shopkit



ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________
どの位歩いたのだろうか、敬子の目に白い建物がよりはっきりと見えてきた。それはギリシャ神殿の様な大きな大理石の柱に大きな屋根が印象的な、まるで外国の裁判所か図書館のような重厚間のある雰囲気の建物だった。




建物





建物の手前まで来ると何十段、いや何百段なのだろうか?とても長く感じられる階段が永遠と繋がっていた。

敬子は意を決し、その長く続く階段を一段一段登っていくが何段登っても疲れが来ない事に不思議な思いを感じ始めた。

(もうどの位登って来たのだろう?)

果てしなく登っていた階段を振り返ると敬子の視界に入って来たそこは、まだ物の数十段しか登っていなかった。おかしな気持ちと不安な気持ちが交差はするが目の前の一段一段を登って行き階段の頂上を目指した。

階段も終わりに近づくと、そこには大きな扉が迎えるかのように口を広げていた。何十メートルなのか?とても大きなその扉はまるでこの中を守るかのように一度閉まったらそれこそ要塞のように二度と開かないのではないかと思わせる位、それは重そうにその口を開けていた。入り口のその扉を見上げているとそこかしこにそれはまるで生きているかのような天使の彫刻やユニコーンと言った空想世界でした知らないような生き物の彫刻がそこかしこに彫られている事に気が付いた。

今にも動き出しそうなその彫刻を口を開け、見とれているとやがて敬子は我を取り戻したかの様に正面を向き・・

「どうしよう?」

「このまま進むか?どうしよう?」

このまま前に進む選択肢しかない事は解るがどうにもその一歩が出ない。もう戻る事なんて考えてもしょうがないこの状況下でも敬子は思い悩んでいた。

ここまで上がって来たものの自分の現在の状況が全て把握出来ないもどかしさが妙に敬子の気持ちを後押しした。同時に早く家族の所へ戻りたい気持ちもこみ上げてきて一呼吸、息を整え足早に大きな扉のその奥を目指した。

その扉を潜るとその先には先ほどではないが見上げるくらいの扉が敬子に前に在れわれその扉の前で首を左右に振り壁沿いに視線を向けるとその先は永遠に続きこの建物の大きさにいちだんと敬子の不安を後押しした。

「何て大きな建物なんだろう」




うさぎ





その扉の左右に敬子は目を向けるとそこには耳を垂らし、年老いた二匹の年老いた牝ウサギが、小さな椅子に腰掛けていた。

「ウサギ?ぬいぐるみかしら?いや、生きているように感じる」

その姿は年老いたウサギと一目で解るかのように白い姿と言うよりも銀褐色の年齢を重ねた重みさえ感じる位の毛の色をし、重みのある雰囲気を出していた。

しかしその姿に何の疑問も湧く事もなく敬子はその扉の向かって右のウサギの顔を覗き込んだ・・

「何だい?」

「しゃべった・・生きてる。」

さすがにうさぎが椅子に座っている姿を見ても不思議とは感じなかったがしゃべり出すと少し違和感を覚えた。しかし敬子はすぐにその右のウサギに尋ねた。

「ここはいったい・・」

ウサギは顔をあけその真っ赤な瞳で敬子を見つめ返した。

短い沈黙の後、そのウサギは答えた。

「あんた、ここが何処かも知らずに来たのかい?」

「ここですか?」

そう敬子が答えると

「珍しいもんだね、久し振りの珍客だ・・」

左のウサギもしゃべり出した。

「ここはね・・」

説明をしようとした右のウサギをかわすかのように左のウサギがしゃべり続けた。

「まあ、ここでは何だから中で説明をしてあげよう・・その方があんたも理解しやすいじゃろ、ここに来たからにはあんたにはまだまだ考える時間が山ほどあるんだから・・」

「そうじゃね」

右のウサギもゆっくりとうなずき席を立った。


shopkit


ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________

どの位、歩いたのか歩いてきた道を振り返っても、建物を見ても全くといっていい程、何故か時間の感覚だけが出て来ない。

敬子は歩く道すがら少しずつどうしてここに来たのかを考え始めた。

「そう、私は病院のベッドで昏睡状態だったはずだ。」

「だけどなぜ?」

半年前、敬子は突然倒れた。

当初は単なる軽い貧血程度に考えていた。

しかし、夫の隆史が必要以上に検査を進めた事と七五三を前に体調不良でもしお宮参りが出来ないなんて事があっては義母に申し訳が立たないと半ば強引に病院に連れて行かれたのであった。



twins
二歳になる双子の我が子、優貴と沙紀は本当に可愛らしく三歳を前にして髪は伸び目鼻立ちも整い隆史も敬子も本当に溺愛した。

敬子の検査の結果は思いの外、早く出た。

隆史は病院に呼び出され担当医より病状の説明を受けた。

くどくどと意味も理解出来ないカタカナを並べられ病状を説明する担当医に結局の所どう言った病気なのかをつめ寄り説明を受けた病状は白血病だった・・

検査の結果後、数日して隆史は敬子に病状をハッキリと伝え二人で話し合い入院をする事にした。隆史も敬子の病状を正確には伝えたがそれは初期の白血病と言った説明をしただけで早期治療を施せば早く完治してしまうといった嘘を付いた。

入院後の敬子は検査を繰り返し治療に専念したがそれもこれも全て早く優貴と沙紀のもとえ一刻も早く帰りたい一身だったからだ。

検査を繰り返していた敬子の病状は日に日に悪くなり一年を過ぎた頃には悪化し続け昏睡状態に落ちるまでにはそう時間はかからなかった。


病室

「敬子、敬子」

ベッドの横で静かに声をかける隆史の声に目を開ける敬子の前には自分の母親に抱かれる優貴と義母に抱かれる沙紀がそして周りには見慣れた家族の顔があった。優貴も沙紀も敬子を見つめ今にも眠そうにしていた。

「どうしたの?」

敬子はそう言ったつもりだったが隆史に答える敬子の声はもつれ聞き取る事さえ難しかった。

敬子は心の中で叫んでいた。

(この子達とまだ別れたくない、まだ生きたい隆史、助けて、助けて・・)

そう願う敬子が眠るようにこの世を去ったのは優貴と沙紀が寝て間もなくしてからであった。


shopkit


ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________

「うっ・・」

視覚に飛び込んできた真っ白な閃光が私の意識をより一層刺激していく。

頭の中に一面の乳白の画面が5秒、10秒と過ぎていくと・・

「ここは何処だろう?」

時間の感覚を取り戻すことに自分の意識が覚醒を促しているかのように思えた。

そして目に入ってくる乳白の世界に目を細めた。

天空

「一面の世界?」

「いったい・・・」

状況把握が出来ない。

「私はいったい何処にいるのだろう。」

先程まで自分が立っていたのか、座っていたのか、そして横になっていたのかさえ解らなかった。いや意識していなかった自分がいた。

「私はずっと立っていたの?・・」

だけどまったくと言って良いほど感じられなかった手足の感覚のまま、ここに何時間いや何日も夢遊病者のように立ち続けていた様にさえ思えるのはなぜだろう?

少しずつではあるがこの一面の世界にだんだんと集中出来る自分がいた。

自分では立っている感覚はないが私は確かに立っている。

「おかしい、先程から私は仁王立ちでしっかりと大地を踏みしめているのになぜかその足元の感覚がない」


自分の足元を見つめてみる。

足元を見ても白く(もや)のような霧のようなはっきりと足元が見えないのはなぜだろう。

「私は何処に立っているんだろう?地に足を付けて立っている感覚がない、しかしなぜ私は自分の足元に対して何の不安も感じないんだろう。」

「歩いてみよう」

突然決断したかのように敬子は一歩、二歩と足を前に出してみるが何の抵抗も感じない。

まるで真っ白なふかふかの絨毯の上を歩いているような滑らかなそして少し浮いたような感覚さえ感じる。

「気持ちいい・・」

歩く感覚がこんなにも軽く滑らかなイメージがあっただろうか。

自分の視線を足元から少し上げてみると何故だか太陽もないのにそこはとても明るく、暖かくて不安よりも心地良ささえ感じてしまう。

敬子が無意識のような感覚で何歩か歩いている白い世界の遠く遥か遠くに少しずつ本当にうっすらと大きな建物の影が見えてきた。

「なんだろう」

敬子の視線の先には遥か遠くの大きな建物という感覚しかない幻影の様なその建物に向けられ、いったいどの位の距離を歩いたらあの建物に着けるのか今の敬子には想像すら出来なかった。

「あの建物にむかってみよう」

それは何かに曳かれるかのようにして無意識に敬子はその建物に向かって歩く事を決断した。