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「私がここに来た時、案内してくれた子はそれは可愛らしい一人の少女だったわ。その子の名前は・・・なんと言ったか?」

少し考えた様子でリリィが答えた。

「そうミンと言っていた様な気がする。何せ私もだいぶ長い間ここにいた様な気がするからすっかり彼女の事を忘れかけていたわ、確かにその子は私にここがどういった目的で、ここの本がどういった物なのかを説明してくれたわ、そして間もなくして私の前から消えてしまった、その後その子と出会う事はなかった。」

その話しを聞いてクーモが言った。

「俺の時はおじいさんだったぜ」

横から敬子も答えた。

「私の場合は二匹の年老いたウサギだった」

「ウサギ?」

同時にリリィとクーモは顔を見合わせた。

「その年老いたウサギが私にここの全てを教えてくれたわ」

「そうなんだ。皆、それぞれ違う人に案内されてここまでに至ったんだ」

そうこう話していると敬子にも見覚えがある入り口近くのテーブルが本当に小さくだが微かに見えてきた。そのテーブルに向かって歩いているとクーモが突然言った。

「あのテーブルに誰かいないか?」

二人が目を懲らして見るとテーブルの椅子に誰かが腰掛けているように見える。

「見えるわ」

そうリリィが言い出し、続いて敬子も叫んだ。

「私にも見えるわ、だけどもしかして子供?」

皆がよりテーブルに近づくとやはり椅子に腰掛けているのは少女だった。

「ミン?」

そう声を出したのはリリィだった。

「どうしてミンがここに?」

不思議そうな顔でリリィがミンに向かって歩いていくともうテーブルまではすぐそこまでといった距離になっていた。

ミンは黙ってリリィがテーブルに来るまでただ笑顔で待ち続けていた。

リリィがテーブル前に着くとミンは立ち上がりリリィに向かって話しかけた。

「おかえりなさい」

三人にはどういった事なのか何が起きているのかまるっきり理解できなかった。ただ、ふと二人がリリィを見るとリリィの顔は涙で濡れその瞳からは後から後から涙が流れ続けた。

「よく頑張ったわね、リリィ」

まるで今までリリィを見守っていた母親のようなその言葉は優しく暖かかった。

ミンはまるで子供の様にしゃくり上げ涙を流しているリリィの手を握りこの図書館の入り口へとリリィをいざなった。

その姿を敬子とクーモがただ黙って見つめていると出口の扉が開き、そこから注がれる眩い光がミンとリリィを包み込んだ。二人が扉を通りすぎようとしたその瞬間、敬子とクーモにはリリィの声が聞こえた。

「ありがとうケイコ、そしてクーモ。二人に出会えて本当によかった。」

その言葉を最後にその眩い光は引き扉の向こうにいた二人の影は消えていた。

但し、敬子にはその光の中でリリィとミンが何やら話しているように見えた。

「行っちゃったね」

そうクーモが言うと敬子が虚ろな表情で答えた。

「そうね・・」

敬子もクーモも何が起きたのか解らずテーブルにある椅子に座り無言で遠くを見つめるばかりだった。

「ケイコ、あれが次の世界に行くって事なのかい?」

そうクーモが敬子に質問をすると敬子は遠くを見つめながら

「そうみたい・・・それにしても一瞬とはいえ何て神々しい光なのかしら」

そう言い終わるとしばらくの間、二人はその場から動く事が出来なかった。