レビー小体型認知症の症状の動揺について考えてみたい。
高齢のレビーの場合、動脈硬化が進行している。
それに加え自律神経障害が進行していくことで、脳の血流不全が起きやすい。
これが症状の動揺に関与していると思われる。
私は、内陸性気候である山梨と八王子周辺で仕事をしてきた。
一日の温度差が、15度前後になることが珍しくない地域である。
一日の温度差が15度近くになると、脳幹部を中心に一過性の虚血による巣症状を認める事が良くあった。
動脈硬化に迷走神経反射が加わって、血行動態的に血流が停止して脳梗塞と同様の症状を認めるのである。
このような強い血流不全の後、増大した酸化ストレスでさまざまな脳の機能障害が起きると考えられる。
脳幹部の場合、アセチルコリン作動性のマイネルト基底核から繊維群が機能不全を起こし、意識レベルの低下や
頭頂葉の機能障害を起こす。
中脳には、重要なドパミン作動性繊維群がある。
①黒質線条体系の機能不全により、パーキンソン病がおこる。
②中脳辺縁系のドパミンが乏しくなると、大脳辺縁系の異常な活動亢進が起こるようである。
覚せい剤中毒で覚せい剤によるドパミン供給がなくなると、幻覚・妄想が活発ぬなったり過激な行動を取るのと
同様のメカニズムだと思われる。
③中脳皮質系の障害により前頭葉の機能障害がおこる。
前頭葉の機能障害によりいわゆる前頭葉症状を呈すると考えられる。
せん妄は、脳幹部の機能障害により誘発されていると考えている。せん妄は、前頭葉症状による興奮・易怒・妄想などとマイネルト基底核の障害による意識の混濁が混合して起こると考えている。
ドパミンの働きが低下すると、相対的にセロトニン過剰になり、これがこだわりを深め執拗差な行動の原因となっている。
前頭葉も血流不全により機能障害を起こしやすい領域である。
前頭葉症状やフロンタルパーキンンソニズムを起こす。後者は進行性核上性7麻痺(PSP)様の症状を呈する。
血流不全に伴う酸化ストレスが、レビーの症状の動揺の大きな要因だと思う。
PSP様のパーキンソニズムの進行により体が硬直し嚥下障害が起こってくるケースも少なくない。これまで家族に胃瘻増設の可否を決めてもらうようお話ししたケースで、ほぼ自立に近いレベルまで拡幅したケースが稀ではないが、酸化ストレスと脳の機能不全が大きな要因だと考えると、このような変化が起こっても不思議ではない。
河野先生によると高齢者のPSPに、グルタチオン多量投与が効果があるという。これは、レビーの脳の障害、酸化ストレスによる可逆的な変化と考えると、当たり前と考えられる。
このような酸化ストレスによる脳のダメージは、パーキンソン病でも起こりうる現象である。パーキンソン病でも自律神経障害は起こる。動脈硬化が進行した高齢者の場合、レビーと同様血流不全による酸化ストレスの影響で、脳内の広い範囲に影響が出てくる。このためレビーと同様の症状がみられても当たり前である。
これらをまとめると、レビーの症状の多くは、脳血管性認知症(=多発性脳梗塞)のためでと言える。
対策は、酸化ストレスの軽減と血流安定化である。
前者は、グルタチオンの投与やフェルラ酸の摂取である。なおフェルラ酸は、自律神経障害も抑制してくれると考えられる。
後者は、プレタールやプラビックスの内服である。
プレタールは、頻脈になる副作用があるが、これはイソプロテレノールの賦活によると思われる。
もしそうだとすると、プレタールは、タウタンパク蓄積を抑制してくれると考えられる。この点がプレタールの優位だと私は考えている
ここで話は変わるが、悪性レビーと呼んでいる進行が異常に速いケースがいる。
悪性レビーは、タウタンパクの蓄積が急速に起こっていると考えられている。このタウの蓄積は、酸化ストレスの影響であると考えている。
その証左として3例の悪性レビーにグルタチオン7多量投与を行った経験がある。3例ともグルタチオンに反応し投与後速やかに改善が認められた。しかし効果の持続が非常に短いのである。パーキンソン病やレビーにグルタチオンを多量に投与した場、効果は数日以上続くのがふつうである。しかるにこの3例では、効果が時間の単位でしか認められないのである。2例は30~60分しか効果がなかった。
経過とともにグルタチオンに反応しなく成って行った。タウの蓄積が進行したためと考えている。