小説 心カウンセラー 御神玲香 2 | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
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☆ 

 先日の真守に対する「装置のお披露目」が終わって数日後、いよいよ使う日がやってきた。
 今日は初めて使われるとあって、装置の透明な蓋が開いていた。垂直に立つように開かれた姿はまさにSF感が増して真守のテンションはマックスで上がっていく。
 今日のモニターとして参加してくれる被験者は、御神の長期契約のお客様だった。御神は、深い信頼でつながっている顧客の中から募集していようだが、前から打診していた一人がやっと了承が得られたらしい。
「問題が深すぎると何が出てくるか分からないから、長期契約してくださってて比較的落ち着いてる方を選んだの」
と真守は説明を受けていた。
 今日のモニターとして部屋に入ってきた女性は「蟹和曜子」という女性だった。
 40代ぐらいだろうか。
 背が高くてすらっとした女性だった。
「よろしくお願いします」と頭を下げる姿は、聡明な印象がある。
 お披露目の日のあと、装置の横に設置された一人がけのソファにそれぞれ座る。今日の相談内容を確認してから装置に入る段取りとなっていた。
 御神は書類を広げ、注意事項を読み上げた。
 新しい技術のモニターになってもらうため今回の相談による長期契約の追加料金は発生しないこと。
 一般にも利用されている装置ではあるけれど使用中や家に帰ったとに身体的な異変があれば小さなことでも報告すること。
 否定的な内容であろうと感想は率直に言うこと。
 以上のような細々したことを説明のあとサインしてもらった。
 蟹和は「私の夫がどんどん稼げるようになったのは、御神さんのおかげですから、ご協力できてうれしいです」と微笑む。
 真守の頭に「できた嫁」という言葉が浮かんだ。そして、御神が強固に信用されていることも。商売は信用が第一だ。この信用があるから御神は稼ぐことができる。
「では、今、何に困っていますか?」
 御神の言葉に蟹和の顔が歪む。
「子供の部活の父母会のことなんです」
 目を落とし、説明を組み立てながら話しはじめた。
 子供がフェンシング部に入部した。
 思ったよりお金がかかったが、ちょうど御神のサービスによって収入が増えたことが実感できる時期と重なったので、思ったより負担にはならなかったが、それよりももっと大きな問題があった。
 とにかく保護者が参加する機会が多いのだ。
「公式な試合ならまだしも」と蟹和は悔しそうに話し続ける。
どんどん調子が乗ってきて話に熱が入ってきた。
 小さな練習試合も強制に近い形でお呼びがかかる。子供の先輩の保護者の中に中心人物がおり、とても熱心な上「どんな小さな試合でも保護者がボランティアでサポートすべき」という大層な理念をもっていた。
 専業主婦だった蟹和は、どうしても断る理由を見つけることができずにズルズル参加しては苦痛に耐えてきた。確かにボランティアスタッフがいれば部活のコーチも助かるだろうが、幼稚園ではないのだ。中学生の子供達のサポートにそんな大勢の保護者がいたところでやることはない。何より年頃の子どもたち自体が保護者がいる前だとやりにくそうだった。
 蟹和自身も限界に近づいていた。子供に部活をやめさせるか言い訳をする大義名分を作るためにパートを見つけるかしかない。けれどそれは違う気がする。答えが見えずに相談に来たと話終えた。
「もし、母親であるあなたが父母会に行かなくなるとどんなことになりますか?」
「子供が困った立場になります」
「それについてお子さんはどんな風に言ってますか?」
「平気だって言うんです。絶対分かってないからそんなことが言えるんです」
「他の保護者の方は嫌がっていますか?」
「私以外は仲良くやっているんです。子供達の祖父母にあたる方が代わりに来ていることも多いので半分老人会になってます」
「仕事で来れない人もいるんじゃないですか?」
「います。けど陰でめちゃくちゃ言われて意地悪されるんです。普段来ない人は公式試合のとき自分の学校の応戦席に入れないんです。一般席に追いやられるんです。連絡も回ってこないことがあります」
「一般席でも応援はできますか?」
「できます。けれど少し遠いし、子供にそんな姿を見せることが恥ずかしいです」
「連絡というのは回ってこないと困りますか?」
「うちは子供がしっかりしているのでそれほど…うちは女の子ですけど、男の子だとうまく伝わらないことが多いみたいで保険として回ってくるものなので」
「ラインのようなSNSのグループで一括で連絡事項を回したりしないんですか?」
「前はそうしてたみたいなんですが、うっかり見落とすことが多かったり、SNSの機能を使える人が付け加えたことが使えない人に見つけれなくて読めなかったりと逆に不便なので紙や電話に変わったそうです」
「どうすれば解決すると思いますか」
「私がもっと大人になって、我慢すればいいことは分かってます。
 けど、限界なんです。
 家で苛立って、子供に何度もあたってしまいました。
 我慢できる方法を教えて欲しいんです」
 御神は頷いて席を立った。
「では、装置でのカウンセリングに入りましょう」
 3つ並ぶカプセルの右端に蟹和に入ってもらう。まだカプセルの蓋は閉めない。
「入って」と御神は左端のカプセルを指差して万編の笑顔で真守に告げた。
「御神さんは…?」
「私は誘導するから」
 真守は虚を突かれたような顔になった。
「入らないんですか?」
「ワタシはユウドウスルって言ってるでしょうが」
 御神の怒りが真守をナイフのように突き刺していくのを感じて真守は諦めた。
 足を固定し、頭にヘルメットをはめて左端のカプセルの中で横になって、手を専用の場所に差し込む。目の部分も覆われて暗闇になる。頭皮にチクチクと刺激が走った。
 まだ蓋は閉められていない。感覚はまだ現実にある。
「全身に力を入れて」
 御神の声がアナウンスされる。
「抜いて」
「入れて」
 何も見えないが多分御神で間違いなだろう。全身を触って力が入っているか抜けているかをチェックしてくる。
 この「脱力」というワークをすると全身が整う。体の余計な力が抜け、血の巡りがよくなって思考が柔軟になる。深いリラックス状態を作れるのだ。
 このワークはいつも御神がカウンセリングのときに行う手順だった。
 真守は安心する。そうだ。やることはいつもといっしょなのだ。装置を使うだけで。その装置が問題であることはおいといて。
「蟹和さん、あなたの理想の姿をイメージして、それを邪魔するものを別にしてください」
 御神の声が続く。
 (そうだよ)と真守は自分を安心させるように言い聞かせる。装置を使っても御神の手法が変わるわけではない。やってることの効果を大きくするだけだ。さっきの脱力ワークからカウンセリングと通常と同じことをやるだけだ。 
 御神は「ごっこ遊び」でのカウンセリングを得意としていた。「ごっこ遊び」とは、人形を問題の相手に見立てて本人に言いたくて言えないことを言ってもらうというものだ。
 深層心理なんて大げさなことを言ったって、ごっこ遊びの延長なのだ。きっと、部活動中のPTAの再現ドラマがはじまるのだろう。中心にいる「仕切り屋」に言いたいことを言わせる蟹和が主人公の舞台が始まるのだ。蟹和ができるまでタイムリープのように繰り返しになるのだろうか。
 安心させても安心させても自分の心臓の音が大きくなっていくことがわかる。こんなに興奮してちゃんとバーチャルリアリティの世界に飛べるだろうか?
「我慢できて、子供の応援ができて、まわりの保護者とも仲良くやれるとってもいいお母さんであるあなたがいます。そして、それを邪魔するものはどんどん離れて別のところに蓄積されていきます…」
 カプセルの蓋が閉じた。
 すべての感覚が現実から切り離され、バーチャルリアリティへと移行しているのだろうが、それは一瞬の暗闇と静寂としてしか真守は感じることができなかった。


 
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