火星が乙女座に入りましたが、入って早々の乙女座0度はレグルスの度数でした。
レグルスは獅子座の一等星。ちょうど獅子の心蔵あたりにある星で「ライオンハート」意味は「小さな王」です。歳差運動で星の見える配置がすこしずつズレてきており、現在では乙女座0度あたりにある星です。
ライオンハートで有名なのは、12世紀末のイングランド王・リチャード一世です。彼は騎士の規範とされた人物で、王座にあった10年のあいだ、イングランドにいたのは半年だけで、残りの9年半はほぼ戦争に明け暮れていたといいます。
王がみずから戦地で戦うため英雄「獅子心王」として人気が高かったそうですが、実際には常に父や兄弟たちと戦い、十字軍として戦い…と、波乱と復讐と戦いの連続です。
レグルスは高い地位やプライド、能力と共に現実的な富をもたらす星ですが、同時に成功するためには「復讐心に駆られないこと」がポイントなんですね。
リチャード一世の人生は復讐からの復讐という波乱の連続で、結局は戦いで受けた矢傷が原因で41歳で亡くなりました。
こないだ、裏切りについてちょろっと書きましたが、裏切られる痛みや苦しみは、この世で体験する感情の中でも重く、暗く、深いものです。
そこへ投資してきたものが大きいほど、裏切られたときの感情は強大で深くなりますね。投資は金銭のみならず、愛情、時間、献身、思いやり、知恵、情熱等々、人間が持ち得るさまざまなエッセンスというプライスレスなものも含みます。
それが裏切られたとき「然るべき、報いを受けるべきだ。人間としての誇りをかけて」というのが、獅子座らしい「尊厳」と関係していると思います。
日本では赤穂浪士や曾我兄弟の仇討ちが有名ですが、世界各国で「家や個人の名誉のために仇は打つべきだ」という考えも一般的です。神話においても、夫に尽くしたのに裏切られた妻が、子どもを夫への復讐のために殺すのは「致し方なし」とされる物語もあります。
しかし「やられたらやり返す」「やり返されたので、またやり返す」は延々の連鎖を生み出します。
復讐というテーマを終わらせるとしたら、それは冥王星を外側に向けて使うのではなく、内側にひらいたときに起きるのかもしれません。裏切られたという怒りの背後にある、悲しみ、惨めさ、無力感や無価値感……そういったものを感じて、嘆いて、苦しみにのたうち回ることが、みずからの怒りを変容の炎で焼き尽くし、そののちに再生させることになるのでしょう。
「一片の恨みも、思い残しも、やり残しも残さず、きれいさっぱりと人生を終わらせましょう」というのは12ハウスのテーマですが、そうするためには、多大な精神力が必要です。自身の感情と向き合うのに良い季節ですね。