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今自分がどういった状況なのかまったく解らない、頭の中で考える事がとても億劫に思える。
体の隅々に響き渡る脱力感がとても心地良く体に染み込んで来る。
とても幸せな感覚だ。
(何だろう?この感覚は?・・・・)
なぜこんな、今までに味わった事のない感覚を体に感じているのだろう・・・
いや違う。
体に感じているんじゃない。
意識で感じているんだ・・。
今、私は何処にいてどうしているのかさえどうでもよい感覚を体と心に感じている様だ。
ああ・・この感覚は随分と昔に感じた事がある。
これは子供の頃、昼寝から目覚める寸前に感じた一瞬の深いまどろみの様な感じに似ている、そして、その余りに心地良い感覚は永遠に続く川を流れる小さな小船に乗っている感覚にさえ思えてくる。
「私はいったい誰なんだろう?」
私は・・私は・・
自分が誰なのかさえどうでもよく感じてしまう。
「私は私じゃないか?」
私って?・・
「私は渡辺・・敬子だ。」
口に出した自分の声で記憶の回線が頭の中で少しずつ繋がって行く。
たしか・私は病院で・・
とても眠くて、徐々に意識が薄れて行った事は覚えている。
でも、それはとても不安であり残念な気持ちでいっぱいの様な、やるせない気持ちの様にも思える。
(私はいったいどうなったんだろう)
途切れた記憶の糸を少しずつ結びつけあの時の事を思い出そうと頭を絞る。
(そう、私は病院のベッドに居たんだ。)
周りには夫、そして双子の可愛い子供達が私のベッドの横で何が起きているのかまったく理解出来ないような屈託のない顔で私の顔を覗き込んでいた表情がつい先程の事のように思い出して来た。
いったい私はどうしたんだろう。
意識は徐々に目覚めて行くものの自分の手足の感覚すら感じ取れない。
「どうしてだろう?」
「私は昏睡状態にでもいるのだろうか?」
でも意識は取り戻し始めている。

