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五冊全部読み切り敬子は考え込んだ。

(どの本の人生も前に読んだリリィの様な劇的で感動的な内容ではないな)

そう心の中で呟き考え込んでいると、クーモは突然立ち上がり敬子に向かって近づいてきた。そして考え込んでいる敬子に向かって話しかけた。

「どうだった?ケイコ?俺に合う内容の本がこの五冊の中にあったのかい?」

「ん?それが・・」

何とも歯切れの悪そうな言い方で敬子はクーモに向かって答えた。

「どの本もクーモの人生には、いまいちだね!この中に私がクーモに進める事が出来る本はなかったわ。」

そう言って敬子がクーモを見つめると

「そうか、駄目だったか!この五冊の中に俺の次の人生があると思ったんだけどな!」

少し、目線を下げて話すクーモの手には先程読んでいた本が握られていた。クーモはその本をテーブルへ置き敬子に言った。

「この本を読んでみてくれない?俺、この本がどうしても気になるんだ、どうしてだろう?」

「気になる?どうして?」

そう敬子が聞き返すと考え込んだ様子でクーモが敬子に言った。

「なんだかこの本の人生が今まで俺が読んできたどの本より心に沁みるんだ、どうだろうケイコがよかったら俺はこの本の人生を歩んで見たいんだけれど、この本をケイコに読んでもらってから決めたいんだ!」

突然言われたクーモのその言葉には決意のような強い意志を感じ、敬子は疑問を聞き返すことすら出来ずテーブルにのっているその本に手を伸ばした。

その本の厚みと重さは先程読んだどの本よりも重く感じた。表紙を捲り次々とページを捲り読み込んで行くと誕生したその子供の名前はスコット・ガイバーガーと言う名前だった。

(スコット・ガイバーガー?これってもしかしたら・・)

そう思い、敬子が読み進めていくと主人公はオクラホマ生まれの大きなトウモロコシ農園を営んでいるトーマス・ガイバーガーの長男として生まれた男の子だった。

敬子は突然、この本の初めの生い立ちよりもセンターよりもやや後方のページを開きその内容を読み始めた。その内容はすでに戦争より生還し大手物流会社のファースト社で勤務しているガイバーガーであった。

(こんな偶然があるんだろうか?)

余りの驚きに顔を上げクーモを見るとクーモは何やら不可思議な表情で敬子を見つめていた。

敬子は心の中で考えていた。

(この本のガイバーガーがクーモで、アンがリリィ?何て偶然なんだろう!これって、神様の故意?それとも偶然?)

そんな事を考えながら敬子はこの本を読み進めているとその様子を見てクーモが敬子に話しかけた。

「やっぱり、駄目かい?」

半信半疑の様子でクーモは敬子の答えを待った。

「いや、違うのクーモ。訳は言えないけどこの本はリリィへ選んだ本と同じくらい素晴らしい人生よ!そんな本を偶然に見つけ出した事に驚いているの」

そう聞くとクーモは不思議そうに敬子に言った。

「どうして、敬子が直にこの本の人生が素晴らしいって事が解るんだい?そして、その訳が言えないって事はどう言う事なの?」

「それは・・」

敬子は悩んでいた。リリィの新しい人生に携わる内容を簡単にクーモに説明して良い物なのか、しかしここで何とクーモに説明をすれば良いのか

「クーモよく聞いて、この中にいる人は次の世の一冊を選ぶ際は自分で読んで決めているんでしょ!この本の人生が素晴らしい事は私には解っている、何故、それが解っているかも答えようとすれば答えられる。でも決断をするのはあなたなのよ、私ではないんだから私がなぜこの本が素晴らしいか、そしてこの本の内容を知っているかどうかではなくてあなたが最後にどう思考えるかがポイントなんじゃない?」

そう敬子がクーモに言うとクーモは悩んだ様子で敬子を見つめた。

「解ったよ!なぜこの本の内容をケイコが知っていたか聞かないよ、でも一つだけ聞かせてよ。この本は俺の次の人生に相応しい物なのかだけは」

そう言ってクーモは敬子に聞き返した。

敬子はそんなクーモに背筋を伸ばしキッパリと言い切った。

「クーモ、この本はそれは素晴らしい人生よ、だけどその人生はけっして平坦ではなかったでしょ!強い意志と悲しみを理解した本物の男と言った内容だからこそ、この本の人生はあなたに相応しいと私は思う」

その言葉を聞いてクーモは少し考えた様子だったがすぐに笑顔で敬子にむかって答えた。

「決めたよ俺、この本を選ぶよ」

そういい切ったクーモの笑顔に敬子は安心感を抱いた。


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「ようーし、これでやっと俺の本が見つけ出せるぞ!」

さっきまでの事が嘘の様にクーモは元気いっぱいにハシャギまくった。

「でもさ、敬子!リリィはなぜあんなにも変わってしまったんだい?あの本にはいったいどんな人生が書かれていたのさ?」

不思議そうにクーモは敬子に訊いた。

「それは、秘密よ!」

そう笑顔で答える敬子は椅子を立ちクーモの本が待つ一番西の本棚へ向かって歩き出した。

歩く距離は長かったがクーモと話す会話は尽きなかった。

「ねえ、そう言えばケイコはいったいどんな本を探すんだい?」

そう言われ敬子はハッとし自分の一冊についてまったく考えていない事に気がついた。

「何も考えてなかった」

「えっ?」

驚いた様子でクーモが敬子を見るとその表情は、悩んだかのように首をひねり上目づかいで歩いていた。

「あるだろう?何か、リリィじゃないけど美しい女性になりたいとか何か?」

「そう言われても?」

依然、敬子は悩んだ様子で歩き続けた。

「ん・・・・・・」

幾ら悩んでも敬子にはこんな人生を歩みたいといった理想が出てこなかった。

そもそも敬子は決断力のある人間ではなかった。結婚を決めた時など隆史にプロポーズされる前にいろいろアプローチして来た男性を悩む事が出来ず、そのまま隆史と結婚式を挙げたほどだ。我が子の名前を決める時でさえ“どちらが優貴と沙紀でも良いよ”とさえ言ってしまう程だった。そんな敬子が次の一冊をそうそう決められるはずがなかった。

「そうだ!」

ひらめいたかのように突然、敬子は叫んだ。

「次は、男性になってみようかな」

クーモは開いた口が(ふさ)がらずよだれを垂らしそうになった。

「だから、そう言った事じゃないでしょ・・・」

「冗談よ!」

敬子がそんなクーモの子供っぽく怒る表情に笑いながら歩いていると西の端近くにさしかかった。

「まるでさっきと逆ね。テーブルも椅子もあって入り口だけがないんだ・・」

「そうさ、この配置は南も北も一緒なんだ。それぞれテーブルと椅子が配置されているんだよ」

そう言うとクーモはリリィが言っていた西の端にある棚の横へ早歩きで進んで行った。棚の横には確かに五冊の本が積んでありその本を見つけたクーモの顔は安堵の表情でいっぱいだった。

「あった、これだ!」

棚の横に置かれている本に駆け寄りクーモはその本を大事そうに抱えテーブルの上に置いた。敬子がその本を手に取り一冊、そしてまた一冊と捲るとその全てに物語が記載され、その文字を見てクーモはホッとした表情で椅子に座り込んだ。

「敬子、それじゃ選んでくれよ。リリィの時の様に俺に会う感動的なお金持ちの本を」

そう言ってクーモは敬子をせかせた。

「解っているから、この本が読み終わるまであなたはどこかこの近くの本棚の本でも読んでなさい。もしこの中にあなたの一冊がなかったらまた一から探し始めないといけないんだから」

そう言われクーモは渋々、敬子が見える少し離れた本棚に向かいその棚から一冊の本を抜くとその場に座り込んでその本を読み始めた。敬子はテーブルに置かれた一番上の本を手に取り表紙をゆっくりと捲り読み始めると徐々にその内容に同調していった。

この一冊目の本を中ほどまで読む事にそう時間はかからなかった。

「あー!」

そう声を出し両手を上げ伸びをすると、クーモは先程抜いた本を一心不乱に読んでいた。

(どうしたんだろう?やけに集中して読んでるな?)

そうは思ったが敬子もクーモが大人しいのでまたこの本の話の続きを読み始めた。

敬子がこの本を読み終わり視線を上げるとクーモは未だにその本を読んでいた。気にはなったがクーモには声をかけずに二冊目の本を読み始めた。

一冊目に続きこの二冊目の主人公も敬子にはピント来るものがなかった。皆、共通して言える事は使い切れないお金を持つと次に向かうその思考はくだらない物へ向けてしまうという事だった。三冊目、四冊目、そして最後の五冊目まで一気に読み切ろうとしていた時、敬子はふと、クーモの事を思い出し、視線を上げてみた。クーモは先程から読んでいた本を閉じ、何やらうつろな表情でこちらを見ていた。そのクーモ様子を気にはなったが敬子はこの五冊目の本を一気に読み終えてしまおうと残りのページに集中した。


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「私がここに来た時、案内してくれた子はそれは可愛らしい一人の少女だったわ。その子の名前は・・・なんと言ったか?」

少し考えた様子でリリィが答えた。

「そうミンと言っていた様な気がする。何せ私もだいぶ長い間ここにいた様な気がするからすっかり彼女の事を忘れかけていたわ、確かにその子は私にここがどういった目的で、ここの本がどういった物なのかを説明してくれたわ、そして間もなくして私の前から消えてしまった、その後その子と出会う事はなかった。」

その話しを聞いてクーモが言った。

「俺の時はおじいさんだったぜ」

横から敬子も答えた。

「私の場合は二匹の年老いたウサギだった」

「ウサギ?」

同時にリリィとクーモは顔を見合わせた。

「その年老いたウサギが私にここの全てを教えてくれたわ」

「そうなんだ。皆、それぞれ違う人に案内されてここまでに至ったんだ」

そうこう話していると敬子にも見覚えがある入り口近くのテーブルが本当に小さくだが微かに見えてきた。そのテーブルに向かって歩いているとクーモが突然言った。

「あのテーブルに誰かいないか?」

二人が目を懲らして見るとテーブルの椅子に誰かが腰掛けているように見える。

「見えるわ」

そうリリィが言い出し、続いて敬子も叫んだ。

「私にも見えるわ、だけどもしかして子供?」

皆がよりテーブルに近づくとやはり椅子に腰掛けているのは少女だった。

「ミン?」

そう声を出したのはリリィだった。

「どうしてミンがここに?」

不思議そうな顔でリリィがミンに向かって歩いていくともうテーブルまではすぐそこまでといった距離になっていた。

ミンは黙ってリリィがテーブルに来るまでただ笑顔で待ち続けていた。

リリィがテーブル前に着くとミンは立ち上がりリリィに向かって話しかけた。

「おかえりなさい」

三人にはどういった事なのか何が起きているのかまるっきり理解できなかった。ただ、ふと二人がリリィを見るとリリィの顔は涙で濡れその瞳からは後から後から涙が流れ続けた。

「よく頑張ったわね、リリィ」

まるで今までリリィを見守っていた母親のようなその言葉は優しく暖かかった。

ミンはまるで子供の様にしゃくり上げ涙を流しているリリィの手を握りこの図書館の入り口へとリリィをいざなった。

その姿を敬子とクーモがただ黙って見つめていると出口の扉が開き、そこから注がれる眩い光がミンとリリィを包み込んだ。二人が扉を通りすぎようとしたその瞬間、敬子とクーモにはリリィの声が聞こえた。

「ありがとうケイコ、そしてクーモ。二人に出会えて本当によかった。」

その言葉を最後にその眩い光は引き扉の向こうにいた二人の影は消えていた。

但し、敬子にはその光の中でリリィとミンが何やら話しているように見えた。

「行っちゃったね」

そうクーモが言うと敬子が虚ろな表情で答えた。

「そうね・・」

敬子もクーモも何が起きたのか解らずテーブルにある椅子に座り無言で遠くを見つめるばかりだった。

「ケイコ、あれが次の世界に行くって事なのかい?」

そうクーモが敬子に質問をすると敬子は遠くを見つめながら

「そうみたい・・・それにしても一瞬とはいえ何て神々しい光なのかしら」

そう言い終わるとしばらくの間、二人はその場から動く事が出来なかった。