レビー小体型認証 再考~その1 | 老年科医の独り言

老年科医の独り言

認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

レビー小体型認知症の診断基準が、昨年改訂された。

その基準について、まず考察して診たい。

 

大前提:認知症であること

  実は、これが一番難しいかもしれない。HDS-Rで高得点を摂るケースも少なくない。

 うつ病や妄想などの精神症状が主体のケースが少なくない。

 この点に関しては、精神科医に以下のような診断を受けていれば、レビーを考えている。

  #うつ病

  #双極性障害(前頭側頭型の場合も多い)
  #老年期精神病

  #妄想型・・・

  #統合失調症

    etc

以下レビーの診断基準について考察

中核的な兆候(以下の4項目)

#1 動揺性の認知機能:症状の変動がめだつ(パーキンソニズムも変動する)

#2 繰り替えし起こる幻視

#3 REM睡眠障害:認知期のの低下に先行して起こることが多い。

#4 パーキンソニズム

 

レビーを示唆する徴候のうち私が重要視しているものを上げる

指示的特徴

# 抗精神病薬に対する過小な反応(薬剤過敏性):抗精神病薬以外でも脳に作用する薬剤に過剰に反応する

# 意識喪失発作

# 自律神経障害:交感神経と腰仙椎レベルの副交感神経が障害される。交換神経の働きが低下するため

   迷走神経(脳神経・副交感神経) の働きが亢進する

#前記のうつや妄想などの精神症状

 

示唆するバイオマーカー(検査)

他に3項目ある

#MIBG心筋シンチ:心臓に分布する交感神経末端の障害を確認する。

 

診断:

Probable DLB (臨床的な確定と言っても良いと思う)

a)中核的な兆候が2項目ある

B)中核的な兆候1項目とバイオマーカーが一つ以上ある

 

PoosibleDLB (臨床的にDLBと強く考えられる)

a)中核症状が一項目
b)示唆するバイオマーカーが一つ以上ある
 
指示的な特徴の取り扱いは、不明
ただしバイオマーカーのみで診断しない
パーキンソン病がある場合、除外規定がある
 
以上K-Labの2017診断基準の解説を参考
 
私が重要視している項目

私が一番重要視しているのは、自律神経障害である。

これは指示的項目であるが、MIBG心筋シンチで客観的に確認できるので、バイオマーカーと考えても良いであろう。
#迷走神経過緊張と腰仙椎の副交感神経の障害
#交感神経の障害
によってさまざまな症状が生じる
一番確認が容易なのは、
#1
迷走神経の過緊張で起こる腸雑音の異常な亢進
腰仙椎の副交感神経の障害によりおこる頑固な便秘
腸雑音の異常な亢進は、蠕動運動の亢進を意味するが、通常は感染性胃腸炎など下痢を伴う疾患で良く見られる。
しかるにレビーの場合、頑固な便秘が起こる。
これは、簡単な問診と腹部の聴診で容易に診断できる。
誰でも簡単に確認できるのである。
#迷走神経の亢進
・このため、血圧低下(降圧剤が不要になるケースも少なくない)や起立性低血圧などの循環障害・徐脈・下痢・胃酸分泌過多(逆流性食道炎や上部消化管出血等の原因)
・迷走神経反射による意識消失発作
・夜間の異常な発汗など
#腰仙椎の副交感神経の障害
 ・直腸膀胱傷害による尿失禁・便失禁(S状結腸~直腸膨大部で便が停滞する事で起こる感覚を便意と間違わないこと)
 ・さらに進行すると神経因性膀胱となり排尿障害のためバルーンカテーテルの留置が必要となる
 
私は、この自律神経障害の有無を一番重要視している。
理由は、高頻度で起こること(MIBG心筋シンチでは80~90%で交感神経の障害の存在が確認できると言われている)
確認が容易なこと(直腸膀胱障害は、認知期の低下・ADLの低下の進行が軽度なうちから「おむつが必要」
があげられる・。
次回以降レビーの主要な症状について考えていきたい。