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「さて、私も元気を出して自分の本を探す事にしよう」

そう決意し歩き出そうとする敬子の目の前にはこの図書館の棚が永遠と続く壁の様にさえ見えた。

「どうしよう?このままこの図書館の本を永遠と読んでいても私にはなりたい人生を選択する事なんて出来るんだろうか?」

考えれば考える程、敬子は自分が目指す人生が見えてこなかった。その場にある椅子に腰掛け敬子は永遠に続く時間の中でただその事だけを考えた。

(そう言えばどうして私はこの図書館になぜ来たんだろう、いや選ばれたんだろう?この場所は誰でもが来られる場所でない事は入り口でテンとサンが説明をしてくれた。)

敬子はこの図書館でのクーモやリリィとの出会いからこの場所に至るまでを改めて考え直した。

(さっき、クーモを迎えに来てくれたのは彼の弟だったはずだ・・それはクーモが弟を助けたことによって次の世界ではもっと多くの人を助けられるだけの魂が兼ね備えられていると判断したからこの図書館に呼ばれたんだろう、そう言った事は理解出来る。しかし、私は、生前は単なる母であり妻でありこんな私みたいな平凡な人間は何処にだっているのになぜ私がここにいるんだろうか?リリィの場合だってきっとあの女の子は何かリリィと関係があったにちかいない、しかし自分の場合は二匹の老ウサギが案内人として迎えてくれたが幾ら考えてもその二匹のウサギと私の関係すら見えてこない)

敬子は考え続けたが、結局のところ答えは見つからずじまいだった。

どの位の時間が流れたのだろうか、敬子はその場から立ち上がり周りを見渡すと心を決めたかのように席を立ち歩き出した。

(これまでの事を考えても、もう仕方がない次の世の一冊だって、このままもし本を読み続けても決められないなら、次に手にした本をそのまま私の一冊として決めてしまおう)

答えが見つかったのか無理やり自分を納得させているのか敬子にも判断できなかったがとりあえず次の行動への結論だけは出すことが出来た。

(だけどその前にこの図書館にはどれだけの本があるのか見て回ってみよう。)

興味本位も重なり、まだ行っていない一番東の端に向かって敬子は歩き出した。

「こうして棚にある本を一冊、一冊見ていると本当に一冊として同じ本はないんだ」

「人の人生って厚い本もあれば薄い本もあったり、人生の寿命の様に、ここの本はその厚さで表現されているんだわ」

「でも、大きな本があったり、小さな本があったり大きさは何を意味しているのだろう?

それに、それぞれの本には何て多彩な着色がされているんだろう。こうして見てもあの棚の一番上にある真っ赤な赤い本はそれは人生を謳歌した情熱的な人生を送る本のように見えるし、その先にある本は灰色のそれは薄くて小さな本があるけどあの本はとても寂しい人生を送る様な気さえ思えてくる」

こうして今まで以上に思った事を声に出し気持ちを奮い立たせる敬子ではあったが、クーモと共にいた時間が長かった為か少しずつ不安な気持ちや人恋しい想いでいっぱいになり始めていた。

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後少し歩けばもう図書館の入り口が見えてくる頃といった所でクーモが突然歩くのを止めた。

「どうしたの?クーモ」

何か思い詰めた表情でクーモは敬子に話しかけた。

「ケイコ、本当に俺がいなくても大丈夫かい?」

そう改めてクーモに言われ心を決めていた敬子の心は少し揺らいだが、もう敬子には先程のクーモの話を聞いた後では早くクーモに新しい世界で活躍をして欲しいと言う気持ちしかなかった。

「大丈夫、私、そんなに弱くないわよ、クーモが早く行かないと私の本を落ち着いて探す事が出来ないじゃない。」

「・・・・・」

何とも心配そうな表情でいつまでもクーモは敬子を見つめていた。

「さあ、もう少しなんだから行こう、クーモ」

クーモの手を引き敬子は図書館の入り口へ向った。

入り口が微かに見えてくるとやはりリリィの時の様にテーブルに一人の老人が座っている姿が見えて来た。

その姿を見て敬子はクーモに向かって話しかけた。

「ねえ、クーモ本当にあのおじいさんに見覚えはないの?」

「んんん・・・」

何とも切れ味の悪い返答が敬子に戻ってきたと思ったらクーモから意外な返事が返ってきた。

「何だか、見覚えのあるような・・こうして改めて見ると懐かしい雰囲気があるんだよ」

「雰囲気?」

「そう何か懐かしいような・・・だけど顔に見覚えはまったくないんだ」

「そう」

二人は老人が待つテーブルに向かって歩みを進めた。

テーブルの前に着くと老人は杖を突きゆっくりと立ち上がりクーモに向かって話しかけた。

「本は見つかったかな」

どこか温か味のあるこの口調に対してクーモはぶっきらぼうに答えた。

「ああ」

「そうか、なら行こう・・」

入り口へ向かう老人に対してクーモは尋ねた。

「おじいさん、あんた誰なんだ・・」

そうクーモが切り出すとそのおじいさんは答えた。

「それはこの入り口を出たらわかることじゃよ。さあ行こう」

その老人に(うなが)されクーモは仕方なくこの図書館の入り口へ向かってゆっくりと歩き出した。

その様子を敬子はただ黙って見つめていた。すると老人に連れ立って歩いていたクーモが突然、振り返り敬子に向かって叫んだ。

「ケイコ、本当にありがとう、ケイコと会えて本当に良かった。生まれ変わってもケイコと出会いたいけどそう言う訳には行かないんだろうね」

その言葉にただ笑顔で答える敬子の瞳からはクーモに対してこみ上げてくる祝福の気持ちや寂しさ、戸惑い等の気持ちだけが後から、後から流れ頬を伝い落ちるばかりだった。

「俺が、いなくても素敵な本を見つけるんだぞ」

その言葉を最後に出口の扉が開き、眩い光がクーモと老人を包み込んだ。二人が扉を通りすぎようとした瞬間、敬子の目に飛び込んできたその光景に敬子は固まった、クーモの背中に手をかけたその老人の手の甲に大きな傷跡があったからだ、その時初めて敬子はあの老人がクーモの助けた弟だと言う事に気が付いた。

一瞬の光が通り過ぎ、敬子は思い(ふけ)っていた。

(そうか、あのクーモが話してくれた弟があの老人だったなんて。本当に驚きの何者でもない、そうしたらリリィを迎えに来ていたあの少女はだれだったんだろう?きっとリリィに縁のある人なんだろう。

そう考えるといったい私の場合は何でウサギなんだろう?ウサギを助けた覚えもないのに?)

そう考えるとその場から動く事が出来ない敬子だった。


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クーモには解っていた、周期的に来る大きなうねりのタイミングも、しかしそれよりも冷え切った、身体の感覚がない自分にも気が付いていた。

(両足の感覚もだいぶなくなって来た、次に来るうねりで一気にヤムを上げてしまわなければもう次のチャンスまで身体がもたないかもしれない。)

そう思いクーモはタイミングを考えていた。

(寄せる波より引く波の勢いの方が強い!そろそろ来るな、そう思い振り返ると大きなうねりが沖からクーモたちに向かって一直線に向かってきた。

(よし、これだ)

そう思うとクーモは上の弟達に叫んだ。

「次のうねりでヤムを上まで運ぶからヤムを引き上げてくれよ!頼んだぞ」

「解ったよ!岩場の上から弟たちの叫び声が聞こえてきた」

今度はクーモがヤムに耳元で叫んだ。


岩場

「ヤム、お兄ちゃんが一、二の、三と言ったら三でこの岩場から手を離すんだよ」

そうクーモがヤムに言うとヤムは小さく頷いた。

先程まで沖に見えた大きなうねりはもう直ぐそこまで来ていた、引き波は今までクーモの足まで沈んでいた姿を見せ海面を一気に下げた。

その次の瞬間うねりはクーモの足元からその身体を引き上げるように上がってきた。

クーモはそのタイミングに合わせて叫んだ。

「一、 二の、三。」

そう言うとクーモの浮いた身体とヤムは岩場の一番上に向かって浮き上がって行った。クーモは手を伸ばしうねりの上がり切った岩場にヤムの身体をしがみ付かせた。

ヤムはその岩場に必死にしがみ付きそんなヤムを兄弟たちは駆け寄って助けた。クーモは両手でヤムを抱えてた為、引き波に身体を持っていかれた。

引きずられるように持って行かれたその身体は傷つき身体のあちらこちらからは血が噴出し肉が裂けていた。

しかし、身体の冷え切っていたクーモにはそんな痛みすらも感じないまま引き波に身を任せ海の中に引きずり込まれて行った。

クーモの意識は薄れて行き身体の感覚も感じ取れなかった。クーモには恐怖はなかったがただ寒かった。

そう敬子はクーモから聞くと愕然とするばかりだった。もし自分がその場にいたらそこまでの行動が取れただろうか?

「凄いね!クーモは・・」

「凄くなんかないよ」

「だって私にはそんな勇気ないかもしれない」

「そんな事ない!ケイコだって自分の子供がその場にいたら同じ事をしていたと思う」

そう笑顔で答えるクーモに敬子は思っていた。

(弟の代わりとなって死んでいった事に一片の後悔も感じないクーモの強さは今まで私が見ていた少年の幼さが見えるクーモとは違い、本当に芯が強い人間だったんだ。こんなクーモなら次の世界でガイバーガーになっても、やはりアンと共に子供達の支えとなる人間になって行ける。)

そう思うと敬子は何だか嬉しかった。

「何だよ!ケイコ。薄ら笑いを浮かべて俺を見ないでくれよ」

「どうせ俺はドジをしてこっちの世界に紛れ込んだ人間さ」

「そうね、そのドジな所が私は好きだけどね」

そう言われるとクーモは照れたように頬を赤くして早歩きに敬子の前を歩いて行った。