Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 ! -36ページ目

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

少し遅いクリスマスプレゼント、少し早いお年玉。井出靖、初の自伝的単行本が素敵なミニトートに包まれ、彼の「Grand Gallery」から届いた。

 

『Rolling On The Road 僕が体験した東京の1960年代から90年代まで』とタイトルされた同書は5年を掛けて制作したメモを下敷きにしてnoteに掲載した井出靖のブログをベースに大幅に加筆したもので、出来上がりは四六判で381Pになるという大部の著作である。

 

少学生時代の1960代から40歳を迎える2000年の誕生日まで――少年時代、学生時代に体験した東京のロックシーン、実際にプロデューサーやアーティストとして関わった日本の音楽シーンが東京生まれ、東京育ちの彼によってリアルな筆致で描かれる。歴史の本を紐解き、予断や偏見、偏向や創作を含む、“学究”に基づいて書かれたものではなく、リアルを体感し現場の空気を吸ったもののみが書けるものである。装飾や虚構ではなく、事実を書き記す。そして、そのシーンの渦中にいたものだけが書けるリアルな物語が同書の中で展開される。井出はそれらを「東京で体験した景色」と呼んだ。

 

具体的な内容は公開されている60の物語とでもいうべき、目次を参照していただき、実際、読んでいただきたいが、いままで与太話を書き散らしていた方には退散いただく、新たな日本の音楽史の教科書の誕生と言っていいだろう。はっぴいえんど史観(別に同史観を否定するつもりはないが、それ一辺倒には危惧を覚える)が横行する日本のロックヒストリーに辟易としていた方には、我が意を得たりと、溜飲を下げ、合点がいくものではないだろうか。

 

いずれにしろ、熱狂の誕生の瞬間が生々しく書き留められている。やはり、渦中にいたからこそ、また、時間が経ったからこそ、書けるものと言っていいだろう。東京生まれで東京育ち、それも3代続く江戸っ子となると、俺が俺がみたいな変な自己主張もない。それが井出の奥ゆかしいいところだが、そろそろ、彼が“俺達”の代弁して、その思いを解き放ってくれるのを待っていた方も多いだろう。

 

 

また、井出がその活動の原点になっている「TRA時代」を語り合った伊島薫×ミック・イタヤ×井出靖によるTRAをめぐる座談会、そして、牧村憲一×近藤雅信×井出靖という希代のプロデューサーとの約30年ぶりのよもやま話も収録されている。その2つの鼎談も見逃せない。

 

詳しい紹介は刊行された後にでも改めて書くつもりだが、同書は日本の音楽の歴史の教科書だけでなく、生き方の教科書にもなるのではないかと、勝手に思っている。“生き様”と書くと、彼のイメージに相応しくないので、“生き方”に留めるが、彼の決断や判断、行動や活動に触れると、不思議と胸騒ぎがして、手に汗握り、熱いものが込み上げる。こんな時代に勇気や元気を貰える。同書でも書かれているが、彼は大きな病を経験している。彼は諦めることなく、時間をかけ、病と付き合い、克服している。何者でもないものが何者かになる。そんな物語は夢や希望に溢れる。読めば、彼からたくさんの“力”を貰うはず。いまからでも遅くないと言っておく。

 

事実、井出の活動は同書に書かれた40代以降も続き、来る2023年には63歳になるが、日本のみならず、世界へと繋がる。40代から60代へは同書の“PART2”を楽しみに待つしかないが、むしろ、彼の存在感はいまや急激に増していると言っていいだろう。同書を手に取る方はわかっているので詳述しないが、「THE MILLION IMAGE ORCHESTRA」や「Cosmic Suite 2」など、このコロナ禍にあっても世界を股にかけ、その活動は活性化している。世界的ダンスシーンでは絶大な信頼を誇る『magazine mixmag』(インスタフォロワー80万人)、その「mixmag asia」の2022年ベストアルバムに井出の新作『Cosmic Suite2』が1位になっている。また、この6月にドミューンで放送されたYasushi Ide「COSMIC SUITE 2 - NEW BEGINNING」Release Special&「キャロルと1970年代 ジャパニーズロックの成長期」第二夜。同番組にZOOMで出演したドン・レッツの井出への共感と連帯の言葉も心に残る。それが共同作業を可能にした。

 

本のタイトルの「Rolling On The Road 」は内田裕也の同曲から取られている。同題を書名に冠する際には、井出は当然ながら内田也哉子に許諾を取り、同書の巻頭に感謝を捧げている。そんな律儀さも彼らしい。また、同書はすべてのROCK'N’ROLL ADULTに捧げていると書かれている。この本は単なる成功物語を有難く拝読するものではなく、年齢を問わず、いかした大人になるためには必読ではないだろうか。2023年はROCK'N’ROLL ADULTが増えることを祈る。

なお、同書の編集は井出とも関わりが深く縁があった故・川勝正幸の川勝プロダクションの辛島いづみが手掛けている。井出靖は出会いを大切にする男でもあるのだ。

 

 

 

 

「Rolling On The Road 僕が体験した東京の1960年代から90年代まで」井出 靖

https://grandgallerystore.com/items/6381caf24292bf4ecdc42c88

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、JR高田馬場駅に降り立った。同駅の発車ベルは「鉄腕アトム」である。村西とおるの自伝的ドラマ『全裸監督』の原作者として知られる本橋信宏の『高田馬場アンダーグラウンド』を携えていた。鶯谷、渋谷円山町、上野、新橋に続く、「東京の異界シリーズ」の第5弾である同書には高田馬場駅前の巨大複合型ビル『ビッグボックス』のことを巨大な石棺と表現している。同ビルは1974年5月5日に建てられた。設計は黒川紀章。当時の駅前再開発の中心だったという。それから50年近く経つが、ランドマークとしては風前の灯ながら、そのビルはまだ、ある。飲食店やファッションフロア、アスレチッククラブ、サウナ、プール、ボーリング場……などが雑然と入っていた。そういえば同ビルにはビクターのイベントスペースもあった。同所のコンテストに参加したことが杉真理と竹内まりや、安部恭弘などがプロとしてデビューする契機にもなっている。慶応大学の音楽サークル「リアルマッコイズ」出身の彼らが早稲田のお膝元の高田馬場でプロになるきっかけを掴むと言うのも面白い話だ。ちなみに安部は早稲田大学出身である。

 

 

何故、高田馬場へ行ったのか。それは数日前、12月2日(金)に新宿ロフトで開催されたサエキけんぞう率いるジョリッツのサード・アルバム『妖しいビルディング』の発売を記念したイベント『ジョリッツ 妖しいビルディング』を見たことが契機だった。タイミングが合わず、配信で見ることになったが、その衝撃は鮮烈で、少なくても出不精(!?)の私を高田馬場まで誘うのだから相当なものだろう。

 

 

まずはそのライブの模様を簡単にリポートしておく。いきなりサエキけんぞうと、今回のアルバムジャケットの印象的なイラストを描いた“ロック・カルチャーを新しいフランス感覚のニュー・ウェイヴにインスパイアする画家”(プレスリリースより)、MASAHITO HIRANUMA(平沼正仁)がステージに登場。ジャケット談義などを繰り広げる。ビル群の中に現れる巨大な女性は、今年、公開された『シン・ウルトラマン』(監督:樋口真嗣 脚本:庵野秀明 音楽:宮内國郎・鷺巣詩郎)の巨大化した長澤まさみを彷彿させる。

 

ふたりのトークショー(!?)の後はオープニングアクトのXOXO EXTREME(“キス・アンド・ハグ エクストリーム”と読む。略して“キスエク”いうらしい)が登場。いわゆる今風のアイドルグループながらバックグランドは“プログレ”である。プログレッシヴ・ロックの楽曲を中心にパフォーマンスする「プログレッシヴ・アイドルユニット」と言われている。リリースイベントを「ディスクユニオン新宿プログレッシヴ・ロック館」(!)で行い、吉祥寺「シルバーエレファント」の対バンイベントにも出演している。フランスのプログレ界の至宝MAGMAの「The Last Seven Minutes」の公認カバー、金属恵比須とのコラボレーションでスウェーデンのプログレバンド、ANEKDOTENのカバー曲「Nucleus」をリリースするなど、アイドルながら後ろ指を刺されないマニアックな選曲(たかみひろしか、山岸伸一か!)でも知られる。

 

アイドルとプログレ、これが意外と取り合わせがいい。食い合わせは悪くない。食当たりなどもないのだ。XOXO EXTREMEには小嶋りんというヴァイオリニストがいるのだが、ちょっと、デヴィッド・クロスやエディ・ジョブソンを彷彿させる演奏者で、彼女達の歌劇的で情感溢れる歌に過不足なく嵌る。考えて見れば、古のアイドル、ザ・ピーナッツはクリムゾンの「エピタフ」をカバーしていた。

 

 

彼女達の世界を堪能しつつ、ステージが終わり、余韻に浸っていると、ジョリッツが登場。サエキけんぞう(Vo)、泉水敏郎(Dr)、吉田仁郎(G、Kb)、亀(G)、オカジママリコ(B)というフルメンバーにXOXO EXTREMEの小嶋りん(Vi)が加わる。サード・アルバムにして、初のフルアルバム(と、サエキはいっていたが、1stと3rdは10曲入り。2rdは11曲入りである。気分はフルアルバムということなのだろうか!?)『妖しいビルディング』の“全曲完全再現ライブ”が始まる。怒涛の勢いで同作からの新曲を観客に届けていく。サエキ自ら“ハルメンズの後継バンド”というだけあって、80年代のニュー・ウェイヴ・サウンドを2022年モードにアップデートした最新型のニュー・ウェイヴ・サウンドを聞かしてくれる。80年代のイケイケ感を再現するには無理があるが、むしろ、バブルが崩壊することを知っているがゆえの崩壊へ向かう疾走感が2020年代的であるといっていいだろう。勿論、80年代ニュー・ウェイヴが何でもありのように、40年の時を経た手練手管の産物とでもいうべきものを自らの音に纏わせる。いい意味でのごった煮が今日的というべきか。

 

また、同作のタイトルトラックである「妖しいビルディング」の誕生の契機が吉田仁郎の慶応大学のお膝元、神奈川の日吉から高田馬場への引っ越しであることに深い興味を抱いた。同所に実在する「妖しいビルディング」との出会いが曲作りのきっかけになったという。そこにはアジアの食料品店や妖しいスナック、謎めくガールズバー……などが雑然と入居している。何故か、“ビザ発給”(普通の店舗でビザは発給できるのか、不思議である)を謳ったところもあったそうだ。そんな衝撃や刺激をモチーフに歌が生まれている。単なる東京の異国情緒を歌ったというものではなく、むしろ混じり合い、玉石混交されることで、その混沌や混乱の度合いは深まっている。そんなものをそのまま、題材として、活写するのもニュー・ウェイヴ的といっていいだろう。

 

さらに泉水敏郎が作り、『ハルメンズの近代体操』(1980年)に収録され、泉水のソロアルバム『ライフ・スタイル』(1984年)でもカバーした「ライフ・スタイル」をジョリッツ流に仕上げ、さらに最先端、最新版を入れるところも彼らなりの拘りを感じさせる。泉水による“世紀末に来るべき新世紀のあけぼの”というフレーズは不思議なことに、いまと言う時代にも嵌る。

 

音響的にも『妖しいビルディング』は今までにP-MODEL、平沢進、戸川純などを手がけた吉祥寺の「GOK SOUND」(残念ながら同所は2022年をもって閉鎖された)で、アナログ・リズム録音を行うことで画期的な太いドラムベース音を得ているという。マスタリングもゆらゆら帝国などを手掛ける中村宗一郎が務めたことでアナログサウンドとデジタルサウンドの新たな融合により“ニューウェイヴポップスの新機軸”となっているという、自信満々の仕上がりだ。

 

勿論、歌詞や曲、演奏や歌唱だけでなく、音の塊そのものが私達を心地良く、マッサージしてくれる。心と身体の洗濯だ。

 

『妖しいビルディング』の収録曲を全曲披露した後は、「スワイプメン」,「STAP トゥギャザー」(『ジョリッツ登場』2017年)や「ジョリッツ・ウォンチュー」(『ジョリッツ暴発』2018年)など、お馴染みのナンバーが披露され、再び、「妖しいビルディング」で締める。

 

 

圧巻のライブである。“電車でGO!”どころか、“ロケットでFLY!”くらいの勢いがある。ベテランニュー・ウェイヴァーのサエキと泉水を吉田、亀、オカジマというハルメンズチルドレンが支え、小嶋という異分子がいい意味で火に油を注ぐ。配信視聴ながら何か、ロケットに一緒に乗り込んでいるような疾走感(と言うか、飛翔感)がある。気を抜いていると振り落とされそうになるのだ。その高揚感は半端ではない。新型ウイルスや戦争など、気落ちするようなことばかりで、この世の中はままならないが、ジュリッツの「ニュー・ウェイヴ」は“希望の矢”となり、聞くものの心と身体を射抜いて見せる。

 

『妖しいビルディング』のCDの帯には“ブラン・ニューウェイヴ!”とある。この新しい妖しさはただものではない。不滅のニュー・ウェイヴ魂を持つジョリッツだからこそ、なし得た快挙ではないだろうか。パール兄弟や二人パール兄弟、ハルメンズXなどもいいが、ジョリッツにも注目してもらいたい。おそらく、いまの東京の異界を描かしたらジョリッツは天下一品だろう。

 

 

前述通り、そのライブから数日後、私は高田馬場にいた。勿論、“妖しいビルディング”探しである。『silent』の「世田谷代田」ではないが、「高田馬場」へ“聖地巡礼”である。ライブを見た方で新宿から高田馬場へと言う方もいたのではないだろうか。

 

果せるかな、それらしいビルはたくさんあった。実際、写真も撮ったが、余計なトラブルを避けるため、未掲載にさせてもらう。予備校とエステサロン、怪しげなバーが平然と並ぶなど、以前から妖しいところだとは思っていたが、ここにきて増殖しているようだ。確かにこのところ、海外との行き来は停滞していたが、自由に行き来するようになれば、その妖しさの濃度は濃くなるかもしれない。それにしても同じ東京でも新宿ではなく、池袋でもなく、高田馬場であること。流石、目の付けどころが違うのだ。

 

ちなみに本橋信宏の『高田馬場アンダーグラウンド』にも“今日(こんにち)”を予見させるものがある。私の高田馬場体験だが、遥か、昔、30数年ほど前に遡る。サエキけんぞうなどとも被ってくる。同書にも出てくる“ヘアバレー”から生まれた白夜書房で『日本ロック大系』(上下巻)の制作に関わったことがある。サエキけんぞうを始め、篠原章、黒沢進、高護、中村俊夫……など、錚々たる面々が執筆陣に参加した日本のロック史を編纂した大著である。実は同書は難産で、打ち合わせから出版まで4年掛かっている。人数が多い分、なかなか、進まず、打ち合わせなどで同社に集まる(廊下にバスタブが普通に置いてあり、驚いたものだ。多分、ヌード撮影用!?)ものの、気づくと、打ち合わせが飲み会になっていると言う”松本隆とムーンライダース”状態(笑)。いまとなってはいい思い出だが、来る2023年1月、サエキけんぞうはいとこの篠原章と、はっぴいえんどの原風景を描いた『はっぴいえんどの原像 』(リットーミュージック)を上梓する。サエキは“東京”の「風景」に拘る。ただ、書き留めるだけでなく、表皮を剥がして、深掘りして、未来を見せる。ジョリッツの活動もそんな表現活動の一環だろう。そういう意味では彼はくねくね、マニュマニュしながらも首尾一貫している。だから、信用できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョリッツ「妖しいビルディング」

 

1.妖しいビルディング

2.ドンPEELオフ

3.エモりゅーしょん

 

MC

4.DUByou

5.鼓動にダーツ

 

MC

6.BLooMER

7.ジョリッツ出現

8.ライフ・スタイル

 

MC

9.愛しさ分解オーバーロード

10.モアザンモア3°

 

<ここまでアルバム「妖しいビルディング」再現>

 

11.ホウダウン~ジョリッツ・ウォンチュー

12.フリートーキング

13.スワイプメン

14.ラブ・イズ・ガービッジ

15.すり砕く

 

アンコール

1.STAP トゥギャザー

2.妖しいビルディング

 

 

ジョリッツ「妖しいビルディング」

12月2日(金)新宿ロフト OPEN 18:00 / START 19:00

 <出演>

 ジョリッツ(サエキけんぞう、泉水敏郎、吉田仁郎、亀、オカジママリコ)

 XOXO EXTREME

 

 

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/230527

 

 

※配信は既に終了しています。参考のため、URLを掲載しておきます。

 

 

ジョリッツ「妖しいビルディング」セルフライナーノーツ

 

 

いい歌詞がある、いい曲がある、いい歌がある――三拍子が揃っている。いわゆる名曲と呼ばれるものの条件だろう。それが隠れた名曲ではなく、誰もが知る名曲になるには、いろいろと条件が揃うことも必要である。時代の気分や社会の状況なども影響されることもあるだろう。私が敬愛する音楽業界の先輩で宣伝プロデューサーだった“ブルーベリー男爵”(私が勝手につけた愛称で、埼玉のときがわ町のブルーベリー大福が好物ということから命名した。敢えて名前は出さないが、“胸キュン”の発案者としてお馴染みの方だ!)は、その魅力をちゃんと伝え、遍く知らしめるものがいなければ“ヒット”しないと言う。当然である。作りっぱなしでは駄目だということ。勿論、ヒットという結果がでなくても人々の心に残り、歌い継がれるものもたくさんある。

 

そんなことを改めて思ったのは、この10月に行われた山下達郎と山下久美子のライブを見たからだ。山下達郎はリアルで、山下久美子は配信で見た。両ライブでは山下達郎の希代の名曲「シャンプー」を聞くことができた。同じ週に二人の山下の同曲を聞けるなんて、僥倖だろう。「シャンプー」は山下達郎が山下久美子の事務所の先輩、アン・ルイスの1979年のアルバム『PINK PUSSY CAT』をプロデュースした際に書き下ろしたものである。山下達郎自身もアルバム『POCKET MUSIC』(1986年)でセルフカバーした。

 

山下久美子はサードアルバム『雨の日は家にいて』(1981年)で同曲をカバーしている。その経緯や後日談はブルーベリー男爵のFBのタイムラインに書いてある。彼のエントリーは膨大な量なので、探すのは大変かもしれないが、読んでみることをお勧めする。流石、ナベプロである。義理や礼節は欠いてない。

 

 

 

曲(山下達郎)や詞(康珍化)の経年劣化しない「シャンプー」の地肩の強靭さ、体幹の強固さを再確認する。勿論、山下達郎、山下久美子という天下一品の声を持つ歌い手が歌うからこそだろう。その歌に酔いしれるという感じだろうか。二人が歌い継いでくれることで、日本の歌謡界に残る名曲をいまもリアルなものとして聞くことができる。嬉しい限りである。

 

その日、山下達郎は「シャンプー」に続いて、鈴木雅之に提供した「おやすみ、ロージー -Angel Babyへのオマージュ-」を歌った。同曲は山下達郎がプロデュースした(当初はアルバムの5曲を担当する予定だったが、時間切れ、予算超過で3曲のみになっている)鈴木雅之のセカンドアルバム『Radio Days』(1986年)に収録されている。山下達郎のセルフカバーが3枚組ライブ・アルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』(1989年)にも収録された。

 

当然、山下久美子は「おやすみ、ロージー -Angel Babyへのオマージュ-」を歌っていないが、ちょっとした縁みたいなものを感じている。実は、鈴木雅之のソロデビュー・アルバム『mother of pearl』(1986年)は大沢誉志幸(現・大澤誉志幸)がプロデュースした。同作には希代の名曲と言われるソロデビュー・シングル「ガラス越しに消えた夏」が収録されている。いうまでもなく、大澤は山下久美子に「時代遅れの恋心」や「こっちをお向きよソフィア」、「ちょい待ちBabyなごりのキスが」など、数多、名曲を提供し続けている。

 

山下達郎と大澤誉志幸――山下だけ、大澤だけならあるかもしれないが、二人から曲を提供された歌手は山下久美子と鈴木雅之ぐらいではないだろうか。「シャンプー」に関しては“提供”とは若干、ニュアンスが違うだろうし、他にも提供された歌手はいるかもしれないが(ご存知の方がいたらこっそり教えて欲しい。こっそり直す!)、いまのところ、山下久美子と鈴木雅之の二人しか、思い浮かばない。

 

 

いい歌詞といい曲がいい歌手のところへ……不思議なことに来るべきところへ転がり込む。幸せな関係と言っていいだろう。山下久美子と鈴木雅之、2015年に東京国際フォーラムで行われた作詞家・松本隆の作詞活動45周年を記念したコンサート「風街レジェンド」で同じステージに立っているものの、ツーマンライブみたいのはないのだろうか。誰かご存知の方、いたら、教えて欲しい。新宿ルイードの先輩・後輩なので、あってもよさそうだ。山下久美子をデビュー時に担当していた福岡智彦の書いた記事を見ていたら、彼女のデビュー時にアマチュアだったシャネルズをコーラスに起用するというアイデアがあったそうだ。実際、福岡が鈴木に直接、電話して依頼をしたが、断られたという。もし、実現していれば、それはそれで面白いものになったのではないだろうか。いずれにしろ、二人とも名曲を歌うべき名歌手ということ。いつか、山下久美子と鈴木雅之が大澤誉志幸の名曲を歌う“ふたりのビッグショー”も見たいものだ。

 

 

 

改めて、この日、山下久美子が歌った大澤誉志幸や山下達郎以外の作家を抜き出す。「秋ラメきれないNight Movie」(作詞:銀色夏生・作曲:筒美京平)、「LOVERステッカー」(作詞:銀色夏生,作曲:亀井登志夫)、「星になった嘘」(作詞:竹花いち子・作曲:亀井登志夫)、「So young」(作詞・作曲:佐野元春)、「夢の外がわ」(作詞:下田逸郎・作曲:大村憲司)、「笑ってよフラッパー」(作詞:竹花いち子・作曲:村松邦男)……など、綺羅星の如く、豪華なソングライター陣である。いい歌詞やいい曲がいい歌手、山下久美子のところへ集まって来る。度々、指摘していることだが、プロデュースワークの確かさと、これだけの曲を呼び寄せる山下久美子というアーティストの引きの強さを再確認する。

 

 

山下久美子自体、唯一無二の存在で、いま流行りの“シティポップ”の文脈で熱く語られることはあまりないが、この日の曲達の佇まい、意匠は洗練され、かつ、お洒落なポップスそのもの。バンドの演奏自体もそれを意識して、寄せてきたわけではないが、曲や詞そのものが持つ情感が引き出され、大人が奏でるシティポップになっている。秋の装いという感じだろうか。とてもモード的である。

 

思い切り、曲達の風味や滋味を味わい尽くしたら、後半は一気に「A SILVER GIRL (ずっと昔から)」(作詞・作曲:佐野元春)や「SINGLE」(作詞:竹花いち子・山下久美子・作曲:布袋寅泰)、「Stop Stop Rock'n Roll」(作詞:山下久美子・作曲:布袋寅泰)など、アッパーなナンバーを畳みかけ、パーティモードに突入。弾けるようなロックンロールを堪能させてくれる。弾けつつもどこか、大人の風情を醸す。シックなレザージャケットが40年後の“総立ちの久美子”に相応しい。FBでのブルーベリー男爵との再会以来、山下久美子のライブの感想を書き留めることが“習慣”(!?)になってしまったが、ライブを見る度に新たな発見がある。尽きないアーティストと言っていいだろう。

 

明日、12月10日(土)はお馴染み、汐留BLUEMOODにて、限定ライブ&生配信ライブで、“KUMIKO YAMASHITA Xmas Special Live” 山下久美子 One Step Closer with Smile♡

“Thank you for Lovin me”《Sweet Rock’n Roll Live! 2022 at Blue Mood 》が行われる。一足早いクリスマスを楽しんでもらいたい。

 

 

https://kumikoyamashita.com/archives/2969

 

 

 

 

2022.10.15(sat)

山下久美子One Step Closer with Smile♡

☆「秋ラメきれないNight Movie・・♡」☆

《Sweet Rock’n Roll Live! 2022’at Blue Mood 》

限定ライブ & 配信ライブ

 

山下久美子 with Band:

G:後藤秀人 / Key:伊藤隆博 / B.千ヶ崎学 / Dr.椎野恭一

 

BLUE MOOD/ライブハウス&レストラン

https://blue-mood.jp/

 

 

2022.10.15 BM 秋ラメきれないnight movie

☆01.秋ラメきれないNight Movie

☆02.LOVERステッカー

☆03.ちょい待ちBabyなごりのキスが

mc

☆04.So young

☆05.珍しいほどスウィート ラブ

☆06.シャンプー

mc

☆07.バスルームから愛をこめて

☆08.LOVIN YOU

 

(fresh air in)

 

☆09.抱きしめてオンリーユー

☆10.時代遅れの恋心

mc

☆11.夢の外がわ

☆12.ナチュラルハイジャンパー

☆13.マラソン恋女

mc

☆14.A Silver Girl

☆15.SINGLE

☆16.笑ってよフラッパー

 

En

 

☆17.星になった嘘

☆18.Stop Stop Rock'n Roll