2023年5月6日2:33に蠍座の満月です
釈迦の誕生、悟り、入滅のいずれもがこの時期の満月だったということから、5月の最初の満月にはウエサクのお祭りがおこなわれます。
2023年のウエサク満月は半影月食でもあり、真夜中から明け方にかけて、うっすらと影のかかった月を見ることができるようです。
半影月食で蠍座の月……ということで、世の中は明るく楽しいGWですが、その一方で心の深いところから、隠してきた感情があふれてくるような時期だと感じます。
実際にここのところ、太陽・水星・天王星が牡牛座に入ってから、心の中で嫉妬や独占欲、孤独感や劣等感、焦燥感などを感じている人はけっこう多いのではないでしょうか。
自分以外の人たちがうまく楽しくやっているように感じられたり、みんなは愛されていて、人間関係にも仕事にも恵まれているように見えたりすることは?
あるいはそういった苦々しい思いを感じないように、楽しい予定や遊びで気を逸らしているということは?
牡牛座に星が集まるということは、その向かいの蠍座の質が内側では高まることでもあり、この月食の満月に、それらがアクのように浮かび上がってくるかもしれません。
牡牛座は穏やかで心地よく、リラックスして生きることを象徴する、陽だまりのような春の星座です。それは生きる喜びの象徴であり、美味しいもの、素敵なもの、心地よい場所など、世界の豊かさを満喫して、悠々と生きる土台を作る力でもありますね。
しかしそれが充分に得られなかったら?
安全に生きることを社会や環境が脅かすとしたら?
私たちは生きるために戦います。厳しい状況に耐えて、欲しいものが手に入るまで挑み続け、時にライバルを蹴散らしてでも、自身の生存のために力を奮うでしょう。
そのようなサバイバルする強さ、勇気、時に暴力的なほどの本能的な力を象徴するのが蠍座です。
このふたつの星座……温かく穏やかで心地よい牡牛座と、強く厳しく世界を生き抜く蠍座は、ニコイチであり、生きるために人間が携えた両極でもあるでしょう。
穏やかに生きようとするあまり、蠍座の激しく強い面を否定したくなるかもしれません。蠍座のもたらす葛藤や激しい感情、憎しみや嫉妬、あるいは破壊的な側面など、なければいいのにと思うこともあるでしょう。
しかし実際のところ、この強さと激しさが、世界を渡り歩くための武器となり、他者と関わるための力となっていきます。これをなくして、厳しい世界を生きることはできません。
そして嫉妬や独占欲や孤独感や劣等感、焦燥感といった心の葛藤があるからこそ、私たちの生き抜こうとする力が強く働くのです。
普段見ないように感じないようにしていても、それは時々、外の世界に投影される形で体験させられます。他者の中に愛や豊かさや裕福さ、リッチさを見るにつけて、こちらの側の不足感、劣等感、虚無感を味わうことがあるでしょう。
そこで大事なことは、それらを他者に投影し続けて「あの人たちは持っていて、自分には何もない」と、固定化してしまわないことです。
激しい感情が動くとき、それは自分のなかに強く生きようとする力があることが表れています。
たとえば誰かに嫉妬しているとき、相手への文句や不満や愚痴を言いたくなるかもしれませんが、そこで湧き上がった力をそのように消化してしまうのではなく、内側でしっかりと感じてみましょう。
文句を言いたい自分のなかに、強さや力を感じられるはずです。その瞬間、自分の中で、相手に負けないだけの、世界を生きる力が湧き上がっているにも関わらず「文句や悪口をいう」と、その行為に発散されてしまうでしょう。
このときに湧き上がる力……激しい感情が揺り動かされるとき、これは自分の真実を見る力、受け入れることのできる勇気にもつながります。
「あの人はずるい」と言うのは簡単です。でもそれに対して「自分が努力していないこと」や「自分がたいしたことないということ」を認めるのは難しいでしょう。
その真実を受け入れる力が、蠍座の持っている本領……闇を見る勇気です。
釈迦が悟りをひらいたとき、背後には金星が輝いていたといいます。それはどんなに矮小で惨めでちっぽけで大したことのない自分でも愛するという力。自分の弱さと愚かさと惨めさを認めて、それが私という人間なのだと、受け入れて愛する力。
怒りや憎しみ、絶望や孤独感。あらゆる苦々しい感情を全部受け入れて、生きるための力に変えていく。
ウエサクの満月が特別なのは、そのような錬金術……苦みを愛と力に変えることができるからかもしれません。