脳血管性認知症再考~治療戦略について | 老年科医の独り言

老年科医の独り言

認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

私の考える脳の血流不全から起こる酸化ストレスが、認知症の進行に大きく関わっている事は、間違いないと思う。

動脈硬化の影響が出てくる75歳以上の高齢者は、これから逃げられないのである。

動脈硬化が起こる前から、予防することが大事だと思う。

私は、70歳以下の方に起こる認知症と80歳以上の方に起こる認知症は、全く別の病気だと考えている。

80歳以上は、すべて脳血管性認知症と考えても大きな間違いではないと思っている。

こいう考えると、高齢者の認知症治療の基本戦略が容易に導き出される。

 

1、脳血流の安定化

 

 a.プレタールなどの抗凝固療法によるの脳血流の安定化

 

   動脈硬化が起きた場合、血管壁に血栓が出来、それがさらに血流障害を起こしているので、抗血小板療法は重要だと思う。

   プレタール以外にもプラビックスやケタスなどでも改善しているケースがいる。

   この中で、プレタールがお勧めである。プレタールは、頻脈という嫌な副作用があるが、この副作用を起こす原因を考えると、

   プレタールは、タウの蓄積を抑制してくれるのでは?と思われるからである。

    なおバイアスピリンなどのアスピリン製剤は、この効果は期待できないようである。しかも副交感神経が過緊張しやすいケースでは、

    上部消化管出血のリスクが有るので、使用を避けるべきだろう。アリセプトの使用では、副交感神経刺激作用で巨大な

    アリセプト潰瘍 と呼ばれる胃潰瘍を発生させ出血を起こすことが珍しくないようである。

   サプリメントのプロル・ベインも血流安定化が期待できるので、余裕があれば使用したほうが良いと考えている。プロルベインは、

   出来た血栓を溶解させる作用があるようである。

 

b、自律神経障害の是正

 

  高齢になると、交感神経の働きが低下し副交感神経優位になると言われている。レビーは、交感神経と腰部の副交感神経の障害を

  起こし、迷走神経(副交感神経の主要な物)の働きが亢進している。これを少しでも是正する必要がある。

  交感神経の働きを高めるには、適度な運動が良いとされている。

  副交感神経の働きを亢進させる薬剤の仕様は、出来るだけ避けた方が良いと私は考えている。

  副交感神経の働きを高める可能性がある薬剤の筆頭は、コリンエステラーゼ阻害薬である。

  抗認知症薬のアリセプト・リバスタッチテープ/イクセロンパッチ・ レミニールが、コリンエステラーゼ阻害薬の代表である。

  特にアリセプトは、副交感神経刺激作用が強いと言われている。

  

  後は、アセチルコリンの前駆物質であるシチコリンである。コリンエステラーゼ阻害薬ほど悪影響は起こりにくいと思われるが、

  私はシチコリンの使用を辞めている。30年近く愛用してきた薬剤であるが、過剰投与で悪影響が出て来るリスクが高いので

  使用を辞めている。せん妄の原因として脳幹部の血流不全が挙げられるが、このせん妄の治療にシチコリンを使用していた。

  繰り返し投与で、副交感神経を刺激して、脳の血流不全を引き起こしていたと今は考えている。

 

  レビーの自律神経障害に対してフェルガードが有効な可能性がある。1日の気温差が15℃前後になると、血流不全から脳梗塞様の

  症状を呈することが有る。これが、フェルガードの使用で激減したのである。

 

 c、過度の降圧

  最後に血圧の下げすぎも大きな問題である。数年以上前から高血圧学会は、高齢者の血圧を130以下にしない方が良い

  勧告していた。

  最近老年医学会は、降圧剤を使用して150以下にしない方が良いというガイドラインを出している。

  海外のデータで、90歳以上の集団で血圧が高いグループと低いグループを比較すると、低いグループの方が認知機能の低下が

  強いという事であった。

 

2,抗酸化療法

 

  抗酸化作用を持つ物質は、たくさんある。私自身、物質が有る酸化ストレス改善効果により認知機能の改善を確認しているのは、

  二つの物質が有る。

  一つはフェルラ酸である。フェルラ酸などのポリフェノールは、消化管からの吸収の問題と血液内での安定性が問題になるようである。

  グロービア社では、この問題を包接化することで解決していると主張している(その割に20%しか包接体にしていないのは、如何か)

  もう一つは、グルタチオンである。注射以外に経口摂取で有効なサプリメントも有るようである。 どちらにしても、過剰な抗酸化療法は

  有害という報告も有るので、その点も頭に入ておいたほうが良いであろう。

 

この二つの治療戦略は、高齢者の認知症治療では、必須の考え方と思う。

私は、抗認知症薬は安易に使用すべき薬剤ではないと認識している。自分から処方することは多くはない。

逆に抗認知症薬の副作用を感じたら、減量・休薬に躊躇しない。

ただし、抗認知症薬の効果がある場合もあり、カット&トライで慎重に減量していく必要があるが・・・。

減量して問題があれば、減量前に戻せばすぐ回復するようである。

 

作用は良く判らないが。、フェルラ酸とアシュワガンダ(以前フェルガードAとして発売されていた)が、前頭葉の機能改善効果が高かった。

認知症の主体は、前頭葉の機能障害と考えている私は、フェルガードF+アシュワガンダもお勧めである。

 

認知症に対するアプローチとして、

血流安定化

酸化ストレスの軽減

が重要だと私は考えている。