小説 心カウンセラー 御神玲香 1 | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

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成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き


小説書きました

☆ ☆ ☆試運転


 「うふふ、買っちゃった」と女性がキャッキャウフフと笑ったなら、たいていは、「これ、かわいいでしょ?」と続くのではないだろうか?と家永真守は目の前の御神玲香を見て考える。手にするものは洋服か小物が定番だろう。とも。
 しかし、家永真守の前で「買っちゃった」と言いながら珍しく浮かれている御神が手にしているものはキーホルダーひとつ付いていない鍵だった。出勤して一発目に見せられた現実に真守は疑問しか浮かばない。
「何の鍵ですか?」
「これからわかるわよ」
車の鍵ではない。家鍵のようだった。
 真守の運転する車で乗り付けたマンションは、作りは少し古そうだったが、西洋のアンティークのような雰囲気がある建物だった。バブル期の名残なのだろう。機能美を追求する最近の建築には見られない空気がある。
 御神はうきうきした様子でエレベーターに入っていく。
「昨日に内見も含めて全部終わってたんだけど、どうしても今日欲しかったの。
だって、今日が独立した記念日なんだもの」
 御神は乙女の顔を見せながら、その手に入れたものが世俗とはかけ離れている点がさすがというところだった。
 マンションの一室に先程の鍵を差し込む。(そうか、不動産買ったのか)と真守は途方もない気持ちで受け止める。この上司は本当に稼いでいるのだ、と実感すると目の前に繰り広げられる遠くて近い現実が途方もない気持ちを呼び起こさせるのだ。
 そんな真守の気持ちなどおかまいなく「新しいカウンセリングルームよ!」と御神はまんべんの笑みで真守を迎え入れた。
 開いたドアの向こうに広がる設備に真守は目を見開いた。
「御神さん……これ……」
 広い部屋の中には、放射状に人が入れる大きさのカプセルが3点置かれている。
 ブラウン管テレビのような、初期のパソコンのような画面の後ろが分厚いモニターが部屋の角に柱のように立ち、そこから扇のように両壁に2つ。その中心にひとつのカプセルが設置してある。
 真守はそのカプセルが何であるかすぐに分かった。駆け寄って舐めるように確認する。透明なケースの奥にはヘルメットのような器具がついている。
 間違いなかった。
 最新の遊園地にしか置いてないバーチャルリアリティ装置だ。
視覚嗅覚聴覚味覚触覚
 すべての五感を仮想現実で再現することができるという触れ込みで何度もネットで流れてきていた。あるときは開発ニュースとして、あるときは遊園地の広告として。その度に(この装置でファンタジー世界を覗いてみたい)と考えずにいられなかった。ゲームをやったことある人間なら一度は夢見ることではないだろうか。元ひきこもりのゲーマーだった真守には垂涎の品である。
「これにゲームソフトは入らないわよ」
 見透かしたような御神の声に護は我に返った。
「何すか?これ?」
「言ったでしょう。カウンセリング装置よ。これで深層心理にアプローチするの」
 御神が言葉を続けようとしたところにチャイムが鳴る。
「時間通りね」
 御神は腕時計を確認する。
 御神はクレドールというブランドの時計を愛用していた。丈夫で薄くて正確で洋服に合わせやすいのだ、と前に自慢していたので真守もブランド名を覚えたのだ。
「見えないところにいて」と真守はまだ何も入っていないクローゼットに押し込められた。
 戸惑いはしたが逆らえない。女に逆らえない真守の因縁は今日も強く出ている。
 御神は誰かを案内している。
「大丈夫よ。隠したから」
と聞こえたので、別に存在することはいいらしい。御神に実は彼氏がいて、その彼氏が急に来たのか、と一瞬考えずにはいられなかったのだ。二人の話に聞き耳を立てたが相手の声は聞こえない。
「これからよろしくね」
と言ったと思うとクローゼットのドアが開いた。
「もういいわよ」
 1分ほどしか隠れていないのにもういいらしい。部屋の中には誰もいない。
「今のは誰ですか?」
「この装置のオペレーターよ。隣の部屋にいるわ。普通の会社の環境では働けないからうちに来てもらったの」
御神は、会社の「(使えない)人材再生」も業務のひとつとしていた。経営者が扱いに困っている人材を心理的やスピリチュアルなアプローチで会社に適応させるのだ。御神は「人材再生」に対して定評があり、「人材再生」で他と差別化することで仕事をもらっていると言っても過言ではない。
「新しいうちの社員なんですか?」
「いいえ。出向してもらってるの。誰にも見られない環境で、一人で静かで窓があって狭いところであれば際限なく力を出せる人だから」
 呪文のように続く条件に真守は「ハア」と返事とも何ともとれない声を出した。
 この相手に合わせた環境を見抜けるところが、御神が他を抜きん出ている能力なのだ。
 「使えない」と評される人々は、特別な環境や特別な支援がないと働けないことが多い。それを自覚している人は、普通の会社員であることに限界を感じ、フリーとなって自分に合った環境を手に入れようとする。
 けれど、自分の特性に気づかず、フリーになるような性格も能力も持てず、ただただ自分を責めてくすぶっている人の特性を見抜き、その人に合った環境を実現することで御神は実績を積み上げてきた。
 会社と人材の落としどころの見つけ方がうまいのだ。他の人では、社員が病気と診断されてしまったり、今のご時世では会社の制度の問題にされてしまいがちなところを健康に解決する。
 この御神の力は、経営者よりも再生された本人に喜ばれていた。再生した人間はたいてい御神を女神のように崇める。「新しい人生をありがとうございます」と手を合わせる。真守も表面にあまり出さないがその一人だった。
「説明が途中だったわね。この装置でお客様の深層心理にアクセスして心理的ブロックを破壊するの」
 真守は、説明を聞きながら体にまとわりついてくる不安を無視した。
 カプセルは3つ。被験者の深層心理を具現化した仮想現実の中に御神と真守が入って、現実世界では表面化もしないような心の奥深くに潜むブロックを壊す。理論はわかる。理論は。具体的に想像しようとすると真守の頭は拒否した。何も思い浮かばない。
「さっき来ていただいた佐保さんに外部からサポートしてもらってデータもまとめてもらうの。この臨床データをね、メーカーの研究機関に提出したらお金がたーくさん出るの。んふ」
 御神は、うっとりと説明している。金が出ない大学とではなく、ちゃんとお金を出してくれるメーカーと提携しているところが御神らしい。
 真守は常に同行しているわけではなく、御神が一人で行動することも多い。一人のときに着々と勧めていたのだろう。一番お金が出るところから出してもらうように道筋をつけたのだ。
「テストよ。入って」
と御神が問答無用の笑顔を浮かべてカプセルを指し示す。
「だめです」と男とも女ともとれない機械の声が割って入った。ブラウン管テレビのモニター部分にドット絵でロボットが映し出されている。
「被験者がいる場合での設定しかしていません。一人での起動は無理です」
御神は明らかに残念そうな顔をした。
真守の中で「実験台」「人身御供」「でも使ってみたい」という言葉がぐるぐる回る。
「あ、今の佐保さんなんですね」
気づくと間抜けな声が出ていた。
 なんとなくカプセルはAIが入っていてしゃべる仕様なのかと思っていたが、簡単な足し算だった。
0+1=1


 
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