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二匹からの返事はないがもう家族の心配はしなくてもいい・・そんな気持ちが敬子の背中をピンとさせ、先程二匹が説明してくれたこの図書館の意味を改めて思い出した。

「テンとサンがこの中の本を読んで一冊を選ぶんだと言ってたな・・そして選んだ本が私の新しい人生であり神からの使命を言付かると言う事なのかしら」

「まあ、取り敢えずこの数多い本棚を見て回ってみよう」

そう呟き、回りを見回すと改めてこの巨大な図書館の本は一体何冊あるのだろうかと言った不安に顔が引きつり、うっすらと笑いさえこぼれる敬子であった。

「取り敢えず入り口に一番近いそこの本棚に向かってみよう」


本棚の本

どの位の高さだろうか十メートル近い高さに二十メートルはある棚にはびっしりと厚く大きな本もあればとても薄っぺらな小さな本までそれはいろいろな人生があった、一冊として同じ本がないかの様にその本棚には棚いっぱいの本が詰まっていた。

棚の横にはローラーが着いた階段が着いてあり高い所にある本を選ぶ時にはこれを使う事がすぐに理解出来た。

敬子がその階段をズルスルと引き棚の真ん中にもって行き、上段にある一冊の本を見上げ階段を一段一段慎重に登り見つけた本に手をかけた。その本を棚から抜き階段の下りを慎重に下り、その下に腰を落としてその本の表紙を開いてみる。


本

 タイトル等何も書かれていない1ページ目を開き次のページを開くとその文字はイタリア語の様なフランス語の様な敬子には理解出来ない文字で埋め尽くされていた。

「これじゃー読めない、どうしよう・・」

諦め顔でこの文字を何気なく見つめていると・・・何気なく目で追っている箇所の内容が敬子には理解が出来た。

「えっ・・・」

「どうして?」

続いてその理解不明な文字を目で追っていくと敬子にはその内容がやはり理解出来る・・

驚いた敬子は腰掛けた一番近くの本に手を伸ばし棚からもう一冊抜いた。

その本はアラブ系の文字である事は何となく解ったが初めて目に触れるその文字の意味などまったく理解出来なかったがこれもやはり文字を目で追っていると徐々に文字の意味が理解出来た。

敬子は少し首を傾けこう考えた。

(もしかしたらこの棚にある本は地球に住む全ての人間の本なのだろう、ここに選ばれた人間は次の現世では選んだ本によってはロシア人、アメリカ人、中国人等あらゆる国の男女を問わず転生されるのではないか?だからここで本を選ぶ事が出来る者はこの棚にある全ての言語も理解出来てしまうのではないか)

そう敬子は理解して先程選んだ一冊に目を通し始めた。


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「ねえ、サン」

「私の家族はどうなってしまったの?」

サンを見下ろす敬子の顔は家族への想いが十分に理解できるくらいに真剣な表情だった。

その表情を見てサンは瞳を閉じ少しだけうつむき加減に表情を曇らせた。その様子を見ていたテンがいたたまれず代わりに答えた。

「わしらはあんたの死後、現世でその後何が起きたのかは教えられないんじゃよ」

「なぜ?」

「ここへ来る魂はこれから現世に転生される事を目的とされ選ばれた魂じゃから過去の家族や友達と言ったよけいな事を話してしまうとここで聞いた事に後ろ髪を引かれて次の世界に行った時にこちらの世に戻ろうとしてしまうんじゃよ」

「こちらの世って・・」

「そうじゃ、今いるこの場所へ・・」

少し悲しげな表情でサンが敬子の顔を見上げて答えた。

「現世に転生されて使命を受けた人間がこの場所に戻ってこようとしても無理なんじゃよ」

「無理?」

「そう、神様は選ばれた魂だけを現世に転生させ使命を全うさせようとしているのに現世で勝手に使命を放棄してしまう人間を神様はこの世には上げてくださらないんじゃよ」

「自殺ってことですか?」

「そうじゃな」

サンは敬子の瞳に向かって真っ直ぐに答えた。

「それに、あんたがここに来た事だって実際、亡くなってどの位の時が経ってしまったのかさえ考え物じゃよ・・」

「時?」

「そうじゃな、ここに選ばれてくる魂は、よく亡くなってすぐにこの場所へ来たものと勘違いをする者が多いのじゃが実際は早くて何十年、遅いものだと何百年も現世での時間が経過している事がほとんどなんじゃよ」

「何百年ですか・・」

「それでは、私の家族はもうとっくにこちらの世界に来ているかも知れないと言うことですか?」

「そうじゃな、そちらのケースの方が多いと思う」

テンもサンも過去の話になると神との契約のせいかハッキリとした事が言えないらしい、そんな二匹の表情を見て敬子が言葉を発した。

「それではこれで最後にしますからこれだけは教えてください。」

敬子は椅子を立ちテーブルを周りテンとサンの前で(ひざまず)くと潤んだ瞳で二匹の顔を覗き込んで口を開いた。

「私の家族は幸せな人生を送れたんですか?」

テンとサンは赤く大きな瞳を閉じてしばし考えた。ほんの少しの時が流れ瞳をゆっくりと空けると、互いの小さな手と手を重ねテンとサンは互いに瞳を見つめ、意を決した様に敬子に向かって答えた。

「とても幸せでしたよ・・・」

二匹のウサギの赤い瞳にはなぜか溢れんばかりの涙が潤んでいた。

その二匹のウサギの瞳を見つめていた敬子は両手で自分の顔を覆い(むせ)ぶように涙した。瞳からは安堵と幸せの涙が流れ続けた。

 

幾ばくかの時間が経った頃だろうか、気持ちも落ち着き涙の後をかき消すように顔を拭っている敬子が頭を上げ回りを見回すとテンとサンの姿は消えていた。

「テン?サン?」

「何処にいるの?」

二匹からの返事はない。

大きな図書館には敬子の声が響き渡り二匹を探す声だけが響き渡った。敬子はテンとサンが前世の事を自分に教えた事によって何かしら神からの裁きが下ったのではと心配と不安で胸がいっぱいになった。


図書館内


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目の前の扉がゆっくりとまるで魔法の様にゆっくりと大きく両脇に開き始めた。

右のウサギ、そして左のウサギが開いた扉にゆっくりと入って行きその後を敬子は付いて歩いた。まばゆい光が照らしているその中は大きな棚が先が見えない程続いていた。

入り口近くには八脚の椅子に大きなテーブルが置かれていた。それは樫の木で作られているのか重みのある様な暖かく懐かしいテーブルであった。その前にテンとサンがぴょんと跳躍して椅子に腰掛けた。

敬子が二羽の前に立つと右に座っているウサギが敬子を睨み付けて言った。

「そこへお座り」

目の前にある椅子を引きその場に腰を落とし敬子は一つ大きなため息を付いて二羽の顔を見つめた。

「私はテン、隣にいるのがサン、わしらはここの案内人じゃ・・」

「案内人?」

「そうじゃ観光名所などにはよくあるじゃろ、その場所を案内してくれる人が、わしらはここの案内人なんじゃ」

右のウサギが話し始めた。

「いったい・・ここは何処ですか?」

その前にあんたの名前は・・少しムッとした表情でテンが話した。

「アッ、すみません私しは渡辺敬子と言います。」

「何がなんだか解らないのですが突然意識が戻ったらこの建物から遠く離れた地にポツンと立っていたんです。まるで夢遊病者の様に」

「そうかね」

とても優しげな表情でサンが敬子に微笑みかけた。

「ここはな、図書館じゃよ」

テンが答えた。

「図書館?」

そうここはこれから始まる人間の一人一人の人生の話が本になっとるんじゃよ」

テンが大きな棚を見上げそう答えた。



「これから始まる人の人生?」

敬子にはその意味自体は理解できなかったがこれから始まる人生と言われ

「では私はやっぱり・・」

「そうじゃよ・・」

サンがまるで敬子の心を察するように優しくうなずいて答えた。

敬子もうすうす自分がもうこの世にはいないのではないか、違う世界に来てしまったのではないかと言う気には少し前から思っていた。こうしてハッキリと自分が死んでしまった事をこのウサギ達から聞かされてもさほど驚かない自分になおさら死んでしまった事を強く自覚した。

「ではここは天国なのですか?」

「ハハハハッハ・・ハハッハ・・」

二羽は腰を抜かして笑い出した。その声は図書館の隅々まで響き渡るくらいの大声で反響した。

その様子を不思議に見つめる敬子はそのテンとサンの笑い方に徐々に腹が立ち、その表情が険しくなってきた。

「こっちは真剣なんです、何で、何で・・」

その瞳から悔し涙の様な大粒の涙が次から次へとこぼれ落ちその表情をテンとサンが上目づかいに見つめているとテンが申し訳なさそうに言葉をかけた。

「すまないね、そうだね、あんたにはここがどういった所か解らないのだからね・・」

そう言ってテンが話続けた。

「ここはね、さっきも話した通り人の人生を一冊の本にした図書館さ。これから生まれ変わる人間が人生の選択を与えられる所なのだよ、輪廻転生と言う言葉を聞いた事があるだろう、次の人生を一冊の本から選んでその人生通りにおくれるって事さ」

「だけど一冊の本から選んだ人生なんてつまらないのではないのでしょうか?先の解った人生なんて・・」

サンがゆっくりと答えた。

「それはそうだね!けどね、誰もがここに来られる訳ではないんだよ、ここに来られる魂は神に愛され次の世界で大きな使命を持って転生されるんじゃ、だからここで次の人生の一冊を選んだ時からその使途として大きな使命をもって転生されるんじゃよ」

その言葉を聞きテンが敬子に話始めた。

「ここで読んで選んだ事が人生として繰り返されるんじゃが、あんたの記憶は当然転生した時にはこの事は忘れとるんじゃよ、だから神様はそれでも転生された者がりっぱに使命をはたしてくれる魂だけを選ばれるんじゃよ!あんたは余程、神様に気に入られたようじゃ」

「そうだ、神様はこの魂ならと選んだ魂だけ皆よりも早く転生させるんじゃから・・」

サンが優しい微笑を敬子に向け答えた。

「だからわしらはここまで魂となって来た人間達を導く案内人みたいなものさ」

その説明を聞き、敬子は図書館の奥を見つめ直しこの棚にはいったいどの位の本が置かれているか気の遠くなるような気持ちでいっぱいになっていった。

本棚