慢性脳血流不全と認知症 | 老年科医の独り言

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認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

白川久志 薬学研究科准教授、宮之原遵 同博士課程学生、金子周司 同教授らの研究グループにより、脳の慢性血流不全の影響が、解明されたようです。

脳の慢性血流不全から、脳内の免疫細胞であるミクログリアが脳内炎症を引き起こすということが、「journal of Neuroscience」掲載されたています。

 

慢性の血流不全から生じる酸素や栄養供給低下が、認知症の発症・病態増悪因子の補遺とつであることは、昔から指摘されていました。しかしその詳細なメカニズムは、良く判っていませんでした。

本研究グループがマウスを用いて、慢性的にかつ軽度に脳血流量を低下させた病態モデルを作成し詳しく調べたところ、以下のことが判りました。

脳の血流低下が、脳の免疫細胞であるミクログリアの活性化や、中枢神経系の過剰な炎症(脳内炎症)、神経軸索と瑞祥が密集している白質部分の障害が観察され、認知機能の低下が起こっていることが、わかりました。

この変化は、MRIで確認できる白質病変に相当すると考えられます。このはき白質病変は60歳代でも見られる方がおり、最近認知機能の低下を引き起こす変化として注目されている変化です。

この血流不全からマクログリアの活性化も、酸化ストレスが関与しているようです。

 

酸化ストレスにより神経細胞の変化は、ミエリンの障害やタウの蓄積による神経原繊維変化などが知られています。

神経原繊維変化は、様々な脳の疾患でみられる変化です。アルツハイマーでも認知症を起こす原因は、βアミロイドの蓄積ではなく神経原繊維変化だと最近言われてきています。

比較的高齢者でみられる嗜銀顆粒性認知症は、この神経原繊維変化を主体としβアミロイドの蓄積が乏しい認知症です。前頭葉の障害を伴いやすいと言われており、私は高齢者の前頭側頭型認知症の原因ではないかと考えています。

 神経原繊維変化(タウ蓄積)を引き起こす強い酸化ストレスは、レビーでは起こりやすいと考えられます。原因として自律神経障害により迷走神経優位と成り易い事が挙げられます。、迷走神経反射や起立性低血圧で脳血流が著しく低下する事から理解できると言えるでしょう。

 

 

慢性の脳の血流不全から認知症が起こる原因が、少しづつ明らかにされており、私は認知症の主体が、この脳血流不全→酸化ストレスから起こる脳血管性認知症と最近考えています。

九州の久山町研究による剖検データでも、脳血管性認知症が50%近くとなっているのも当たり前と言えるでしょう。