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クーモには解っていた、周期的に来る大きなうねりのタイミングも、しかしそれよりも冷え切った、身体の感覚がない自分にも気が付いていた。
(両足の感覚もだいぶなくなって来た、次に来るうねりで一気にヤムを上げてしまわなければもう次のチャンスまで身体がもたないかもしれない。)
そう思いクーモはタイミングを考えていた。
(寄せる波より引く波の勢いの方が強い!そろそろ来るな、そう思い振り返ると大きなうねりが沖からクーモたちに向かって一直線に向かってきた。
(よし、これだ)
そう思うとクーモは上の弟達に叫んだ。
「次のうねりでヤムを上まで運ぶからヤムを引き上げてくれよ!頼んだぞ」
「解ったよ!岩場の上から弟たちの叫び声が聞こえてきた」
今度はクーモがヤムに耳元で叫んだ。
「ヤム、お兄ちゃんが一、二の、三と言ったら三でこの岩場から手を離すんだよ」
そうクーモがヤムに言うとヤムは小さく頷いた。
先程まで沖に見えた大きなうねりはもう直ぐそこまで来ていた、引き波は今までクーモの足まで沈んでいた姿を見せ海面を一気に下げた。
その次の瞬間うねりはクーモの足元からその身体を引き上げるように上がってきた。
クーモはそのタイミングに合わせて叫んだ。
「一、 二の、三。」
そう言うとクーモの浮いた身体とヤムは岩場の一番上に向かって浮き上がって行った。クーモは手を伸ばしうねりの上がり切った岩場にヤムの身体をしがみ付かせた。
ヤムはその岩場に必死にしがみ付きそんなヤムを兄弟たちは駆け寄って助けた。クーモは両手でヤムを抱えてた為、引き波に身体を持っていかれた。
引きずられるように持って行かれたその身体は傷つき身体のあちらこちらからは血が噴出し肉が裂けていた。
しかし、身体の冷え切っていたクーモにはそんな痛みすらも感じないまま引き波に身を任せ海の中に引きずり込まれて行った。
クーモの意識は薄れて行き身体の感覚も感じ取れなかった。クーモには恐怖はなかったがただ寒かった。
そう敬子はクーモから聞くと愕然とするばかりだった。もし自分がその場にいたらそこまでの行動が取れただろうか?
「凄いね!クーモは・・」
「凄くなんかないよ」
「だって私にはそんな勇気ないかもしれない」
「そんな事ない!ケイコだって自分の子供がその場にいたら同じ事をしていたと思う」
そう笑顔で答えるクーモに敬子は思っていた。
(弟の代わりとなって死んでいった事に一片の後悔も感じないクーモの強さは今まで私が見ていた少年の幼さが見えるクーモとは違い、本当に芯が強い人間だったんだ。こんなクーモなら次の世界でガイバーガーになっても、やはりアンと共に子供達の支えとなる人間になって行ける。)
そう思うと敬子は何だか嬉しかった。
「何だよ!ケイコ。薄ら笑いを浮かべて俺を見ないでくれよ」
「どうせ俺はドジをしてこっちの世界に紛れ込んだ人間さ」
「そうね、そのドジな所が私は好きだけどね」
そう言われるとクーモは照れたように頬を赤くして早歩きに敬子の前を歩いて行った。
