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建物の手前まで来ると何十段、いや何百段なのだろうか?とても長く感じられる階段が永遠と繋がっていた。
敬子は意を決し、その長く続く階段を一段一段登っていくが何段登っても疲れが来ない事に不思議な思いを感じ始めた。
(もうどの位登って来たのだろう?)
果てしなく登っていた階段を振り返ると敬子の視界に入って来たそこは、まだ物の数十段しか登っていなかった。おかしな気持ちと不安な気持ちが交差はするが目の前の一段一段を登って行き階段の頂上を目指した。
階段も終わりに近づくと、そこには大きな扉が迎えるかのように口を広げていた。何十メートルなのか?とても大きなその扉はまるでこの中を守るかのように一度閉まったらそれこそ要塞のように二度と開かないのではないかと思わせる位、それは重そうにその口を開けていた。入り口のその扉を見上げているとそこかしこにそれはまるで生きているかのような天使の彫刻やユニコーンと言った空想世界でした知らないような生き物の彫刻がそこかしこに彫られている事に気が付いた。
今にも動き出しそうなその彫刻を口を開け、見とれているとやがて敬子は我を取り戻したかの様に正面を向き・・
「どうしよう?」
「このまま進むか?どうしよう?」
このまま前に進む選択肢しかない事は解るがどうにもその一歩が出ない。もう戻る事なんて考えてもしょうがないこの状況下でも敬子は思い悩んでいた。
ここまで上がって来たものの自分の現在の状況が全て把握出来ないもどかしさが妙に敬子の気持ちを後押しした。同時に早く家族の所へ戻りたい気持ちもこみ上げてきて一呼吸、息を整え足早に大きな扉のその奥を目指した。
その扉を潜るとその先には先ほどではないが見上げるくらいの扉が敬子に前に在れわれその扉の前で首を左右に振り壁沿いに視線を向けるとその先は永遠に続きこの建物の大きさにいちだんと敬子の不安を後押しした。
「何て大きな建物なんだろう」
その扉の左右に敬子は目を向けるとそこには耳を垂らし、年老いた二匹の年老いた牝ウサギが、小さな椅子に腰掛けていた。
「ウサギ?ぬいぐるみかしら?いや、生きているように感じる」
その姿は年老いたウサギと一目で解るかのように白い姿と言うよりも銀褐色の年齢を重ねた重みさえ感じる位の毛の色をし、重みのある雰囲気を出していた。
しかしその姿に何の疑問も湧く事もなく敬子はその扉の向かって右のウサギの顔を覗き込んだ・・
「何だい?」
「しゃべった・・生きてる。」
さすがにうさぎが椅子に座っている姿を見ても不思議とは感じなかったがしゃべり出すと少し違和感を覚えた。しかし敬子はすぐにその右のウサギに尋ねた。
「ここはいったい・・」
ウサギは顔をあけその真っ赤な瞳で敬子を見つめ返した。
短い沈黙の後、そのウサギは答えた。
「あんた、ここが何処かも知らずに来たのかい?」
「ここですか?」
そう敬子が答えると
「珍しいもんだね、久し振りの珍客だ・・」
左のウサギもしゃべり出した。
「ここはね・・」
説明をしようとした右のウサギをかわすかのように左のウサギがしゃべり続けた。
「まあ、ここでは何だから中で説明をしてあげよう・・その方があんたも理解しやすいじゃろ、ここに来たからにはあんたにはまだまだ考える時間が山ほどあるんだから・・」
「そうじゃね」
右のウサギもゆっくりとうなずき席を立った。


