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ここまで読み終えるとリリィはその本を閉じ考え深げに顔を上げると遠くを見つめ一つため息を付いた。

(私はきっとこう言う人生を求めていたのかもしれない本当の美しさとは外見だけではない内面との両立でより一層際立(きわだ)つ事をこの本は教えてくれた。)

そう思いながらリリィはゆっくりと席を立ちテーブルの上の本を手にすると敬子とクーモの待つ棚へ向かって歩き出した。

時間はただ過ぎて行くばかりで、いまだにリリィは戻ってこない。

「どうしたんだろう?気に入らなかったのかなあ?」

クーモの呟きは敬子の不安をいっそう煽った。

(そんな事はない、あの素晴らしい人生を否定出来る人間なんて絶対にいない!)

敬子は、心の不安をリリィに手渡した本の内容を思い返しながら払拭していった。

「大丈夫!絶対にリリィはここに戻ってくる」

その敬子の自信ある意見とは裏腹にクーモの内心は穏やかではなかった。

二人は腰を下ろし棚の隅に座っていた。

そこへリリィが戻ってきた。遥か彼方の棚の方向からゆっくりと、ゆっくりと右手には敬子から渡された本を抱え、その歩く姿には先程までの刺々しい(とげとげしい)雰囲気はまるでなく一歩一歩こちらへ向かってくるその姿には優雅さと気品さえ感じ取れた。

その歩く姿にクーモと敬子が見とれているとようやくリリィが敬子たちの前までやってきた。二人はその場から立ち上がった。

「ありがとう、ケイコ、そしてクーモ」

この本は私が次の世界で何をすべきなのかはっきりとした答えが書かれてありました。今までどの様な本を読んでもここまでのものはありませんでした。私はきっとこの本に書かれている様な女性の人生を送りたかったんだと思います。

クーモと敬子はホッとしたかのようにお互いの顔を見合わせた。

「よかったですね!」

そう敬子が言うと隣からクーモがリリィに向かって質問を投げた。

「ねえ、リリィそれで、俺の本は何処に隠したのさ」

「そうね、クーモ!あなたの本はあと五冊あったわ、それはねこの図書館の一番西側にある棚の隅に置いて在るわ。」

そう言うとリリィはその本を大事そうに胸に抱え入り口に向かって歩き出そうとした。

「待って、リリィ。私達もあなたを送るわ、ここを出たら私達、永遠の別れになるんでしょ。この図書館の入り口まであなたを送らせて」

そう敬子が言うとリリィは笑顔で二人に向かって微笑んだ。

図書館の入り口へ向かう途中、リリィはここに来てからの事を三人で話した。

彼女にもここに来てからいったいどの位の時間が過ぎたのかまったく感覚がないと言った。

敬子はリリィに向かって幾つかの質問をし、その一つにこの図書館に来た時に迎えてくれた案内人の事を訊いた。


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試写会を終え、「戦場のマリア」は全世界一斉上映となった。

その興行収益は過去最高の数字を取り栄誉とされる各賞は全てこの作品に集中されるだろうとどの評論家からも言われるほどだった。

上映の際には映画のタイトルが上がる前にマリアが試写会でスピーチした言葉が乗せられる事となった。

「全ての、子供達には生きる権利がありそれを支える全ての人間の罪を私は許し愛するでしょう」

アンがスピーチで話した前後は削除されたがあたかもマリア本人が語ったかのようなこの

台詞だけが残り、この映画をよりいっそう艶立たせた。

アンはその後、この作品で多くの賞にノミネートされたが主演女優賞だけは逃した、しかし助演女優賞など多くの賞に輝き次期、主演女優賞候補に一気に上り詰めた。

そして、アンはマリア財団をガイバーガーから受け継ぎ世界各国で戦争孤児の救援、救済活動に勤め今世界で一番美しく輝いている女性として注目された。


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会場は、満員になりアンが赤い絨毯に足がかかると一斉に多くのカメラマンのフラッシュがたかれた。無数のシャッター音と観客の歓声が会場を包み込み、全員がこの瞬間に興奮した。テレビカメラは一斉にアンに注目しその様子は正面の大型スクリーンに映された。次々と登場する俳優や女優に混じりながらもアンの美しさはひときわ栄えていた。

「さあ、アン皆に答えて!右手を上げて大きく振ってごらん」

そう声をかけてくれたのは監督のケビン・ガードナーだった。言われるがままにアンは手を上げ観衆に答えるとその歓声はよりいっそう大きくなっていった。

壇上に上がる手前の来賓席にはスコット・ガイバーガーが座っていた。アンがガイバーガーを見つけると小さく手を振りガイバーガーに合図を送った。その合図にガイバーガーも嬉しそうに手を振って答えた。

壇上に上がり全員が揃うとその歓声はいっそう高鳴り鳴り止む事がなかった。司会者が会場を軽いジョークで落ち着かせそれぞれの俳優、女優にインタビューを始めた。一様にこの映画の製作秘話やマリアへの賛辞が送られた。アンの順番に来たときアンは自分では無いような感覚に襲われ言葉を勝手に発していた、自分が考えている言葉とはまるで違う事を話している自分に違和感を感じながらもアンのスピーチは終了した。

会場は一瞬、静まり返った。誰もが立ち上がりアンに向かって喝采を送っている、会場では涙している人もいれば目頭を押さえている人たちも多く見受けられた。壇上の俳優、女優たちもアンのスピーチに感動し握手を求めたり抱きしめてくる者が多くいた。アンにはいったい自分がいったい何を話したのかが解らなかった。

一様に挨拶を終えると皆、壇上を降り用意された席に着いた。アンはガイバーガーの隣に座る事になっていた。

「アン、素晴らしいスピーチだったよ、何時考えたんだい?私にはまるで本当のマリアが話している様に思えたよ。」

そうガイバーガーが言うとアンは虚ろな目で質問をした。

「私、一体、何て話したんですか?壇上でのスピーチの時、意識を失ってしまったようで気がついた時には皆の拍手を浴びていた状態だったんです。」

そう言うとガイバーバーの方が驚いた表情でアンの顔を覗きこんだ。

「アン、それではさっきの言葉は・・・」

言葉に詰まらせながらガイバーガーはアンに向かって言った。

「あの言葉はきっとマリアが君の身体を借りて話していたんだね」

「ありがとう」

そう言うとガイバーガーは涙を流し、誰にも気ずかれぬようそっとその涙を胸のチーフで拭き取った。

試写会が始まり会場はその壮絶なシーンの繰り返しに息を呑み、またマリアのとった行動に感動と賞賛を送った。

試写も三時間が過ぎ、エンディングロールが上がっても会場は物音一つしなかった。その静かな会場にはすすり泣く声や感動でその場から動けない者が多くいた。

会場にライトが照らされると会場からは拍手が少しずつ沸き上がりその拍手はやがてセントラルパーク中に響き渡った。誰しもがこの映画とそして主人公のマリアに向けた拍手である事が理解出来た。