ご訪問くださいまして、
有り難うございます。
れっつごうです(^^)
今回は、
前から読んでみたかった小説、
松永K三蔵さんの
芥川賞受賞作、
から、
私の印象に残った箇所を、
紹介・解説します。
最初、
というタイトルを聞いたとき、
「インドネシアのバリ島の山?」
を連想しましたが、
まったく関係ありません(^^;
「バリ」とは、
山歩きでいう、
バリエーションルートの略で、
要は、整備された正規の登山道ではなく、
破線ルートと呼ばれる
上級者向けの荒れた道や、
道なき道、すなわち、
藪を分け入ったり、岩場や滝を登ったりする
ルートのことを指します。
(知らなかった・・・)
私は、山歩きが趣味のひとつですが、
まだまだ初心者なので、
正規の登山道を歩くことが多いです。
ただ、そこはけっこう
混みあっていることも多いので、
たまには、
人の少ない破線ルートをあえて歩く時や、
はからずも、
正規ルートを外れてしまい、
「道なき道」をさまよった経験も
何度かあります(^^;
(今、思い返すと、
実はかなり危険だったかも)
この小説を読みながら、
その時の感覚を思い出しました。
数年前のことですが、
大雄山最乗寺から、
明神ヶ岳に登った時、
だいぶ山頂に近づいたころ、
目の前に枯れた沢が出現しました。
登山ルートは左に曲がるのですが、
それに気づかずに、
そのまま正面の枯沢を登っていくと、
その後、
小さな崖にぶつかったので、
「あれ、道を間違えたかな」
と思いましたが、
崖を登ったら道が現れるかもと
勝手に思い込んで、
何とかよじ登ったところ・・・
ううっ、道がない。
戻るのは癪だし、
崖を降りるのも危険・・・
「上に登っていけば、
いずれ登山道に出るだろ」
半ば、やけになって、
道なき道、
藪の中を突き進みました。
「遭難するかも・・・」
という考えもよぎり、
かなり焦りましたが(^^;
身体が生命の危機?
を感じたのか、
何故か、その時、
体中にパワーがみなぎってきました!
(これが火事場の馬鹿力?)
枯れた草木の枝をなぎ倒しながら、
10~20分ほどでしょうか、
無我夢中で
とにかく上に上へと登ったところ・・・
・・・何と、
小さな祠が現れたではないですか!
「ああ、助かった・・・」
神さまの存在を感じました(笑)
その先には登山道があり、
山頂まで無事たどり着けたのですが、
ちなみに、
その祠は決して幻ではなく、
今も、明神ヶ岳に登るたびに、
必ず立ち寄って、
感謝の祈りを捧げています。
・・・と、
私事が長くなりました(^^;
小説に話を戻します。
とある中小企業に勤める、
バリ山行初心者の主人公、
波多くんに、
バリ山行ベテランの
妻鹿(めが)さんが、
山行中にこう語ります。
勤め先の会社の雲行きが
怪しくなっていることに対して・・・
「でも波多くん、
あれは本物だったでしょ?
あれはホント
怖かったよね」
何のことを
言ってるのか、
私にはすぐには
わからなかった。
ー本物。
それはあの時、
あの落葉の急斜面を
辛くも抜けて、
縋りついた岩の上から
妻鹿さんが私に言った言葉だ。
(中略)
「会社がどうなるとかさ、
そういう恐怖とか不安感ってさ、
自分で作り出しているもんだよ。
それが増殖して
伝播するんだよ。
今、会社でもみんな
ちょっと
おかしくなってるでしょ。
でもそれは予測だし、
イメージって言うか、
不安感の、感でさ、
それは本物じゃないんだよ。
まぼろしだよ。
だからね、
だから
やるしかないんだよ実際に」
(中略)
「なんかねえ、
バリをやっていると
いろんなことを
考えちゃうんだよ。
で、それでも
確かなもの、
間違いないものってさ、
目の前の崖の手がかりとか
足掛かり、
もうそれだけ。
それにどう対処するか。
これは本物。
どう自分の身を守るか、
どう切り抜けるか。
こんな低山でも、
判断ひとつ間違えれば
ホントに死ぬからね。
もう意味とか感じとか、
そんなモヤモヤしたもの
じゃなくてさ、
だからとにかく
実体と組み合ってさ、
やっぱりやるしかないんだよ」
バリ山行の場では、
一歩間違えれば、
死ぬ可能性がある、
あれこれ妄想するよりも、
目の前の現実を乗り越えることに
いかに集中するか、
会社でもそれが大事ではないか。
ということですね。
・・・しかし、その後、
バリ山行を続ける中で、
心身ともに
ボロボロなった主人公は、
ついに、キレてしまいます。
「山は遊びですよ。
遊びで死んだら
意味ないじゃないですか!
本物の危機は
山じゃないですよ。
街ですよ!
生活ですよ。
妻鹿さんは
そこから逃げているだけじゃ
ないですか!
ズルくないですか?
不安から目を逸らして、
山は、バリは刺激的ですけど、
いや”本物”って、
刺激的なもんじゃなく、
もっと当たり前の日常に
あるもんじゃないですか。
どきっ・・・
そうですね、
「本物の危機」は、
山じゃなくて、
街であり、生活であり、
当たり前の日常にある。
たしかに、
私たちは、
そこからいくら目を逸らしても、
逃れることはできません。
そう考えると、
「本物」とは、あくまで、
日常生活の中で見出すべきものかも
しれませんが・・・
その後、
妻鹿さんが取った選択は、
それとは次元が違うものでした。
思うに、
「本物の危機」とは、
自分を棄てることではないか・・・
・・・いや、これ以上は、
ネタバレにもなるので、
止めておきますが(^^;
この、
バリ山行のベテラン
妻鹿さん、
会社では浮いている存在ですが、
なかなか魅力的なお方でした(^^)
整備された一般の登山ルートと、
一方で、
藪をかき分け岩や滝を登る
道なき道バリルート。
今や時の人になってしまった、
フジテレビ遠藤龍之介さんの父親、
遠藤周作さんの小説、
「影に対して」
の一節を想起します。
(過去ブログでも解説しました。
よかったらご覧ください)
アスハルトの道は安全だから
誰だって歩きます。
危険がないから
誰だって歩きます。
でもうしろを振りかえってみれば、
その安全な道には
自分の足あとなんか
一つだって残っていやしない。
海の砂浜は歩きにくい。
歩きにくいけれども
うしろをふりかえれば、
自分の足あとが
一つ一つ残っている。
遠藤周作さんは、
フリーランスの小説家という
砂浜の道を選びました。
その遠藤周作さんが、
フジテレビに入社した息子さんに、
ニヤッとしながら、
「どうだ、舗装道路の歩き心地は?」
と訊ねたところ、
息子さんは、
「非常に快適な道を歩いておりますが、
お父様が吸ったことがないような
排気ガスも吸っています」
(うまい表現!)
と切り返したという
エピソードがありますが(^^)
アスハルトの道は、
整備された登山道、
砂浜の道は、
「バリ山行」ともいえますね。
どちらの道も、
一長一短があり、
たとえば、
整備された登山道は、
快適だし、
その先は絶景が待っていることも
ありますが、
反面、混んでいるし、
騒がしいというデメリットもあります。
バリ山行は、
静かだし、冒険心をそそります。
生を実感できるという魅力がありますが、
一方で、かなりの危険を伴います。
わたしは小心者なので、
やっぱり、現実を考えると、
整備された登山道を
メインにしていきたい派ですが、
時には、バリルートで、
冒険するのも悪くないと考えます。
人生においても・・・
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以上、
いろいろと断線しましたが(^^;
松永K三蔵さんの
芥川賞受賞作、
から、
私の印象に残った箇所を、
紹介・解説させていただきました。
松永K三蔵さんは、
「オモロイ純文運動」
をされているだけあって、
芥川賞受賞作とは思えないくらい、
(まるで直木賞作品のように)
読みやすく、
ユーモアもあり、
されど深みのある小説です。
中小企業の内情も
リアルに描かれているので、
山好きな人はもちろんのこと、
組織で働く人には
共感できる内容だと思います(^^)
おすすめします😊
追伸
この本の表紙、
よく見ると・・・
あと、ラストの後、
すぐにカバーを
取ってみてください。
(編集さん芸が細かい!)
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今回も最後までお読みくださいまして、
有り難うございました(^^)
次回はまた、
山口周さんの本の紹介に戻ります(^^;
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おまけ写真集(^^;
相州アルプス、
仏果山~高取山に!
途中の風景。
ところどころ、
雪が少しだけ残っています(^^;
(2月11日時点です)
仏果山山頂、着きました!
仏さまが何体かいらっしゃいます。
鉄塔に登ると・・・
絶景です!
宮ケ瀬湖。
丹沢の山並!
塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳・・・
左は大山ですね。
革籠石山まで足を延ばしてUターン。
痩せ尾根。
なかなかスリリングな岩場も通ります(^^;
仏果山越えて、高取山山頂。
ここの鉄塔からも絶景!
しばし見とれました・・・
仏果山~高取山、
割と気軽に登れて絶景が楽しめる、
おすすめのコースです!
(今回はバリルートは
通りませんでしたが(^^;)
下山後、オギノパンの工場に寄って、
揚げあんパン食べて帰宅。
帰路、座間神社にもぶらっと立ち寄り、
有り難うございました😊

























































































