横浜市港北図書館の成り立ち
横浜市港北区は、昭和14(1939年)年4月の都筑郡の数か村の横浜市編入に伴い、神奈川区の一部も併せて新設、横浜港の北側という意味で港北区と名付けられ誕生しました。現在では横浜市の副都心であるJR新横浜駅を中心に事業所が多く、人口は市内最多。そして神奈川県最大の多目的イベントホール「横浜アリーナ」やJリーグの横浜F・マリノスの本拠地「日産スタジアム」などスケールの大きな施設を擁するまちとして発展しています。
そんな港北区の図書館は、菊名駅から歩いて7分ほどの位置、旧区役所の建物を利用して昭和55年(1980年)8月27日に市内7番目に開館、今年35周年を迎えました。1,2階が図書館、3階は菊名地区センターになっています。
左) 高木学園女子高等学校美術部制作のメロンクリームソーダがコンセプトの横断幕
右 )開館35周年記念で募集した図書館キャラクターのぬりえが児童書コーナー壁面に
まちの特徴をとらえた楽しい館内
港北まちの情報コーナー
入口を入ってすぐ左手は「まちの情報コーナー」になっています。郷土資料がぎっしりと詰まった棚の横には「港北図書館友の会」「横浜F・マリノスコーナー」「港北まちのニュース」の棚。
港北区にホームグラウンドのある横浜F・マリノス関連企画も活発に行われており、建物入口ではマスコットキャラクターマリノスケのボードがお出迎え、また館内にあるチームフラッグや選手の顔写真のついたラッピングブックトラックが港北図書館の特徴のひとつとなっています。
祝35周年! 開館35周年記念イベント
今年開館35周年を迎えた横浜市港北図書館。年間を通して記念事業を行っていますが、開館記念日の8月27日は盛大に誕生日を祝うイベントがおこなわれました。
「港北の昔ばなし紙芝居の会」によるオリジナル紙芝居の上演
「まちライブラリー」提唱者礒井純充(いそいよしみつ)氏を迎えて(開館35周年記念講演会)
本のちからでつながるまちと人
開館35周年イベントが華やかに開催されたのは図書館職員さんの尽力はもちろんですが、図書館を支える地域の人々の力も大きいようです。
横浜市港北図書館には、図書館を支え、ともに地域で読書に関わる活動をしている団体があり、ゆるやかにしっかりと図書館と連携、本とまちの人との関わりをサポートしてくれています。
頼もしい地域のちから
●港北図書館友の会
平成22年(2010年)、港北図書館を支え育てていくために図書館と協働することを目的として発足したボランティア組織の市民団体。講演会の開催、読書会「友の会サロン」などを行っています。
中でも平成24年(2012年)に初めて開催した「古本市プロジェクト」は市民の本の再利用と図書館の蔵書サポートとして、市民と図書館をつなぐ活動となっています。
その手順は次のとおり。
地域の人から読まなくなった本の寄贈を募集し、集まった本は図書館職員チェックのもと図書館の蔵書となります。蔵書からもれた本は古本市として販売、収益で図書館の希望する本を購入し寄贈。さらに集まったすべての本を有効に活用するため古本市終了後には読書関連施設に寄贈したり、震災復興活動への寄付にもあてられているのです。
この活動の成果もあって、港北図書館は横浜市内の図書館(横浜市中央図書館を除く)の中で、寄贈による一般書の年間受入れ冊数3,914冊と最も多い図書館となっています。(「横浜市の図書館2015(横浜市立図書館年報)」 横浜市中央図書館企画運営課 平成27年7月発行より)
●港北昔ばなし紙芝居の会
平成26・27年度の港北区役所生涯学級受講生による紙芝居の制作、上演グループ。港北区出身の紙芝居作家ときわひろみ氏の指導のもとスタートとしたという本格派。港北図書館の郷土資料を活用して地域の昔ばなしを調べ、オリジナルの紙芝居を作っています。港北図書館のほか、区内の施設などで紙芝居を発表する機会も増えています。
●朗読会とおはなし会
ふたつの朗読会グループ「朗読の会ビブロ」と「朗読グループNEXUS(ネクサス)」が大人向けの朗読会をそれぞれ定期的に行っています。また、「港北おはなしネットワーク」等の協力で、来館者の多い土曜日に子ども向けおはなし会を開催。1~3歳児向けの「ひよこのおはなし会」は、市民ボランティアの協力を得て開催回数を増やし、月に2回実施するようになりました。
司書さんたちの分類魂
図書館の楽しさの一つは本棚を眺め、たくさんの本を知り、手に取ることができること。どんな棚に構成されているか…実は司書さんの腕の見せ所でもあります。
横浜市内の図書館は全館で日本十進分類法(N.D.C)にもとづいて共通の分類をしていますが、実は地域性などに応じて分類が異なることもあります。(蔵書数の膨大な横浜市中央図書館にはさらに細かい分類があります)
「例えば英文の手紙の書き方の本をビジネス書とするか語学書とするかなどは、その地域の人が利用しやすい分類を心掛けます。また棚の位置や置けるスペースに応じても工夫が必要で、時には分類を変更することもあります」とこのこと。その手間と工夫の結果、貸出回数がぐんっとふえることもあるそうで、そんなときには司書さんも「よし!」と手応えを感じるとか。
時には、司書さんたちの地域や各図書館の特徴に合わせて工夫される分類魂を想像しながら書架を眺めてみるのも楽しそうです。
ちょっとおまけ ラベルの色いろいろ
図書館各館ごとにバーコードのついたラベルの色が違うこと、ご存知ですか?
資料整理のための区別なのですが、案外気が付かないもの。横浜市内他館の本を予約などで借りた時など気にして見てみるとおもしろい。18館のラベル色チェックもしてみたくなります。
寄り道さんぽ 図書館とまち歩き
横浜市の区では5番目に広い面積の港北区。港北図書館の他にも、本に親しめるスポットがたくさんあります。図書館からまちの中へ・・・のんびり散策に出掛けてみましょう。
●大倉精神文化研究所附属図書館
大倉山駅から坂を歩いて7分。小高い丘の上静かな森に位置する大倉精神文化研究所は、東西両洋における精神文化や歴史などの科学的な研究と普及活動による、国民の心の修養や教育を目的として大倉邦彦[明治15年(1882年)~昭和46年(1971年)]によって昭和7年(1932年)に創設されました。
その趣旨に則り、附属図書館は哲学・宗教・歴史等の資料約10万冊の蔵書を有します。
3階にある第2閲覧室は貸出カード保有者が利用できるスペース。静かな室内で窓の外に広がる緑を感じながらゆっくり読書や調べものをすることができます。
「大倉精神文化研究所では定款にもとづき、地域社会との連携も大切にしています。附属図書館としては港北図書館との連携で地域資料の収集や展示パネルの貸出しなどもしています。研究者だけでなく、地域の人が利用してくださると嬉しいですね」と、部長の平井誠二さん。豊かな緑に囲まれて本と親しむ・・・素敵な時間の過ごせる場所です。
アクセスなど利用案内
●大倉山おへそ
大倉山駅からエルム通りを進むこと4分。オレンジ色の看板に大きな「まる」。<大倉山の「人」と「縁」を「 ソーシャル」で結ぶ>をコンセプトに2014年オープン。商店会や大倉山地域情報発信場所であり、みんなの活動スペースです。毎月1回第4火曜日「おススメ本読書会 」を開催しています。美味しいコーヒーが手軽な価格で飲めるので、買い物途中にちょっと一息にも気軽に立ち寄ることもできます。
アクセスなど利用案内
●ポラーノ書林
菊名駅から15秒!あまりの近さにうっかり通り過ぎてしまいそうな本屋さん。元住吉の店舗から移転して35年、書店でありながらスペシャリティコーヒーを飲むこともできます。小さなスペースに選び抜かれた本が並ぶ個性的な棚は眺めているだけでも時間を忘れてしまいそうです。本の販売だけでなく、朗読会やよみきかせ会などゆるやかにイベントも行っています。本にまつわる人やものに触れ合うことのできる駅前オアシスです。
アクセスなど利用案内
●まめどSpace結
港北図書館から歩いて7分ほどの住宅地内にある一軒家。2013年夏にオープンした地域の人の交流の場。平日はランチもあり、和室は小さなお子さん連れにも人気です。1階奥の本棚には様々な種類の本が配架されていて自由に読むことができます。
アクセスなど利用案内
ちょっとおまけ 情報提供受付中
横浜市港北図書館では、本があり人が集える場所を紹介したりつながり作りをしたいと考えているそうで、そんな場所の情報を募集中です。ご存知の方は図書館にお知らせください。
図書館からのメッセージ
土岐千尋さん 木下豊館長 木村直之さん
木下豊館長からのメッセージ
「つながる!ひろがる!幸せになる!」そんな思いで港北まちじゅうがブックカフェに
開館35周年の節目となる今年4月に横浜市港北図書館長に就任しました。港北区内にはまちカフェが本当に多い。開館35周年記念講演会でお話いただいた礒井純充さんの進めていらっしゃる「まちライブラリー」などと連携しながら、港北まちじゅうブックカフェという感じになると楽しいですね。
本に親しむ、本を楽しむ、本で繋がる、本で元気をもらえる、そんな感じに日常生活の身近なところで本に出会える場所をどんどん増やせたらいいですね。「こうほくdeこうふく」、こんな言葉が多くの区民の合言葉になったら素敵ですね。5年後の2020年は開館40周年、同時に東京オリンピック・パラリンピックイヤーです。それも視野に入れ、今後の港北区での本と人のつながりづくりを進めていきたいですね。
今回の取材では土岐さん、木村さんにお話をうかがいました。図書館のことやまちのこと、図書館に関わってくださっている地域の人のことをアツく教えてくださいました。「図書館の仕事は地味なので…」とおっしゃっていましたが、とても楽しい図書館でした。そして特にアツいのが木下豊館長でした。(左は横浜市港北図書館キャラクター)
EDITORIAL NOTE
今回は本をきっかけにして、まちと人、人と人がつながる、そんな場所を増やしたいという思い溢れる図書館の姿に圧倒されました。人がつながることで居場所ができ、笑顔が広がる。今回ご紹介した場所以外にも館長さんが自らの足でまちの中の「本サロン」や「ブックカフェ」情報集めを始めています。今後の港北図書館の活躍から目が離せません。
【参考文献】
書名をクリックすると横浜市立図書館での所蔵が見られます。
『港北区史』 1986年 港北区郷土史編さん刊行委員会
『港北の歴史散策』 2003年 財団法人大倉精神文化研究所編
『わがまち港北』 2009年 平井誠二 『わがまち港北』出版グループ
『わがまち港北2』 2014年 平井誠二 林宏美 『わがまち港北』出版グループ
『ぶらりハマ歩き』 2010年 NPO法人横浜シティガイド協会 編著 神奈川新聞社
『てくてくこう歩く 足をのばしてさあ!港北ウォーキングガイド』 2009年
TEAMてくてく(港北区役所地域振興課内)監修
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横浜市港北図書館
利用案内
開館時間
- 火曜日~金曜日:午前9時30分~午後7時
- 土曜日・日曜日・月曜日・祝(休)日:午前9時30分~午後5時
- 12月28日:午前9時30分~午後5時
- 1月 4日:正午~午後5時
休館日 - 施設点検日(月1回)
- 年末年始(12月29日~1月3日)
- 図書特別整理日
アクセス
住所:〒222-0011 港北区菊名6-18-10
電話:045-421-1211
ホームページ:http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/chiiki/kohoku/
取材協力/画像・資料提供_横浜市港北図書館 取材_ 安木由美子
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