横浜市栄図書館 | 図書館利用促進プロジェクト横浜・鎌倉版

図書館利用促進プロジェクト横浜・鎌倉版

永遠に残していかなければならない人類の知的所産「図書」。
さまざまな図書が集積する「図書館」のあり方が
近年、著しく変貌を遂げています。
図書館の魅力を再発見!
それが「図書館利用促進プロジェクト」の狙いです。

本 横浜市栄図書館の成り立ち
 
横浜市南部、鎌倉市にもほど近い位置にある横浜市栄区。近代以前は相模国鎌倉郡でしたが、昭和14年(1939年)横浜市に編入して戸塚区に含まれ、昭和61年(1986年)には人口増加に伴い分区、栄区として誕生しました。今年平成28年(2016年)に区制30周年を迎えました。西側を流れる柏尾川とその支流で区役所周辺を流れる㹨(いたち)川(以下いたち川と表記)が町を長閑に見守る、起伏に富んだ緑豊かな地域です。
横浜市栄図書館は、平成元年(1999年)、公田町に開館。最寄りのJR根岸線「本郷台」駅からは徒歩約13分、鎌倉街道にほど近いということもあり、バスに乗って区外からの利用者も多く訪れています。
 
           
 
クリップちょっとおまけ 市民の森第一号「飯島市民の森」
緑豊かな栄区ですが、実は宅地開発によってその風景が急激に失われる危機に直面した時期もありました。そこで横浜市は緑地保全と市民の憩いの場作りを目的に「市民の森」制度を実施。昭和47年(1972年)4月5日、全国で初の試みとして開園したのが栄区北西部に位置する「飯島市民の森」なのです。以来現在栄区には5カ所の市民の森があり、憩いのスポットとなっています。
 
本独立館のメリットを生かした憩いのスペース作り
  
クローバーコンパクトながらゆったりした空間作り
    
区役所など町の主要施設にもほど近く、鎌倉街道から100mほど入った場所に位置する栄図書館。独立した建物ならではの落ち着きと広い窓による開放感が抜群です。窓の外には、緑と空が広がり、ほっとさせられる雰囲気があります。
            
 
カウンター前の展示コーナー
 
1階カウンター前にゆったりと大きく用意されたスペースは、ほぼ毎月様々な企画が行われている展示コーナーです。区役所との連携や区内にある公益財団法人 横浜市ふるさと歴史財団 埋蔵文化財センターとの協力による展示も行われるなど、幅広いテーマに意欲的に取り組んでいます。
 
         
取材時は栄区役所との連携で「セーフコミュニティ」の展示が行われていました。
栄区は平成25年(2013年)10月にWHO(世界保健機関)協働センターから安全・安心なまちづくりの国際認証「セーフコミュニティ」を取得しています。
 
情報コーナー 
 
1階のエントランス右、階段下の外光明るい一角に集められた情報コーナーは、質、量ともに充実。地域の情報から市内の情報、区内に限らず近隣施設のイベント情報などが見やすく手に取りやすく配架されています。
         
 
インターネット端末コーナー
 
2台あるインターネット端末は貸出カウンター近く。職員さんの目の届くところでもあるため、わからないことも聞きやすく、利用率は高いそうです。
        
       右隣には利用者用検索機。ここらにも椅子が用意されているのは嬉しいですね。
 
クローバー各階に憩いのスペース
 
1階の子どもの本のコーナー奥の中庭と2階の閲覧スペース奥のテラスにはベンチがあり、ここでは飲食も可能です。遠く広がる山の緑を眺めたり、藤棚の下で寛いだり…と、本を読むだけでなく憩いの時間を過ごすこともできます。
 
            
                         左)1階中庭藤棚下のベンチ 右)2階テラスのベンチ
 
クリップちょっとおまけ  職員用通用口わきにあるカシの木には・・・
駐車スペース横の細い通路、職員さんの通用口。この先にあるカシの木に、よくみると鳩の巣があり、時にはリスも遊びに来ているとか…。栄図書館らしいほのぼのした光景がここにもあるようです。
             
   確かにありました!鳥の巣。それも手が届きそうな低い位置。職員さん達、信頼されているようです。
 
本地域に調和している図書館
 
栄区は、笠間地区の松ヶ丘遺跡での縄文土器発見や弥生時代の住居跡(笠間中央公園)もみられるなど、その歴史は古くまでさかのぼることができます。宅地開発が進む中で出土した土器や遺跡の保存や研究、また都市化の過程で整備・再生されてきた、いたち川についての展示など、町の歴史や環境保全の取り組みの過程を図書館の資料を活かし公開する工夫がされています。
 
 
クローバー地域の歴史
 
平成27年11月29日に行った栄図書館の歴史講座「縄文時代の謎の「顔」―栄区公田町出土の土製品―」は人面把手土器に関する講座で、その後も図書館HPで「人面把手を知るブックリスト」を公開しています。また、いたち川についても「いたち川を知るブックリスト」をHP上で公開し、その概要や歴史を調べることはもちろん、横浜市立図書館で閲覧可能な資料と横浜市のWebサイトも紹介されているので調べ学習にも利用しやすい工夫がされています。
             
  栄区役所地域振興課で保管している人面把手の模型(実物資料は神奈川県立歴史博物館所蔵)
 
人面把手(じんめんとって)とは・・・
栄区の遺跡の中でも非常に珍しいもの。おそらく大きな土器の把手と考えられ、関東地方で最大のものとも言われているそうです。土器から当時の人たち風貌を想像することもでき、縄文時代の人々の暮らしに想いを馳せることができます。
 
             
            栄区に伝わる昔ばなしをもとにつくられた紙芝居も借りられます
 
クローバー地域とのつながり
 
時代小説が人気 
 
栄区の高齢化率は29.3%(横浜市23.4%)と横浜市内でも高いのですが、要介護認定率は14.5%と市内で一番低く(横浜市16.9%)、元気な高齢者が多い区です(「広報よこはま さかえNO.812栄区の基礎データ」より)。そんな町の姿のあらわれでしょうか、栄図書館では時代小説の貸出が盛んだそう。元気な高齢者が散歩がてら図書館へ立ち寄り、読書活動も楽しんでいる、そんな様子が想像できます。
 
 
学校連携 ―図書館と学校
 
平成25年度から28年度にかけて市立小・中・特別支援学校全校に学校司書配置をすすめてきた横浜市。栄図書館では「さかえとしょかん学校連携News」を発行したり、区内の学校の教職員、児童・生徒、ボランティア・保護者向けにさまざまなプログラムを提供するなど学校図書館の充実に積極的に関わっています。
平成27年(2015年)4月から12月までに計689のプログラムを実施、教員向け貸出は前年同期(2438冊)比1.3倍の3156冊となっています。図書館の中だけでなく、地域への読書推進の働きかけの大切な一つの活動といえます。
 
本と庭の手入れ ボランティアさんの力
 
栄図書館では図書の修理ボランティアさんが月に3回の活動をしているほか、書架整理や庭の手入れにもボランティアさんが関わっています。書架整理は平成28年4月現在24名、親子や夫婦で登録し、自身の図書館利用のついでに書架整理活動をして行かれるなど無理のないスタイルで続けている方も多いそう。憩いのスペースである1階中庭の草花の手入れも現在2名のボランティアさんが行っているそうです。
           
             ボランティアさんの手入れの行き届いた1階中庭の花壇
 
 
 
本寄り道さんぽ 図書館とまち歩き
全国百八十八札・四国四国坂東秩父 総拝霊場 田谷の洞窟
 
栄区は農業地帯として発達し、明治21年(1888年)大船駅が開業し横須賀線が開通してから市街化が進みました。太平洋戦争中には、軍事拠点化していた横浜市南部で旧戸塚区域にも海軍施設が進出し、昭和13年(1938年)には第一海軍燃料廠が設置されました。敗戦後、その施設は米軍に接収され極東エクスチェンジサービス本部(大船PX)となったのち、返還され昭和40年(1965年)から昭和59年(1984年)にかけて大規模な再開発がされました。現在のJR根岸線「本郷台」駅周辺から柏陽高校、警察学校にかけての一帯がその場所です。今回は歴史ある名所、自然、そして多文化共生を考えるスポットをご紹介します。
 
 
           
平成17年(2005年)に誕生した栄区いたち川マスコット「タッチ―くん」。ゆるキャラグランプリ2016では全国で98位と大健闘したようです!
 
 
 
●田谷の洞窟  真言宗 田谷山 定泉寺
(栄区田谷町1501番地)
 
定泉寺境内の田谷山瑜伽洞(たやさんゆがどう)は、平成2年(1990年)11月に横浜市の地域史跡名勝天然記念物に登録された洞窟です。長い年月をかけて整備された洞内は全長1キロに及び、四国八十八所や四国・坂東・秩父観音霊場の百観音など三百体以上の仏像が刻まれています。入口でロウソクを受け取り、ゆっくりと洞内へ…。しんっとした空気に気持ちが引き締まります。   
       
         
                    真言宗大覚寺派 定泉寺本堂(右)と弘法大師像(左)    
 
●いたち川
 
栄区の東西を流れるシンボルリバー。その名は、鎌倉時代、鎌倉街道の通るこの地は幕府の要所であり、宿駅でもあったことから、「いざ出立(イデタチ)」と征討に出る際の安全を祈る儀式に由来するとか。
今では上流には市民の森等の緑が豊かに広がり、下流には整備されたプロムナードがあり散策を楽しむ人の姿が多く見られます。緩やかに町の中を流れる川に沿って歩きながらときには市民の森へと足を延ばす…そんな散策を気軽に楽しめるのです。
 
       
                
栄区役所近くの欄干にウォ―キングの仕方の看板と並んで「タッチーくんのてくてくチェックコーナー」の看板を発見。区役所裏手から城山橋を回って小いたち橋付近までの欄干には起点から200m地点までは25m毎、200mから380mまでは5m毎に距離表示ステッカーが貼ってあり、3分間でどれくらい歩けるかを測ることができます。元気な高齢者が多い秘訣のひとつかもしれませんね。         
                  
●本郷ふじやま公園 古民家
(栄区鍛冶ケ谷1-20)
 
いたち川を東に本郷地区まで進むと鮮やかな赤い橋が見えてきます。扇橋です。紅葉の中はもちろん、緑生い茂る季節もその鮮やかな赤い橋は、いたち川の穏やかな景観を美しく染めてくれます。
       
この近くにある本郷ふじやま公園には、平成14年(2002年)横浜市指定有形文化財に指定された古民家旧小岩井家の住宅と表門が保存されています。
 
                       旧小岩井家長屋門
       
公園内「コナラくろう坂」を苦労して歩いた先に現れる長屋門の重厚さと、立派な家屋に感激。
古民家内には江戸時代の名主の屋敷の雰囲気が復元されており、見学することができます。
           
                水琴窟の水音にしばし癒されます。
 
 
●神奈川県立地球市民かながわプラザ あーすぷらざ
 
神奈川県立地球市民かながわプラザ あーすぷらざ(以下あーすぷらざと表記)は、国際理解、国際平和、地球規模の課題の解決について、自分にできる身近なことから行動するための総合施設として、平成10年(1998年)2月に栄区本郷台駅そばに設置されました。1階が研修室やラウンジなどの活動のフロア、2階が情報・相談のフロア、3階が企画展示室、5階が国際平和展示室、こどもの国際理解展示室、こどもファンタジー展示室となっています。
                      
2階の映像ライブラリー・情報フォーラムの蔵書はおよそ39,000冊、そのうち映像ライブラリーの視聴覚資料は2,400本、雑誌150タイトル、ニュースレター(継続分)230タイトル(平成28年10月現在)となっており、誰でも閲覧することができます。ただし、貸出は神奈川県内在住、在勤、在学の方となっています(映像ライブラリーの映像資料は閲覧のみ)。
         
入口は隣り合わせ。左が映像ライブラリー。右は情報フォーラムで、中は別々になっており、雰囲気も違います。
 
映像ライブラリーは図書、雑誌、多言語の絵本・紙芝居、ビデオ・DVDがあるいわば専門図書室。取材時は「日本と国連~加盟60周年を記念して~」や「国際社会におけるこどもの人権」の特集展示がされていました。
「図書・映像は国際理解や環境、平和、人権、多文化共生、情報などのテーマに分けて配架しています。背のタイトルだけを見ていても、いろいろと訴えかけてくるものがありますね」とは司書の中村智子さん。
           
             映像ライブラリー内部の展示とさまざまな言語の絵本がずらり
 
一方、情報フォーラムは市民のための情報スペースや多言語での相談窓口、学習教材や生活に関わる資料が集められたスペース。通常の図書館とはちょっと違って、ゆるやかにBGMが流れ、和やかな雰囲気が漂います。
        
       左)外国人のための生活や学習、高校受験の情報など資料がたくさん 
       右)あーすぷらざ外国人教育相談窓口
 
外国人のための相談窓口では、多言語で教育相談から一般相談まで幅広く対応。あーすぷらざ外国人教育相談コーディネーターの加藤佳代さんによると「神奈川県には2016年1月現在、168の国と地域の外国人が暮らしています。ここは相談窓口としては珍しく図書館機能を備えた情報のリソースセンターにあり、明るくオープンな雰囲気で外国人の方がふらっと相談に来られるようにしています。学習相談はもちろん、母国を離れて暮らす外国の人たちの生活や学習に関わる問題、またその子どもたちを受け入れている学校の先生や教育委員会からの相談もあります」とのこと。
すぐ身近に世界に通じる窓口がある・・・そんなことを訪れる外国人もわたし達も共に実感できる施設です。
 
絵本で知る世界の国々 ―IFLAからのおくりもの 展
現在、あーぷらざでは、「絵本で知る世界の国々―IFLAからのおくりもの」を3階企画展示室で開催中。IFLA(国際図書館連盟)の「絵本で世界を知ろうプロジェクト」により集められ、国際こども図書館に寄贈された絵本325冊を展示。合わせて松居友氏、大竹聖美氏の講演会やワークショップ、よみきかせなど様々なイベントも行われます。ご家族でぜひ。(11月19日~12月18日まで)
このイベントは終了しました。
 
            
 
利用案内 

開館時間

  ・映像ライブラリー       午前9時~午後5時

  ・情報フォーラム(平日)   午前9時~午後8時

           (土・日・祝)   午前9時~午後5時

 (ただし12月28日は午前9時~午後5時)

休館日

  月曜日

    年末年始(12月29日~1月3日)

アクセス

 住所:〒247-0007 栄区小菅ケ谷1-2-1

 電話:045-896-2121(代表)

 
 
本図書館からのメッセージ
右から板坂健治館長、司書の桐原真哉さん、長瀬祐子さん 館長が手にしているは先の人面把手
 
板坂健治館長からのメッセージ
 
「区制30周年を迎えた元気な町の図書館」
今年11月3日に区制30周年を迎えた栄区は、元気な高齢者が多く、緑豊かな環境が自慢です。図書館の利用は高齢者はもちろん、子ども達の利用も多いですね。地域の歴史や文化の講座への関心も高いので、これからもそうした町の声を聴き、それに応えられるよう企画や展示をしていきたいと思います。
 
 
 
メモEDITORIAL NOTE
歴史の波にさまざま影響を受け、その痕跡を残している横浜市栄区。出土品からうかがえる歴史の深さに見合うような懐のひろい町の姿が感じられました。
中庭や2階バルコニーの開放感と目の前に広がる緑…など、栄図書館の雰囲気は大らかな印象でした。整備された駅前からも鎌倉街道からも平坦で歩きやすい町の図書館は、いたち川散策も気軽に楽しめます。晴れた日のまち歩きにまた行きたいと思います。
 
 
【参考文献】

書名をクリックすると横浜市立図書館での所蔵が見られます。

『栄の歴史』                 2013年 栄の歴史編集委員会/編

『さかえの見どころ!ガイドブック』    2010年 横浜市栄区役所区政推進課

『田谷の洞窟 鎌倉の密教地底伽藍』 2008年 吉田孝 

『本郷のお寺とお宮』            1983年 本郷郷土史研究会/編

『いたち川散策マップ2013改訂』     2013年 横浜市栄区役所区政推進課 

     

 

*****************************************************************************

横浜市栄図書館

 

利用案内

開館時間

   火曜日~金曜日:午前9時30分~午後7時

   土曜日・日曜日・月曜日・祝(休)日:午前9時30分~午後5時
   12月28日:午前9時30分~午後5時
    1月 4日:正午~午後5時
休館日
   施設点検日(月1回)
   年末年始(12月29日~1月3日)
   図書特別整理日

アクセス

     住所:〒247-0014 栄区公田町634-9

     電話:045-891-2801 FAX:045-891-2803

ホームページ: http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/chiiki/sakae/

 

 

取材協力/画像・資料提供_横浜市栄図書館 /神奈川県立地球市民ラかながわプラザ(あーすぷらざ)

取材_ 安木由美子