小説 心カウンセラー 御神玲香 3 | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き



 真守は、暗闇の中に立っていた。
 上か下かも分からない世界で、自分の姿だけが鮮明に存在している。
 予想していた再現ドラマらしき兆候は全くない。
 部活も保護者会もどこにもない。
 真守しか存在していない。
 リズミカルに地震がはじまった。
 どしんどしんどしん
 地震に気づいた瞬間、地平線が生まれた。
 世界は明るくなり、不毛な荒野となり、草も生えない地面が続いている。
 どしんどしんどしん
 地響きは近づいてくる。
 どしんどしんどしん
 地平線の彼方から巨大な起き上がりこぼしが、びよんびよんと上下に飛び跳ねながら近寄ってきていた。その大きさはビル3階分以上はありそうだった。
「御神さん!あれなんですか!見えてます?」
「逃げて」
 気づくと耳にワイヤレスヘッドが刺さっていてそこから御神の声が冷静に響いた。
(御神さんにも予想外だったんかーい!)
と心の中で精一杯毒づきながら真守は走った。
 幸いなことに起き上がりこぼしは直線で動いていて進行方向を変えそうにない。遠くに離れるなら直角方向が一番いい。
 息切れするほどに走って限界を感じて立ち止まった。起き上がりこぼしは遠くに去ったが、地震は続いている。
「真守様こちらをお使いください」
 機械的な声に気づくとブリキのロボットが目の前にいてスコップを差し出していた。
「佐保さん」
「はい」
 安心して泣き出しそうになった。
 見慣れない土地で意味不明なものに潰されそうになった中で、かすかでも知ってるものに出会えると男か女かも分からないものに惚れそうになる。
「掘って」と御神のアナウンスが指示してきた。
「さっきの誘導聞いてたでしょ」
「はい」
「切り離すように指示してもらったもう一人の蟹和さんに出会うことが鍵よ!
深層心理の世界は、強い意思を持てば現実化するの!
真守が、そこにあるって思いながら掘れば出てくるから!」
 真守はぐるりと見回した。硬そうな地面の中で少し輝いて見えるところがある。
 走り寄ってスコップを突き立てたが歯が立たない。硬い。
「蟹和さん、出てきてください」
 スコップの金属部分に足をかけて力をかける。
 畑仕事なんてしたことないのに。
 力仕事なんて向いてないのに。
 そもそも事務職に近い仕事をしていたのに、なんでこんなことをしているんだ。
 今、俺は何をやっているんだ?
 ゲームをやってた身として、冒険は確かにしたかった。
 こんなの冒険じゃない。
「これを使ってください」
 ブリキの道具屋は、水の入ったじょうろを渡してきた。
「柔かくなれって」御神の声が再び突き刺してくる。「柔らかくなれって唱えながら、水をかけて」
 水をかけて、再度スコップを突き立てる。嘘のように柔らかくなっていた。
 その間もずっと地響きは続いている。
 スコップが土ではない何かに当たった。
「どうぞ。手が傷つきます」
 佐保が渡してくれた軍手で土を落とすと巨大な木の皮のようなものが埋まっている。
「それよ!もっと土から出して!」
 御神の指示に苛ついた。
 安全安心清潔な上から指示だけしやがって。と舌打ちしたくなる。女に逆らえない真守自身の因縁が恨めしい。
 どんどん掘りやすくなっていく土のおかげで、思ったより早く周辺を掘ることができた。
 上半分ぐらい掘り出せたところで、真守は手を止めた。
「椰子の実ですね」
 人一人入れそうなほど巨大なヤシの実が土から半分飛び出している。
 真守の目の前を何かが飛び出した。
「蟹和さん。出てきて」
 御神が目の前で膝をつき、椰子の実に呼びかけながら、何かを探すように表面を調べている。
(やっと出てきたと思ったらおいしいところを全部持っていきやがって)
「真守!ここ!ここを持って!」
 二人で持ち上げると、蟹和が横になっていた。
 蟹和がゆっくりと起き上がると、真守は妙な違和感に気づいた。現実の蟹和より少し若くて幼くてあどけないのだ。シンプルな白いワンピースを着ている。
 椰子の実から生まれた椰子の実姫がそこにいる。
 椰子の実姫は、明らかにおびえていた。
「私、隠れてないといけないの。
なんで起こしたの?」
「いていいのよ」
 御神は、やさしい声とやさしい微笑みで女神のように椰子の実姫を諭す。
「出てきていいの。これからあなたがずっと外に出れるようにするから協力してくれる?」
椰子の実姫は、うつむいた。
「無理だよ…」
 ずっと遠くにあった地響きが、急に近づいてきた。
「無理でも、引きこもってもいいから、あれを壊す協力はしてもらうわよ!」
 珍しく顧客の前で御神の地が出ている。そうとう焦っているらしい。
 今まで姿が見えなかった起き上がりこぼしが、巨体で飛び跳ねながら、ものすごい速さでこちらに向かってきている。    
 まだ点にしか見えないが、距離感がよくわからない世界で、ここに到達することはそんなに時間はかからないに違いない。
「私はひどい母親なんですって言ってみて!私に続いて言葉を言ってみて!心なんて込めなくていいから!とにかく言って!」
「私は…ひどい母親なんです」
「あんなに努力したのに」
「あんなに…努力…したのに…」
「うまくいってたのに」
「うまく…いって…たのに」
「あいつらのせいで台無しだ」
「あいつら…の…せいで台無し…」
 椰子の実姫がボロボロ泣き出した。
「ひどい母親ってばれちゃう」
「ひどい…母親って…ばれちゃう…」
どすんどすんどすん
 米粒ほどにしか見えなかった起き上がりこぶしが、握りこぶしほどの大きさになって細かいところが見えるようになって真守は気づいた。
 おきあがりこぶしにエプロンの絵が描いてある。笑顔とエプロンが描かれたおきあがりこぶしは、理想の母親の象徴なんだろうか?
「あいつらに会いたくない」
「そうなんです!あいつらに会いたくないんです!」
「専業主婦を馬鹿にするな!やることいっぱいあるのに邪魔をするな!」
「専業主婦を馬鹿にするな!やることいっぱいあるのに邪魔をするな!」
 椰子の実姫は、泣き顔のまま力を得たように生き生きと叫ぶ。
「子供っぽい嫌がらせしやがって!」
「子供っぽい嫌がらせしやがって!」
「なんで行かなきゃいけないの?子供達が邪魔にしてるのが分からないの?」
「なんで行かなきゃいけないの?子供達が邪魔にしてるのが分からないの?」
「行くのやーめた」
「え…無理です」
「実行しなくてもいいからとにかく言って!」
「行くのや…め…た」
 破裂音がして、真守が振り返ると起き上がりこぶしの一部が破損していた。二人は自分達の世界に夢中なのか気にしていない。
「行くのをやめたら、あの子が困ります!」
「でも、お子さんは、大丈夫って言ってるんでしょ」
「分かってないから…」
「一度やらせて、助けを求めたらまた考えればいいでしょ」
「そんなひどいことできません」
「もう一度言ってみて。
私はひどい母親なんです」
「私…は…ひどい…母親なんで…す」
「自分が行きたくないから、あの子のやりたいことを潰すんです」
「自分が行き…たく…ないから、あの子のやりたいことを…潰すんです…私はこんなこと聞いてません。我慢のやり方を聞いてるんです」
「この言葉を言ってください。
私は我慢して八つ当たりするひどい母親なんです」
「私は我慢して…八つ当たりする…ひどい母親なんです」
「我慢する上手な方法なんてありませんよ」
 再び破裂音がして、起き上がりこぶしは破損しただけでなく全体的に大きなヒビが入った。
 真守は、夢中になっている二人に声をかける。「もう逃げないとやばいですよ!見てください!」
 二人は顔を向けた。破裂する度に速度は落ちたものの、近づいた分、その大きさと不気味さが迫ってくる。
「走って!」3人は隠れるものもない平地の中を駆け出した。
「もし」先頭の御神が斜め後ろを走る真守の方を向く。
「もし、カウンセリングが間に合わなくて追いつかれたら、真守が壊しなさいよ!
 おきあがりこぶしが壊したいのは真守じゃないから大丈夫!」
「無茶言わないでください!」
 起き上がりこぶしが壊したいものは、椰子の実姫なのだろうが、仮想現実の世界だろうと死んだらやばいのではないだろうか。
「では、次の言葉を。あの子にうまくいってないことをバレたくない。でも、あの子にはとっくにバレてるし」
 走りながら御神は叫ぶ。
「あの子にうまくいってないことをバレたくない!でも、あの子にはとっくにバレてるし!確かにバレてます!」
 一番大きな破裂音がして、起き上がりこぶしは足を止めた。そして、普通の起き上がりこぶしと同じような動きをした。一点を中心にあらゆる方向に倒れたり起きたりしはじめたのだ。子供向けの明るい色調で描かれた笑顔エプロンが、破損してひび割れてあらゆる方向に無限大を描くように頭が動く姿は恐怖以外の何モノでもない。
「真守任せた!」
「真守様。これを」
 佐保が魔法のように現れて、巨大なハンマーを渡してくる。
「どうやって近づけっていうんですか?」
 真守の声に誰も答えようとしない。女二人はまた二人の世界に入っている。
「保護者会から逃げる姿を見せたくない」
「保護者会から逃げる姿を見せたくない」
「そんな姿を見せるぐらいなら、やりたいことを取り上げる方がいい」
「そんな姿を見せるぐらいなら、やりたいことを取り上げる方がいい」
「なんてひどい母親なのかしら
でもどうせバレてるし」
「なんてひどい母親なのかしら
でもどうせバレてるし」
「私子供を犠牲にして幸せになっていい。
私が幸せになると子供が幸せ」
「幸せなんですか?」
「そうですよ。子供は、ひどいことをされたからお母さんを責めるんじゃないんんです。お母さんが自分に笑顔を向けないから、理由を探すんです。
 親ができることは、心からの笑顔で、幸せに生きて人生悪いもんじゃないとしめしてあげることです。子供は、大人がどんなことに勇気を出したかを一番見ているんですよ。
みんな大人になると忘れてしまうんですけどね」
「私…子供を犠牲にして幸せになっていい。
私…が幸せ…になると…子供が幸せ」

 真守は、タイミングを計りながら、勇気を振り絞っていた。
 こんなに巨大で奇想天外な物質をどうやって壊せばいいというのか。そもそも足止めできているのだから、これ以上は必要ないのではないか。
 けれど、御神の手前、一撃ぐらいは入れておかないと示しがつかない気がする。
 要はタイミングだ。
 長縄飛びといっしょだ。
 この起き上がりこぶしは、地面スレスレまでは倒れない。ちょっとかがんで起点となっているところへ行き、一撃を入れておけば言い訳できる。ちゃんとやりました。と言えるようにしておけばいいのだ。
 真守は地面を蹴り上げた。頭の数メートル上を起き上がりこぶしの頭が走っていく。根本に着いた。根本に近いと倒れる角度が狭いので、真守にぶつかりそうになる。一撃だ。一撃入れて退散する。ハンマーを振り上げた。その時。
 真守は見えない壁にふっとばされた。
 遠のきそうな意識を捕まえて、何が起こったか確認しようと頭を上げる。
 起き上がりこぶしが砕け散っていた。
 御神が、椰子の実姫に破片を拾わせている。
「ありがとう」
「ありがとう」
「私に素敵なお母さんをさせてくれてありがとう」 
「私に素敵なお母さんをさせてくれてありがとう」 
 椰子の実姫は、破片を胸に抱きしめて泣いていた。
「これから私幸せになるね」
「これから私幸せになるね」
「ちょっとずつ我慢をやめて、勇気を出して自由になるね」
「ちょっとずつ我慢をやめて、勇気を出して自由になるね」
「保護者会は?」
「行きません」
 真守は、意識を失った。
 


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