味しいものを作ってくれたりしたのは、友人たちです。
自分が助けられる側になることもあれば、助ける側になることもあります。ときに知恵をもらい、ときに知っていることを分かち合い、話しているうちに心が軽くなり、甘えて、頼られる。
状況に応じて、3-6-9-12と、ぐるぐると立場や役割を入れ替えながら、繊細な女性たちは、強く、しなやかに生きるのだなと感じます。
女性の人生には月のサイクルがあり、年を経て身体や経験が変化していき、その中で密やかに受け継がれていく知恵や技があるでしょう。
時代がどれほど進化しても、AIがどんどん賢くなったとしても、女性たちの“シスターフッド”は、世界のそこかしこで、あっという間に構築されて、人知れず静かに、でも確かに、お互いの人生を支え合っていくのだろうなと、思います。