はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、小野不由美さんの「東亰異聞」についてです。古き呪術を捨て去った人間たちが直面するものとは何なのでしょうか。
「東亰異聞」小野不由美(新潮文庫)
維新も終わってからしばらく経った帝都、東亰の町。その夜には、火炎魔人や闇御前などと称される、人々の死を招く化け物たちが徘徊していた。いったい東亰に何が起きているのか、その謎を探るため、新聞記者の平河は調査に出向いた。帝都東亰に、何が起きているのか……。
小野不由美さんといえば、私にとっては「十二国記」が一番に挙がる。だから、小野不由美さんの文体といえば、「十二国記」の、どことなく堅さの感じられる、漢字の多い十二国記を想起していた。
その次に読んだ「屍鬼」は、小野不由美さんのホラーということで身構えていたが、「十二国記」に相通じるようなものもあって、そこまで驚かなかったのだが、「ゴーストハント」には本当に驚いた。多分、作者を知らずに読んだら、誰の作品なのか、見当もつかなかったと思う。
だから、「ゴーストハント」で小野不由美さんの才能の多彩さは、知ったつもりでいた。
そんなことは、全くなかった。この「東亰異聞」は、今まで読んできた小野不由美さんの作品からは、やはり離れている。どちらかといえば、宮部みゆきさんの作品と言われたほうが信じてしまうだろう。小野不由美さんの多彩さを、再確認した次第だ。
進む西洋化によって、じょじょに失われた呪術。えてして迷信と片付けられがちなそれらにも、実は大きな意味があった。これは、私も信じたいことだ。陰陽師などが活躍する物語は、時代がどこであれ、本当に面白い、私の好みである。
そして、東京ではなく東亰、である意味が分かったときは鳥肌が立った。読んだ今になってみれば、張り巡らされた伏線の一部にも気づけるが、巧妙に読者を誘導する手並みには、感服する。ラストシーンには、なんとなく「天気の子」を思い出した。
何を残し、何を捨てるべきか。その見極めを正しくできるようになりたい。
おわりに
ということで、「東亰異聞」についてでした。そろそろ「残穢」「鬼談百景」にも手を出せるかなあ、と思案しているところです。次回は、「ホメーロスのオデュッセイア物語」についてです。
それでは、またお会いしましょう。最後までご覧くださり、ありがとうございました!