『2年生存率０％を生き抜いて』
28歳で希少がんに罹患。
22年前の発病当時、
一番の希望は生の体験談でした。
発病からの生還記録を綴っています。
少しでも生きる力となりますように。
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当時、写真を撮る心の余裕もなく、
退院後、友人の結婚式でのこの写真が
治療時に一番近いです。
３か月前「がんじゃない」と言われて、
やはり「がん」との宣告。
病院から家へと帰る国道23号線、
「お前は強いんだ。こんなことに負けるわけがない！」
と自分自身を励ます強気な自分と、
「おれががんだって。絶望だ！そのうち、苦しみにもだえて死ぬんだ」
と弱気な自分の綱引きが始まりました。
弱気が優勢になると、
気づけば、
車のハンドルを反対車線に切ろうかと本気で考える自分がいました。
ここで急ハンドルを切ったら
すべては終わるんだな。
すべてが終わる。
すべてが終わる･･･
そんなとき、
パッと両親の顔が浮かび、
何とか思いとどまりました。
必死で正気を保ち、
家に着くと、
家族に伝えました。
表情を変えず、淡々と。
心配させたくなかったから。
母は驚くほど冷静に聞いてくれました。
内心、息子が心配でないのかと思ったほど。
しかし、このとき両親が泣き崩れていたら、
親を悲しませている自分を責め、
さらに絶望に突き落とされていたと思います。
そんな母の手記にはこう書いてありました。
貴之の前では
泣き顔は見せまいと
決めていました。
でも、
仕事の行き帰りでは、
思い出すと涙が止まらなくなり、
車を停めて収まるのを待ちました。
主人には毎日のように、
『事故を起こすなよ』
と言われていました。
貴之が産まれたとき、
何があっても守り通すと誓ったのに。
こんな現実に
どう立ち向かえばいいのかわからず、
私は自分の無力さを嘆くばかりでした。
『できることなら代わってあげたい』
告知をされたその夜、
電気を消して目を閉じると、
とてつもない恐怖感と孤独感に襲われました。
目覚まし時計の秒針の刻む音は、
まるで刻一刻と爆発に近づく〝時限爆弾〟のよう。
「何でおれにこんな時限爆弾がまわって来たんだろう。何でおれだけ？」
考えても、考えても答えは出ませんでした。
酒もほどほどで、
タバコも吸いません。
体力もあって、
がんになる原因など全く思い浮かびませんでした。
何かの罰が下ったのか？
自分の人生を振り返ってみると、
傷つけた人、
迷惑をかけた人が
次々と浮かんできました。
「ごめんなさい」
「本当にごめんなさい」
一人布団の中で、
謝って
謝って
謝り続けました。
「神様、お許しください」
神様に許しを請い、
起こるはずもない
奇跡的な治癒に望みをかけていたのです。
夜が明けて、
朝目覚めるときがいちばん辛かったです。
寝ているときは幸せでした。
朝目覚めると同時に、
「自分ががんである」
という現実がよみがえり、
なかなか起き上がることができません。
朝起きた時からが悪夢の始まり。
これからどうなっちゃうのかな･･･
朝食の時間を告げる母の声。
心配性な母に
落ち込んだ姿を
見せまいと決めていたぼくは、
「よっしゃー」
と自分の顔を平手打ちにして気合いを入れ、
無理やり自分をたたき起こしました。
「くそっー！起きるしかないだろー！」
つづく
エリザベス・キューブラー・ロスの「死の受容」
１「否認」⇒２「怒り」⇒
３「取り引き」⇒４「抑うつ」⇒５「受容」
これを「病気の受容」に置き換えた場合、
「なんて俺が？」という「怒り」
そして神様に許しを請うという
「取引」
が始まりました。
キューブラー・ロス⇒
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