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後少し歩けばもう図書館の入り口が見えてくる頃といった所でクーモが突然歩くのを止めた。

「どうしたの?クーモ」

何か思い詰めた表情でクーモは敬子に話しかけた。

「ケイコ、本当に俺がいなくても大丈夫かい?」

そう改めてクーモに言われ心を決めていた敬子の心は少し揺らいだが、もう敬子には先程のクーモの話を聞いた後では早くクーモに新しい世界で活躍をして欲しいと言う気持ちしかなかった。

「大丈夫、私、そんなに弱くないわよ、クーモが早く行かないと私の本を落ち着いて探す事が出来ないじゃない。」

「・・・・・」

何とも心配そうな表情でいつまでもクーモは敬子を見つめていた。

「さあ、もう少しなんだから行こう、クーモ」

クーモの手を引き敬子は図書館の入り口へ向った。

入り口が微かに見えてくるとやはりリリィの時の様にテーブルに一人の老人が座っている姿が見えて来た。

その姿を見て敬子はクーモに向かって話しかけた。

「ねえ、クーモ本当にあのおじいさんに見覚えはないの?」

「んんん・・・」

何とも切れ味の悪い返答が敬子に戻ってきたと思ったらクーモから意外な返事が返ってきた。

「何だか、見覚えのあるような・・こうして改めて見ると懐かしい雰囲気があるんだよ」

「雰囲気?」

「そう何か懐かしいような・・・だけど顔に見覚えはまったくないんだ」

「そう」

二人は老人が待つテーブルに向かって歩みを進めた。

テーブルの前に着くと老人は杖を突きゆっくりと立ち上がりクーモに向かって話しかけた。

「本は見つかったかな」

どこか温か味のあるこの口調に対してクーモはぶっきらぼうに答えた。

「ああ」

「そうか、なら行こう・・」

入り口へ向かう老人に対してクーモは尋ねた。

「おじいさん、あんた誰なんだ・・」

そうクーモが切り出すとそのおじいさんは答えた。

「それはこの入り口を出たらわかることじゃよ。さあ行こう」

その老人に(うなが)されクーモは仕方なくこの図書館の入り口へ向かってゆっくりと歩き出した。

その様子を敬子はただ黙って見つめていた。すると老人に連れ立って歩いていたクーモが突然、振り返り敬子に向かって叫んだ。

「ケイコ、本当にありがとう、ケイコと会えて本当に良かった。生まれ変わってもケイコと出会いたいけどそう言う訳には行かないんだろうね」

その言葉にただ笑顔で答える敬子の瞳からはクーモに対してこみ上げてくる祝福の気持ちや寂しさ、戸惑い等の気持ちだけが後から、後から流れ頬を伝い落ちるばかりだった。

「俺が、いなくても素敵な本を見つけるんだぞ」

その言葉を最後に出口の扉が開き、眩い光がクーモと老人を包み込んだ。二人が扉を通りすぎようとした瞬間、敬子の目に飛び込んできたその光景に敬子は固まった、クーモの背中に手をかけたその老人の手の甲に大きな傷跡があったからだ、その時初めて敬子はあの老人がクーモの助けた弟だと言う事に気が付いた。

一瞬の光が通り過ぎ、敬子は思い(ふけ)っていた。

(そうか、あのクーモが話してくれた弟があの老人だったなんて。本当に驚きの何者でもない、そうしたらリリィを迎えに来ていたあの少女はだれだったんだろう?きっとリリィに縁のある人なんだろう。

そう考えるといったい私の場合は何でウサギなんだろう?ウサギを助けた覚えもないのに?)

そう考えるとその場から動く事が出来ない敬子だった。