はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。ゴーストハント全七巻をあっという間に読み終わってしまって喪失感に支配されています。そんなわけで今回は、「ゴーストハント」シリーズ全七巻を読み終えた感想です。1巻の感想はこちらからどうぞ。
角川文庫化にともない、これから読もうとしている方も(私もその一人でした!)少なくないと思うので、ネタバレは避けたつもりではありますが、ご注意いただければ幸いです。
「ゴーストハント」シリーズ 小野不由美(メディアファクトリー)
とにかく面白かった。あちこちに張り巡らされた伏線を回収し、さらにそれを見事に回収していく手際には、引き込まれずにいられない。特に、主人公麻衣の境遇などは、読者に疑問を抱かせ、それを明かし、そして鮮やかに物語の中の重要な設定としてみせていて、感嘆の一言だった。今回だけでは気づけなかった伏線がまだまだたくさんあると思うので、絶対に読み返したい。最終的には、ますます文庫化が楽しみになったので、よしとしよう。
そして、以後小野さんが発表する様々な作品の要素も見ることができて楽しかった。たとえば、四巻では学校にマスコミが押し寄せてくるところなどは、「魔性の子」を思わせるものがあったし、どの巻だったか忘れてしまったが、道祖神についての記述もあって、それは「屍鬼」に結びつく。だが、私が今まで読んだ小野不由美さんの作品といえば、「十二国記」と「営繕かるかや怪異譚」、それから「屍鬼」だけだ。おそらくこれから小野さんの作品を読んでいく中で、じょじょにこの「ゴーストハント」シリーズの要素が見つけられるのだと思う。そう考えると、本当に楽しみだ。
一方で、私には物珍しかった要素もある。それは、恋愛要素だ。私が読んできた小野不由美さんの作品には、皆無といってよいほどだったので、物珍しかった。それも含めて、荻原規子さんを思い出したのだと思う。
それにしても、このシリーズには本当に引き込まれた。集中しすぎてしまって、自分がどこにいるか分からなくなってしまい、しまいにはときおり顔を上げて自分の居場所を確認しないと、この本の中に引きずり込まれそうだった。まるでこのシリーズ自体が、人々を引き込む霊であるかとすら感じる。麻衣やナルたちの声が、読み終わったあとも頭の中で余韻を残して、どうして自分はこんなに早く彼らとの関係を断つ羽目になってしまったのだと、夢中でページをぺらぺらめくっていた私を呪いたい気分だ。
渋谷の道玄坂を訪ねれば、絶対にバイトの麻衣が出迎えてくれるような気がする。そして、会いたかっただけだと打ち明ければ、冷ややかな目でこちらを見てくるナルがきっと机の向こう側にいるであろうことも。あいにく心霊現象に実際に遭遇したことがないので、大変残念なところであるが、今のところ渋谷サイキックリサーチを訪れる口実は見つからない。何かあったら、頼りにしよう……そんな思いを抱いてしまうほどに、生き生きとした物語だった。
単行本を借りたことを、悔やむかと思ったが、結局は文庫化がより楽しみになった。どれくらいリライトが施されているのか、伏線はどこにあるのか、見比べることも一興だろう。内容が大きく変わっていたらどうしよう、という不安もないわけではないが、1、2巻を文庫で読んだところでは、そんなこともなさそうなので、一安心である。早く手元に、このシリーズを揃えたいと思った。
おわりに
というわけで、小野不由美さんの「ゴーストハント」シリーズについてでした。4巻から巻ごとの感想をさぼってしまってごめんなさい。角川文庫化、楽しみですね!
次回は、「背教者ユリアヌス」の二巻になることと思います。順番が前後してしまい、申し訳ありません。それではまたお会いしましょう。最後までご覧くださり、ありがとうございました!