砂利敷きの駐車場に
白い軽ワゴンを停めて、
僕と繭子ちゃんは、
河原に降りて行ったんだ。

初夏の夕日は落ちかけていて、
一面藍色っぽくなって、
川面は濃い赤色を反射していた。

虫の音が聞こえてる。
セミが羽を震わせる音が、
遠く、かよわそうに鳴っていた。

まあ、とにかくいい雰囲気、
気分は高揚する感じだけど、
それを抑えるような、
涼しい風と、
落ち着いた空気感だった。

「いっぱい買っちゃったね、」
車の後部座席には、
さっきの直販店で買った
せんべいの袋がいっぱいになっていた。
「全部食べるの?」
俺が言うと、
彼女はくすくす笑って、
「そんな食いしん坊じゃないよ~、
みんなにあげるんでしょお」
「そりゃそうだよね、」
職場のみんなだろうか、
誰にあげるんだろう、
そんなこと考えながらも、
俺は、
「でも、美味しかったね、
ああいうの、作ってみたい」
彼女は少しだけ黙って、
2人で並んで川の方見ていたけど、
「やっぱり、おせんべい作るの?」
「どうだろう…、」
俺はここで、
そうだ、作るんだよ、
そう、強くは言わなかった。

ここが俺の限界なんだよね、
だめなら、
諦めなきゃって気持ちで、
いっつもやってるからね、
要はなにかあれば
逃げちゃうこともあるかなと。

そのへんが、俺の限界なんだよね。

(僕はそれを聞いていて、
自分のことを少し重ねるのです。
そう、小説についてです。
僕はこの当時から、
今にいたっても、
もしダメだったら、
真っ当に社会で生きていくために、
延々とサラリーマンを
続けている気もしました)


「実家、どんな感じだったの?」
繭子ちゃんは、
少し体を寄せてきた、、、
そんな気がしただけかも。
「実家って?」
「ほら、鯉川くんとこも
おせんべい工場だったんでしょ、
だから、どんな感じだったのかなって」
「ああ…」
夕陽が落ちていくのを眺めながら、
なんともいい気分になりながら、
俺は首を横に振ったんだ、
そ、会話に集中しなくちゃ、
それで、
「ほんと古い感じのとこだったよ、
かったいさ、どこにでもある、
ただのせんべい…」
それ言葉にしてたら、
なんだか工場の中に漂っていた、
あのしょうゆの
芳しい香りが
鼻についた気がしたよ、
俺、ちょっと顔をうつむけて、
「でも、美味しかったかな、
虫歯になってから、
食べなくなったけど、
虫歯治って食べたら、
やっぱ、美味しかったな」
「なにそれ~、」
繭子ちゃんは、
またくすくす笑いながら、
満面の笑みを俺に向けていた。
その顔は、
夕陽を背にして暗く見えたけど、
白い肌に
うっすらと引かれたような、
薄紫色に見えるラインに縁取られていて、
見惚れていた、というか、
目を離せずにいたんだ。

 

プロジェクト388日目。

――――――――――――――――――――――――――――
<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/1 388日目</strong></span>
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■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

繭子ちゃんと直販のせんべい工場に
向かってるってとこからだね。

それは朝霞の県道沿い、
ケヤキ並木が続く途中にあった。
ケヤキは葉が生い茂っていて、
濃い影が作られた
広々とした駐車場、
そこに車を停めた。

背丈よりも高い塀がずっと続いていて、
その奥が工場のようだった。
僕らはそこに併設されて、
道路に面している店舗の方の向かった。

手を繋げそうな距離を、
彼女が歩いていて、
さっきのドライブって話もあったから、
俺はずっと、
そわそわしていたかもしれない、
そりゃそうだよね、
ドライブしたいって言われたら、
脈ありって思うじゃん。

せんべい屋は、古い日本家屋みたいな構えで、
店内はかなり広々としていた。

そこに本当にせんべいばっかり、
ワゴンとか棚に積まれて売られているわけ。

趣向があるなって思ったのは、
入り口で銀の浅い皿をとって、
中でせんべいを取り放題なんだよね、
試食用にほとんどの種類のせんべいが
手に取れるようになってるんだ。

で、奥の方には、
お茶なんかがあって、
畳敷きの椅子もあって、
そこでいろいろ食べ比べしてねって
なってるんだよ。

なんか、俺が妄想してた、
いろんな味のせんべいがあって、
とにかく美味しい、
もち米がいいのか、
レパートリーの多いせいか、
はちみつ味とか、とにかく美味かったなあ。


(僕とサトちゃんはその話を聞いていて、
なんだか、本当にせんべいが
食べたくなりました。
思えば、一年のうち、
何回せんべいを口にするんでしょう、
そもそも自発的に買うことはないし、
ほとんどの場合、
出されたから口にするくらいでしたが、、)

「美味しいね、これ」
繭子ちゃんと並んで、お茶をもらいながら、
さっそく試食してみたんだ。
彼女は小分けにしたせんべいを口にしながら、
関心したようにそう言ってた。

俺は、そんな彼女に見惚れていた。
もう、こりゃ絶対に恋だな、
それにしても、
彼女はこんな休日に、
旦那さんおいて、
俺と出かけていていいんだろうかって、
そんな考えも頭をよぎったんだ。


それから、
せんべい屋をあとにすると、
俺たちは帰り道についたんだ。
また、あの河原を通るんだけど、
ちょうど夕暮れどきだった。

「ねえ、ちょっと寄り道してこうよ、」
そう、繭子ちゃんは口にした。

 

プロジェクト387日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/31 387日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

彼女に土曜日に誘われたのは、
たぶん、、、仕事のこと、
おそらく、、、
社長のいる前で、
あんまり気にするでもなく言っていたから、
やっぱり、
楽しい話じゃないんだろうと思ったよ。

その休日、
俺はいつもの出勤時間より
1時間ほど遅く
工場に行ったんだ。
事務所に入ると、
繭子ちゃんだけがいた。

彼女は、
いつもと変わらぬ普段着だったけど、
心なしか、化粧が、濃い感じもした。
朝だったから、
そう見えたのかもしれないけど。

「おはよ~、」
艶っぽい声に聞こえた。
事務室は天井も低く狭いから、
彼女の声がよく響いていたんだ。

俺、この後におよんで、
また照れちゃって、
あんまりちゃんと挨拶も出来なかった。

「今日ね、
実は一緒に出かけないかなって思って」
前の日にも軽く言われていて、
東京郊外から埼玉に抜けて、
工場直販でやっているせんべい屋さんに
視察しに行こうってことだったんだ。

朝霞の方だったかな、
結構話題になってる
直販のせんべい屋さんがあるんだけど。

工場の社用車、
白い軽ワゴンを俺が運転して、
彼女を助手席に乗せて、
なんか休日ドライブみたいな感じだった。

初夏の快晴の日、
彼女に道を教えてもらいながら、
車を走らせてた。
途中、荒川を越えるところがあるんだけど、
広い河原が続いているとこ、
橋で渡っていくんだ。
空は澄み切っていて、
視界は広々として、
ほんといい気分だった。

「なんか運転慣れてるね、」
窓を少し開けていた。
彼女は肩までの髪を風に吹かせながら、
外の方見たまま言ったんだ。
俺は、
「けっこう運転してるからね」
「車持ってるの?」
「うん…、スープラ」
「へ~、すご~い、」
と言いながらも、
繭子ちゃんは、
そんなに車に興味はなさそうだった。
「それ、すごい車なの?」
「う~ん、スポーツカーみたいな」
「へ~、すごいね、走り屋」
「いやいやいや」
俺はハンドルを握りながら、
大げさに首を振って、
「そんなんじゃないんだ、俺、
1人で走ってるだけだから、」
「乗ってみたいなあ、そういう車」
そういわれて、俺はふと、
髪をなびかせている彼女の
横顔を見たんだ。
白いふっくらとした頬が、
目の裏に
にじむみたいに残っていた。

俺、ちょっと、怖気づきながら、
「そ、それってドライブってことかな?」
と口にしてみた。
もうそれだけで、
喉がからからに乾いて、
声の奥が震えていた。

しばらく彼女から
返事はなかった。
車はぐんぐん進んでいく。
橋を越えて、
ケヤキ並木みたいな通りに出た。

あんまりにも返しがないから、
俺、また彼女の方、
そっと見たら、
そしたら繭子ちゃん、
「そうだね、ドライブ行きたいなあ、
山がいいかな、海かなあ」
そう口にしたんだ。

 

プロジェクト386日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/30 386日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

繭子ちゃんを
意識しないことなんてできなかった。
でもやっぱ、
俺ついてないなあって、
思ってたんだよね、
よりによって既婚者だしね、

(読者の方も、
そろそろ気づいているとおもいますが、
これはコイちゃんの恋愛が
成就した話です。
いったいどうやって収まっていくのか、
僕もサトちゃんも、
だいぶ酒は進んでいましたが、
神妙に話に聞き入っています)


それにせんべい工場で、
このまま働いていたら、
俺、どうなっていくんだろう、
彼女とうまくいったとして、
この工場に婿入りして、

それもそれでありかなあ…、

(コイちゃんは口ひげをたくわえた、
アンバランスな顔をにんまりさせて、)

実家を再起させるとかなくてもね、
母親もそれはそれで
喜んでくれるかな、

そんな妄想してみたよ、
だけど、
彼女は人妻、、
かもしれないし、、、
それでそんな空想も
かき消されるって感じだった。

ところが、
ところがだよ!

(コイちゃんは前のめりになって、
唾を飛ばしています。
僕とサトちゃんは
唾には閉口して、
思わず体を後ろに引きました)

誘われたんだよ、
繭子ちゃんにね、

事務所で、
社長もいた時なんだけど、
彼女は座ってパソコンに向かってた
俺に近づいてくると、
「鯉川さん、明日って、
ここ来れたりします?」
明日は、土曜日だったから、
普通にいけば休日だったんだ。

デート?
いやでも、、
俺は盗み見るみたいに、
社長の方をちらっと見た。
社長は、眼鏡をはずして、
帳簿みたいなものに見入っていて、
全然こっちを
気にしているふうじゃなかった。

 

プロジェクト385日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/29 385日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

せんべい工場に勤め始めて、
もう半年くらい経った頃だったかな、

仕事は大分慣れてきていたんだ。
弁当んとき
(一緒にやっていた

弁当製造工場のことです)
とは比べものになんないくらい、
やる気もあったからね、
一連の作業は覚えてって、
ラインも大体まわせるようになってたよ。

ここの工場には、
従業員は15人くらい、
ほとんどが近所のパートのおばちゃんね、
そんな中で、俺がいたわけだから、
気づいたら、
いろんな仕切りを任されるようになってたよ。

それで、徐々に、
材料の仕入れとかね、
そういうのも、
社長に教えてもらうようになったんだ。
それで自然に事務室に出入りするから、
繭子ちゃんともね、
なんか接触する機会も増えてった感じ。

俺さ、

今までほとんど

女友達とかもなかったから、
彼女と打ち解けると、
話しやすいし、
なんか楽しくなってたんだよね。

でも、薬指に指輪してるじゃない、
旦那さんは会社勤めとかして、
彼女は実家の手伝いで

たまにここに来てるとか、
そんなことだと思ってた。

だから、やっぱりさ、
俺がちょっと恋みたいな感情抱いちゃうと、
少し苦しかったなあ、
それでね、

ある程度工場の流れ覚えたら、
別のとこ行ってもいいし、
あんまり長くいるのはよくないなってね。

ある日社長と2人で、
来月の仕入れとか、経理の話を、
事務所でしてたら、
おっさん急に、
「こんなに熱心に仕事する若い子なんて、
今までいなかったから、
とにかく助かってるよ」
みたいなこと言ったんだ。
俺は、
「そうですかね」
社長には、
もうウチの工場は

とっくに潰れたことは話してた。
「前は手伝ったりしてたの?」
俺は首を横に振って、
「いえ、もう大人になった時は

無くなってたんで、
それに、ただ工場ん中

走り回ってたりしてただけです。
でも、手伝ったりも

できたかもしれないですね、
だけどそれ、俺しなくて、
別んとこで働いてたりしたんで」
「そうかあ、やっぱやりたいんだな」
社長は禿上がった頭を片手で撫でながら、
「なんならうち、どうだ?
これからも維持していきたいしな、
安定しないから、
ずいぶんパートさんだけでやってたけど、
そろそろちゃんと、

正規で社員とりたいって考えててね」
それで俺、

一瞬無言だった。
頭に浮かんできたのは、
繭子ちゃんのことだった。
社長は俺がなんにも言わないから、
「いやいや、無理にとは言わんよ、
やれたらなって思っただけだからな、
こんなちっちゃな工場に
就職しても仕方ないしなあ」
俺はあわてて、手を振ると、
「いえ!そんなつもりじゃないんです。
そう思ってくれただけ、すっごく光栄です。
その…、でも、そういうの
考えてたわけじゃないんで、
急だったから、ちょっと驚いちゃって」
社長は、俺の一挙手一投足を
見逃さないといわんばかりに、
じぃっとこっち見つめてから、
「じゃ、まんざら、
考えんでもないってところかな?」
「まあ、少しは、その…」

俺、その時は、
それ以上のこと、

社長に言わなかった。
なんていうか、
そもそも自分の実家を
再起させようって考えてるわけじゃん、
ここで、この場に居座ったら、
一体どうなるんだろう、て、
すぐには気持ちが

まとまるわけないからね。

「繭子もね、

話してみたらって言うから」
社長は付け足すように、
そう言ったんだ。
それで俺、またきょとんとして、
「え?あ…、」
もうドギマギして、

何にも答えられなかった。

 

プロジェクト384日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/27 384日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

繭子ちゃんは、
俺が働いていたせんべい工場の
大切な一人娘ってわけなんだ。
まあ、参っちゃうよね、
おまけに薬指に指輪してるわけだし、
これでまた、
ダメなんだって俺も思ったよ。

2人とも
(飲みながらも食い入るように
コイちゃんの話を聞き入っている、
僕とサトちゃんのことです)、
どうせ、ダメなんだから、
いい言い訳なんだって思ったりする?
ところが今回だけは、
ちょっと脈があるんじゃないかって
気がしてたんだ。

どこがって言われたら、
考えすぎだろって思われそうだけど、
なんていうかなあ、
よく目が合ったり、
なんか俺のこと、
意識してんじゃないかって仕草に見えて、、、

でもまあ、、、
無理かな、、

そんな感じで悶々としていたんだ。

そこで、
事務所から出てきた彼女と鉢合わせたけど、
そんな気のきいた会話もできず、
俺は、
「社長って、お父さんなんだ」
繭子ちゃんは、自分で言ったのに、
少し照れた感じになって、
「あ、ごめんなさい、そうなの…、」
「全然、」
彼女はほっそりとして、
鼻筋の通った顔していて、
社長は、
丸々した禿げたおっさんだったから、
「なんか、全然似てないね」
俺がそこまで言ったら、
繭子ちゃんは吹きだして、
「そりゃそうだよ~、似てない似てない」
実の娘なんだろうけど、
社長の脂ぎった顔つきなんかに、
とても彼女の片鱗は見られなかった。

それで、
彼女の顔、
まじまじと見る機会になったんだよね、

いやあ、惚れた、
小柄で、色白で、
頬が少しぷっくりしてて、
なんか見惚れちゃってた。

そしたら彼女、
ふいに顔をそらして、
「今日も残業してたんですか?」
「はい、、機械のメンテとか、
もうちょっと憶えたくて、」
答えると、
「お家、前はうちと同じで、
工場やってたって聞きました」
俺は、社長には、
雇用面談の時に、
うちが前はせんべい工場やってて、
もうとうに潰れてしまったってとこまでは、
話していたんだ。
また復活させたいとかは
言ってなかったけどね。
「あ、社長が言ってたんだ?」
「そう、うん、ごめんね、」
「いや…」
「一緒だね」

彼女が、どういう意味で、
一緒なんて言ったのか、
その時はわからなかった。

同じように、
せんべい屋の子どもだってくらいだとは、
どうも思えなかったんだ。
卑下した感じでもなかったけど、
俺はちょっと考えてから、
「実は俺さ、」
また家を復活させたい、
そのためにここで修行してる、
てくらいのこと言おうとしたんだ。

だけど、そのタイミングで、
事務所のアルミドアがぎぎって開いて、
人影が見えた。社長だった。

あ、と思ったその時には、
繭子ちゃんは、
「じゃ、またね、お疲れ様!」
よく通る声で言うと、
そそくさと去っていってしまったんだ。

 

プロジェクト383日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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彼女の名は繭子ちゃん、
ふつうのまゆ、じゃなくて、
繭、カイコのまゆって書くやつ
(コイちゃんの言う普通はわかりませんが、、)

繭子ちゃんは、
その焼却炉でほんの少し会話して以来、
会えば会釈とかね、
ちょっと挨拶するくらいの関係にはなったんだ。

それで、
少しづつ気になったりしてたんだけど、
知ってるだろうけど、俺って、
見ての通り奥手じゃん?
(ここでまた、サトちゃんと僕は、
ビールを片手に目を見合わせます。
まあ、数年前、一緒に海に行ったこともあり、
思い当たるところもあります)

だからさ、
意識しちゃうと、
全然話せなくなっちゃってさ、
なんか無愛想に
挨拶するだけだったんだよね。

花ちゃんは知ってると思うけど、
前のね、ほら、
あの海行った時だって、、、
(僕はここで首を傾げます。
知らないってわけじゃないんですが、
確信を言いそうで、軽く戸惑ってました)

あの時の子だって、
俺なりには大分気になってたわけよ、
わかってたでしょ?
(僕は首を大げさに振って、
「全然わかんなかった」)

そんなことないだろう?
知ってただろう?
だけどさ、
会ったその日に気になっちゃったりしたら、
なんか変かなって思ったんだよ。
もちろんさ、食事に誘うとか、
まずは軽くデートしようとか、
そういう誘いもあんだろうけど、
俺、あんまりそういうの慣れてないから、
あの時はさ、
花ちゃん、すんげえ軽く、
付き合っちゃえば、とか言ってたけど、
まあ、俺には無理だなって、
諦めてたから、、、、、

で、結局あの子とは
なんの進展もなかったわけだけど、
今回はね、さすがに俺も、
なんとかしなきゃって、思ったんだ。

まず、ちょっと近づいたチャンスに、
手を見たわけ、
指輪付いてたら、既婚者でしょ、
だから、そういうんじゃないかって、
そうしたらさ、薬指に、
なんかシルバーの指輪付いてて、
それで、がっかりって感じで、
いったん萎えた。。

で、ここで普通は、
諦めるよね、多分ね、
でも俺、なあんか今回は引けない、
って気持ちばっかり前にいってた感じだった。

ある時、
また2人きりになる機会があった。
俺が残業して、
結構遅くにね、
機械メンテしてたから、
それで1人で、工場に隣接している、
事務所に足を運んで行ったら、
そこから、繭子ちゃんが出てきたんだ。

2人きりになったのは、
まさに焼却炉以来、
やべって思ったけど、
なんとか、
「ずいぶん、遅いんですね」
そう声をかけたんだ。
そしたら彼女、
「お父さんが、手伝えって言うから、」
「え、お父さん?」
「あ、ごめんなさい、社長ね、
事務仕事手伝わされて」

そう、彼女は、
ここのせんべい工場の社長の娘だったんだ。

 

プロジェクト382日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

銀行にお金借りるのって、
相当大変なの知ってる?
(無論、30歳前後で
社会に出たての僕には、
融資というものが
どういうものなのかすらさっぱりわかっていません。)

まず、抵当にあたるもんが必要なんだよね。
つまり、金返せなくなった時に、
とられちゃうものなんだけど、
まえ、うち来て知ってると思うけど、
結構、駅から近い場所に、
これだけの土地があって、
工場が建ってたわけだから、
母親と話して、
これで抵当はいいんじゃないかって
話になったんだ。

ところが、
銀行からは最初断られた。

一つ目の理由は、
すっかり老朽化してしまった工場が、
逆に邪魔で、
解体費などがかかることから
資本にできないってことだった。
もう一つの理由は、
単にせんべい工場を立て直すというだけでは、
今後の運用の見通しがつかないって、
言われたんだよね。

銀行は結局、投資だから、
儲からないってことはだめなんだよね。

企画が必要なんだ、
投資してもいいって思わせることが
必要ってこと。

俺はとにかく、考えてみたよ。
イチゴ味とかメロン味とか、
奇想天外なせんべい作るって
言ってはみたけどね、
話はそんな簡単じゃない、
消滅してしまった販路も、
また再開拓しなきゃならないんだ。

俺、どうしたと思う?

(ここで僕とサトちゃんは、
目を見合わせました。
サトちゃんが、
「どっかのせんべい屋に修行に行く」
と言ったのです。)

そ、その通り。
草加せんべいって基本的に、
オーソドックスな型なんだよね、
昔ながらのしょうゆせんべい、
俺もこれしか知らなかったから、
東京に出ることにしたんだ。

浅草に近いところに、
規模は小さいけど、
まだまだ生き残って
それなりにやってるせんべい屋があって、
そこに修行っていうか、
結局ね
(コイちゃんはここで
ちょっと下向いて笑いながら、)
またアルバイトで、
せんべい工場に入ったわけだよ。

でも、今までアルバイトしていたのとは、
全然気持ちが違った。
目的がはっきりしているし、
なにより、
今まで全然気にしてなかったけど、
うちの工場とはまるで違う手法とか、
販路とか、販促方法とかね、
そういうのがわかって、
ほんと、
充実した気分で仕事していたんだ。

1か月目くらいだったかな、
工場にたまに来る、
ちょっとかわいい子がいて、
夕方とか、ごくたまあにしか来ないんだけど、

小柄な子で、
すごい清潔感があって、
真っ白な割烹着てた。

ある日、
俺が仕事終わらせて、
焼却炉のとこで
ごみくず燃やしてたら、
彼女がやってきたんだ。

「ふふっ」
なんか、小さな笑い声がして、
それで振り向くと、
彼女が立っていた。
始めてまぢかで見て、
俺、ちょっとどきまぎしてたら、
「そんなに近づいて、
あっつくないんですか?」
すっごい焼却炉に近づいていたらしい、
「ああ、たしかに」
おどけて答えると、
「焦げちゃいますよ」
そう言って、
彼女はまたくすくす笑っていた。

それが、
最初だったかな、
言葉を交わしたのは、
ここの従業員だと思うんだけど、
なにやってんのかは、全然知らなかった。

 

プロジェクト381日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/24 381日目</strong></span>
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■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
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 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

コイちゃんが飲み屋で話している続きです。


俺は、ほんと久々に自宅の裏の
せんべい工場に足を運んだんだ。
(ここは僕自身も一度足を踏み入れた場所です)

もう15年くらいかなあ、
とにかく工場が潰れて、
ほったらかしにされてたから、
特に親父が亡くなってからは、
誰も入らなくなっちゃってたから、
まあ惨憺たるありさまだった。
ほこりかぶってる感じだし、
なんか鉄骨の柱が
倒れてるところもあったしね、
撤去しないと危険なくらいだった。

床をぎしぎし鳴らせて、
中に入ってみたんだ。

母親にきつく言われた直後だった。
俺はもやもやした気持ちのまま、
すっかり錆びついてしまって、
赤黒くなった太い鉄の柱を
見上げていたんだ。

そしたらさ、
自然に今までなかった気持ちになった。
ホントは、
もともと潜在的に
抱いていたことかもしれないけど、
ふいに湧いてきたのは、
子どもの頃、
この工場が賑やかに稼働していて、
従業員の合間をぬって
走り回っていた頃の光景だったよ。

香ばしい醤油の香りが、
いつも漂っていて、
それは今となっては、
柱に鼻を近づけると、
わずかに残り香を
感じられる程度になってたんだ。

俺、これやっぱやりたいなって思ったんだ。
そう考えだしたら、
なんかすごいやる気に
なってきたってわけで、
ここから挑戦がはじまったんだよね。

それを母親に話すと、
さすがにかなり驚いていたけど、
ちょっと涙目にもなっていた。

「でも、どうするんだい?」
そう聞くから、
「まず昔の販路を確認したい、
お米屋とか、醤油問屋とか、」
俺はそこまで言うと、
ちょっと考えてから、
「あと、なんか斬新なことしたい、
古い普通のせんべい作ってても売れないから、
コンソメ味とか、イチゴ味とか」
「でも、、」
母は俺がとうとうと語るのを止めて、
「お金はどうすんだい、お金、」

そう、まずは先立つお金なんだよね、
銀行で、借りてこなきゃいけないわけで、
ここからスタートなんだよね、
まずは資金集め。

 

プロジェクト380日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/23 380日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

コイちゃんは、
1年前から付き合いだした
交際し始めた彼女の話をしたのです。

居酒屋で、
口ひげを蓄えたコイちゃんは、
トロンとした目を上げて、
おもむろに話し始めました。

………

実はさ、
あの弁当工場の仕事やめた後、
本当は俺、
せんべい屋復活させようって、
いっとき、自分なりに頑張ってみたんだ。

母親がさ、
「またアルバイトやめたの?」
そう聞いてきて、
俺はただいつもみたいに、
そうだよって答えたんだけど、
なんか考えてるふうで、
「あんた、これからどうするの?
もうあっという間に30歳だよ、
中々定職につかないで、
アルバイトばっかして、、」
そう言うから、
俺はちょっとムッとして、
「アルバイトだって、仕事だろ、
ちゃんと金稼いで、家にも金入れてるし、」
「そういうことじゃないでしょ、
なんかやりたいことないの?」

バイトなんて、
何回も始めちゃやめて、
この歳まで
いろんな職を転々としてたんだけど、
母親に、
こんなに食い下がられることなんて
正直今までなかったんだ。
でもこの時ばっかりは、
なんか思うところあったのか、
いろいろ言われて、

「じゃあどうしろっていうんだよ、
社会人になって、
定職つきゃいいってこと?」
そう言ったら、
母親は黙ってしまった。

俺も、いつもは
あんまり考えてなかったんだけど、
そこまで言われてみると、
ホントにこのままでいいのかなとは、
さすがに思うようになったんだ。

俺って何したかったんだっけ?

大学も行ったわけじゃないし、
高校卒業した後は、
就職もせず、
ただアルバイトをしながら、
職を転々として過ごしていたから。
実家にずっといるのもあったかもしれない。

本当は、高校卒業後、
スーパーマーケットに、
1回だけ就職しているんだけど、
なんとなくね、
毎日遅くまで大変だったのもあるし、
売上向上ノルマに追われて、
こういう、競争していくってこと、
自分には向かないなって思っちゃって、
それで2年で退職してからは、
ずっと短期的なアルバイトを続けていたんだ。

もちろんね、
このままじゃ行けないとは、
ぼんやり思ってたけど、
結局アルバイトなんて、
向こうも使い捨てだと思ってるし、
簡単な作業ばっかりで、
なんにもスキルなんて身につかないし、
本当にこのまま、
ただ成長もしないでいていいものか、
さすがに考えるところもあったんだ。

それで、母親に、
あんな剣幕で言われてみたら、
さすがに俺も、
次はなにかしてみようって
そういう気になったんだ。

もう出入りしなくなって大分経った、
せんべい工場の敷地に足を運んでみて、
俺やっぱり、
家業を復活させたいなあ、て、
それで考えたんだ。

 

プロジェクト379日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/7/22 379日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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