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マンボウのブログ

フラヌールの視界から、さまざまな事象に遊ぶ

これまで紹介してきた、訳者を並べてみると、右差し

 

 

 ① 「手稿」採用  河合祥一郎(1960- )

 

 ② 「再稿」採用  片山 伸(1884-1928)

 

 ➂ 「改訂版」採用 加島祥造(1923-2015)

 

 

これを見ても、②が古いのが、前回の記事でみた原書の古いのと符合するのだけど。。。うーん

 

 

<閑話休題>

時代も大きく違う三人は、いずれも姓が「か」で始まり、名が「し」で始まっているのだ。

実は、このブログ記事を書いている私もまた、姓が「か」で始まり、名が「し」で始まるわ!

 

イニシャルは、S.K である!びっくり

 

 

 

余談はさておき、他の訳者たちの「アナベル・リー」最終連最後も見ておこう!チョキ

 

 

 *くれなゐ [ 明星 明37.9 ]  鳴海(なるうみ)近きおくつきに

 

 *日夏耿之介(1890-1971)   うみのみぎはのみはかべや    *最終連全文は下記に

 

 *阿部 保(1910-2007)   海ぎわの墓のなか

 

 *福永武彦(1918-1979)   In the tomb by the sounding sea.

                鳴りひびく海のほとり

 

 *尾形敏彦(1921- )    波濤(なみ)のとどろく奥津城に。

 

 *金原瑞人(1954- )    波打ち際の墓の中

 

 *小川高義(1956- )    海の近くの墓の中

 

 

 

   月照るなべ

   﨟たしアナベル・リイ夢路に入り、

   星ひかるなべ

   﨟たしアナベル・リイが明眸俤にたつ

   夜のほどろわだつみの水阿の土封

   うみのみぎはのみはかべや

   こひびと我妹いきの緒の

   そぎへに居臥す身のすゑかも。

                (「E.A.ポー」 集英社文庫ヘリテージシリーズ 2016 : p.21)

 

行が相前後しているように見えるのは、日夏耿之介の創意かな。ニコニコ

 

 

対訳であれば、どの原典を使用しているのかは分るのだけど(少なくとも、原文は判る)、解説も含めて原典の記載がない場合は、類推するしか手はなさそうだ(詩の翻訳時にも拠って立つ原典は示しておく必要があろう・・・特に「アナベル・リー」のように3つの稿・版がある場合は必須かも)。うーん

 

 

第二連の I と She の順はさて措くとして、最終連を見ると、この中で、阿部保訳と小川高義訳は、明らかに ➂(改訂版: side )である。福永武彦訳と今回初出になる尾形敏彦訳は ① であり、もしかして、くれなゐ、金原瑞人も。あとはおそらく ➂(もしくは ②)であろう。

 

金原瑞人訳の「波打ち際」という訳語は、いささか迷うけど、やはり、波打つという音のイメージが感じられるので、① になろうか。

 

なので、これまで見てきた日本語訳の中で、手稿 ① を原典としているのは、福永武彦と河合祥一郎、尾形敏彦(もしくは、くれなゐと金原瑞人)ということになりそうだ。グラサン

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・65

ということで、こうなったら毒食わば皿までか?と、ポーによる原文に手当たり次第(徹底的ではない!)に当たってみるしかないか、と思い、手配できる原書を参照してみた!チョキ

 

 

いくつかの出版社から刊行されているポーの詩集を見ながら、前回と前々回に区分けした①~➂までのどれに当てはまるのかを並べてみることにした。

 

 

 ① ポーの手稿によるもの

 

 本「The Conplete Tales and Poems of EDGAR ALLAN POE」(PENGUIN BOOKS 1982)Random House. Inc. New York 1938

 

 本「Great tales and Poems of EDGAR ALLAN POE」(Pocket Books, INC. New York 1952 ) 

 

 

 

 

 ② 中間稿

 

 本「The Poems of EDGAR・ ALLAN・ POE」(George Bell & Sons : London / The Macmiln c. 1900)

 

 本「Poe's Poems and Essays」(Dent : London / Dutton : New York 1927)

 

 

 

 

 ➂ 改訂稿

 

 本「The Complete poems and stories of Edgar Allan Poe」(Alfred A Knopf : New York 1958)first ed, 1946

 

 本「The Poems of EDGAR ALLAN POE」(The University Press of Virginia : Charlottesville 1965)

 

 

 

いやはや、何ともまあ・・・キレイに分かれてしまったのう。てへぺろ

 

いろんな出版社から刊行されているポー詩集も、その元を辿れば、コレという決定稿が見当たらないということだろうか?うーん

 

 

ただ、気になるのは、河合祥一郎が述べている①と③はよい(出自がはっきりしている)としても、②の存在が不気味な気がするわ(①と③に較べて出版年代が圧倒的に古いのが気になる)!ガーン

 

 

ちなみに、ネットで見ても、①が出てくるなあ。

 

https://www.poetryfoundation.org/poems/44885/annabel-lee

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・64

もう一つの版と思われるのが、なんと国立国会図書館デジタル・コレクションで公開されているこの本である。チョキ

 

 

  本片山伸「近代英詩評釋」(有朋堂 1909)

 

この古い本はなかなか所蔵している図書館が見つからず、暗礁に乗り上げたかと思いきや、デジコレで公開されていたので、早速見てみた。これも対訳となっている。

 

 

 (第二連冒頭) I was a child and she was child, 片山訳:われも幼な児 妹(いも)もまた

 (最終連最後) In her tomb by the side of the sea

 

 

ここで、片山訳による最終連を引用しておこう。右差し

 

  まことや月の照る夜毎

  はしきわぎもこを夢に見つ、

  星きらめけばわぎもこの

  星瞼(まなざし)tこそつねに見れ、

  さればよわれは夜もすがら

  海のほとりの墓ばなる、海のほとりの墓ばなる

  わがいとほしのいとほしのわが命なるにひ妻の

  かたへにこそは明かすなれ。

 

 

何ともまあ、古風な文語調の訳だわ。えー

 

 

片山伸による前書きには、こう記されている。

 

「アンナベル・リー」

 Poe の作中 "The Raven" は最も傑れ、有名なる Dante Gabriel Rossetti が "The Blessed Dametel" は實にこの "The Raven" を愛誦せるの餘に成れりといふ。(デジコレ:コマ58)

 

 

 

ということで、3つの稿・版があることに・・・びっくり

 

 

 ① I was a child and she was a child.  (第二連冒頭)

   In her tomb by the sounding sea.  (最終連最後)

 

 ② I was a child and she was  a child.  (第二連冒頭)

   In her tomb by the side of the sea.  (最終連最後)

 

 ➂ She was a child and I was a child.   (第二連冒頭)

   In her tomb by the side of the sea.  (最終連最後)

 

 

つまり、河合祥一郎訳で述べられたポーの手稿が①で、改訂されたものが➂であり、その間に②が存在することになる。

 

①と②では、第二連冒頭は I とshe の順であり、➂の改訂で She とI の順になる。

最終連最後では、①のみ sounding で、②と➂では、side となっているのだ。

 

はてさて。。。うーん

 

どうしたものだろうか?グラサン

 

 

    (次回に続く)

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・63