8月になってから、ようやく「君たちはどう生きるか」を観ました。みなさんは観ましたか?いかがでしたか?
視覚と思考のご馳走だな~!!と感激して、立て続けに、2回観ました。
最近のキラキラと美しい作画のアニメも良いですが、この溢れんばかりの贅沢な作画はジブリならでは…というか、ジブリでもかなりの力作ではないかと思われます。
鈴木敏夫さんいわく「日本史上最高の製作費じゃないか」とのことですから、7年かけて100億円ぐらいかかっているのではないかと思われます。高畑勲監督のかぐや姫が51億ぐらいで、その鈴木さんがおっしゃっているのですから。
「よくわからなかった」という感想も見かけましたが、物語はそんなに複雑ではありません。ここでは詳しくは書きませんが、少年の成長物語ですね。個性化のプロセスそのものだと思います。
しかし観終わったあとに、いろいろなことを語りたくなる映画だと思いました。
宮崎駿監督のチャートです。山羊座の太陽・水星と、牡牛座の天王星と、乙女座の海王星でグランドトライン。
メディアで活躍するには海王星が欠かせませんが、乙女座という視覚を象徴する星座で、この三角に参加しています。
太陽・水星がコンバストで、金星も山羊座。支配星の土星は牡牛座にあり、金星と土星がミューチュアル・レセプションになります。徹底したこだわりが透けて見えますね。木星と土星が牡牛座でグレート・コンジャンクションです。
月と冥王星が獅子座、火星が射手座で、監督のチャートは7惑星が地、3惑星が火という、地-火軸のみに星が集まっていることが特徴的ですね。
現在は木星も天王星も牡牛座に位置していますので、監督にとって木星回帰&天王星回帰の年となります。7回目の木星リターン。すごいですね。木星-天王星が象徴するものは「自由への解放」ですが、まさにこれまでのご褒美のような作品かもしれないですね。
『牡牛座』という星座が、ものすごくクローズアップされているのが、この作品であり、宮崎監督の神髄なんだと思います。
そしてその最大の理解者である鈴木敏夫さんが、それを思いきりやらせたというのが、この作品の凄さでもありますね。それゆえの制作委員会なしで、それゆえに制作期間を設けず(なので7年半かかったと)、それゆえの巨額な製作費だとわかったときに、すごいな~と感激しました。
牡牛座というのは、私たちの持つ感覚の中で「思考感覚」を司る星座です。これは「そこに含まれている思考を読み解く力」であり、人間だけが扱うことのできる、精神の力の特徴ですね。
12星座にはそれぞれ対応する感覚がありますが、思考感覚を含む上位の感覚は人間だけが持つ特有のもので、しかもひとりひとりが鍛えていく必要があるものです。
思考感覚は、相手の意図を読み解くために欠かせないものですが、わかりやすいところでいえば、標識やピクトグラムは誰もに直感的に指示を訴えるものです。トイレの目印もそうですね。刻まれた模様、紋章、その形や色の意図するもの。そこにどんな意図が含まれているのか?
創作料理や、デザイナーが意図して創った衣装、部屋や空間のデザイン、建築物、剪定された庭など、さまざまなものに思考が含まれます。タロットカードやオラクルなんていうのも、まさにそうですよね。
そしてそれらは思考感覚を使わずに見たら、ただの壁、ただの階段、ただの植木、ただの料理、ただの絵かもしれません。
しかし、私たちはそこにさまざまな意図を含めることも、また見出すことができます。その線の意味は?なぜそこを白くしたのか?なぜその段の数であるのか?なぜその配置であるのか?
思考感覚を使うことで、私たちは他者の思考を受け取るのです。
ある意味、謎解きともいえますね。逆に制作者は巧みにみずからの意図を、その制作物のなかに潜ませるのです。なぜその色なのか、その数なのか、その配置なのか、その形なのか。
制作者にとって、予算と時間をふんだんに使って、本当に相手に伝えたいものを創り出すことは、究極の体験といえるのではないでしょうか。
パンフレットを購入したら、まったく解説が書かれていなくて(笑)、そのことからも、思考感覚のチャレンジを投げかけられたのだなと感じました。
それが監督の考える「いまの時代に必要なもの」だとすると、なんだか、ぞっとするような気さえもしました。
風の時代はどんなものでも解説・文字化されて、それはそれでとても便利です。でも便利な反面、そちらに偏重しすぎてしまうと、自分で考える力が失われたり、誰かの意見が正しいと信じてしまったりしやすくなる傾向があります。
思考感覚の低下は「他者の考えに依存する」「ひとつの考えに固執する」「固定観念にとらわれる」といった傾向として表れやすいのですね。
「自分の考えを自信をもって表現することがむずかしい」のだとしたら、思考感覚を鍛える必要があるのだと思います。
その方法については、また別途書きたいと思います。