80年代の坂本龍一と時空を超えた夢の競演――大貫妙子『ピーターと仲間たち2024』 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

 

 

大貫妙子は“今年初めて「フジロック」に出演します。漸く、私は(中身が)ロックだって、気づいてもらった”と、嬉しそうに語る。「フジロック」には、フェビアン・レザ・パネ(ピアノ)、鈴木正人(ベース)、坂田学(ドラム)、伏見蛍(ギター)、網守将平(キーボード)、toshi808(シークエンサー)という、この日、7月9日、月曜日に東京・六本木「EXシアター六本木」で開催された『ピーターと仲間たち2024』(同コンサートは7月3日、水曜日に東京「恵比寿ガーデンホール」と6日、土曜日に大阪「Zepp Namba」でも開催されている)に出演したバンドで出るそうだ。きっと、受けること、間違いない。

 

大貫妙子と言えば坂本龍一。彼が他のミュージシャンのために手掛けた作品の中で、その代表作と言えば大貫妙子との仕事だろう。いつの間にか、“シティポップの名盤”になった『SUNSHOWER』(1977年)やイエロー(当時、大貫はYMOのことをイエローと呼んでいた)全面参加の『ROMANTIQUE 』(1980年)、坂本とジャン・ミュジーが手掛け、“ヨーロッパ3部作”の集大成と言われる『Cliché』(1982年)、坂本が1985年のアルバム『copine』以来、12年ぶりにプロデュースをアート・リンゼイとともに担当した『LUCY』(1997年)、“ヨーロッパ3部作”の生みの親である牧村憲一が手掛け、札幌の芸森スタジオで録音された大貫妙子 & 坂本龍一の名義の共同制作アルバム『UTAU』(2010年)……など、名盤、名作は数多い。

 

今回は坂本とのコラボレーション曲を中心に当時の音源をマスターから抜き出し、一部はそのまま使用して、坂本から後継指名された東京藝術大学の後輩、網守将平とシークエンサーを操るtoshi808によって完全再現されている。80年代の大貫妙子の代表曲と言われる「カイエ」や「ピーターラビットとわたし」、「幻惑」、「CARNAVAL」、「色彩都市」、「ベジタブル」などがセットリストに並ぶ。勿論、「ぼくの叔父さん」や「地下鉄のザジ」、「Happy-Go-Lucky」など、チャーミングなナンバーも顔を揃える。さらに2022年にアナログシングルとしてリリースされた、高橋幸宏がドラムスを叩いている「ふたりの星をさがそう」(カップリングは同じくこの日、演奏された「朝のパレット」。同曲は林立夫がドラムを叩いている。編曲はともに網守将平)も披露された。

 

セットリストに「横顔」や「突然の贈りもの」、「新しいシャツ」、「若き日の望楼」など、お馴染み(人によって、いろいろあるでしょうが)のナンバーはないが、何故か、不満はない。坂本などのオリジナル音源や編曲を生かしたこのセットがたまらなく、心地良いのだ。むしろ、この潔さこそ、大貫妙子らしいと思える。「突然の贈りもの」で泣きたい気持ちはこの日、発表された11月30日(土)に昭和女子大学人見記念講堂で開催される「シンフォニック・コンサート2024」まで、待つことにしよう。

 

改めて坂本が編曲を手掛けた作品群を目の当たりにすると、その音圧と轟音に心と身体を奪われる。目の前で展開される出音は、まさにロックしていると言っていいだろう。テクノポップ的ではあるが、こわれもの的な引っ込み思案なものはなく、その音には太い幹や芯があり、実に堂々としている。時には暴力的に聞こえるところもある。30年以上過ぎて、坂本龍一の時限爆弾的な仕掛けに驚く。メンバー紹介を挟んだ「CARNAVAL」はシンセサイザーやギターのうねりや叫びが“六本木ピットイン”のようだ。網守のシンセが坂本龍一、伏見蛍のギターが大村憲司に“空耳”で聞こえてきてしまう。

 

勿論、大貫の声が合わさって、それは可憐にも優雅にも聞こえる。大貫は歌いながらその音を浴び、喜んでいるようだ。当然、聞くものを笑顔にする。いきなり指が痙攣したり、マイク(実際はイヤーモニターらしい)の設定がちゃんとできない、説明不足の告知、クシャって笑うところなど、完璧でないところも実に魅力的である。。

 

『LUCY』に収録された「Rain」を歌う時、リドリー・スコットが監督した映画『ブレードランナー』のラストシーン、ルトガー・ハウアー演じるレプリカントが雨の中、息絶えていくところをイメージして作ったと語っていた。そんな映像的な情報量があるのも彼女の作品だろう。ジャック・タチやルイ・マルを彼女の作品を通して知ったという方も多いのではないだろうか。

 

大貫妙子にはたくさんのドラマを見させてもらった。青春時代を彼女と過ごした方がこの日もたくさん来場されていた。同時代のファンだけでなく、シティポップブームなどもあって、後追いから聞き出したと思しき若い方もいらしていた。大貫妙子は1953年11月28日生まれ。東京・杉並出身。現在は神奈川在住である。誕生日は原田知世と一緒である。職業柄(!?)、何故か誕生日などはいまだに林家ぺー状態で、すんなり出てくる。現在は70歳である。彼女に“古希”という言葉は似合わないが、時代や世代を超えて、多くの方に支持され、新たなファンを国内外問わず、生み続けている。これは稀有なことではないだろうか。30年前に聞いて、彼女を見つけた方は誇るべきだろう。俺の目に狂いはなかった、と。

 

80年代の作品リリーズ時にも数多コンサートを見てきたが、この古くて新しい方法から冒険と実験の時代を想起し、先人達の労苦と感動を再確認する。決して天賦の才だけではなく、学習や努力の賜物のようにも感じる。以前、加藤和彦が“30代は40代のための保険のようなもので、30代をどう生きるかで、40代が決まる”というようなことを言っていた。記憶が曖昧で正確な引用ではないが、無為に過ごしてはいけない。その小さな一歩が明日への大きな一歩になるということだろう。当時、音楽を通して、いろいろ教えて貰ったことを思い出す。

 

時代を超えた夢の競演。最近、そんなことが多いように感じる。以前、PANTAは“音楽は死なない”と言っていたが、その言葉に嘘はなかった。その音楽がそのミュージシャンを生き返らせる。

 

前述通り、11月にはオーケストラと共演するシンフォニック・コンサートが開催される。“ピーターと仲間たち”を聞いた耳で聞くと、また、趣きが違って聞こえてくるかもしれない。久しぶりと言う方もいると思うが、いま、彼女は素晴らしい音楽家に囲まれ、何度目かのピークにある。見逃さないで欲しい。勿論、7月26日(金)から28日(日)に新潟県湯沢町苗場スキー場で開催される「FUJI ROCK FESTIVAL'24」(大貫の出演は7月26日の金曜日の“WHITE STAGE”)も体力があり、都合がつけば是非、行ってもらいたい。報告を楽しみに待っている(と、他人行儀で申し訳ない!?)。

 

なお、大貫妙子の“ヨーロッパ3部作”など、その作品作りに関わった元RVC、MIDIの音楽プロデューサー宮田茂樹を追悼するイベント「宮田茂樹さん3回忌に彼の音楽世界を伊藤銀次さんと振り返る」が伊藤銀次をゲストに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■公演名:大貫妙子 シンフォニック・コンサート 2024

 

■出演:大貫妙子

指揮:佐々木新平

管弦楽:グランドフィルハーモニック東京

■日程:2024年11月30日(土)

16:15 OPEN/17:00 START

■会場:昭和女子大学 人見記念講堂

東京都世田谷区太子堂1-7-57

https://hall.swu.ac.jp

■チケット料金:全席指定 12,000円(税込)

■チケット枚数制限:4枚

■年齢制限:未就学児童のご⼊場はお断りさせて頂いております。

■注意事項:

※チケットご購入の際には、ご自身の体調や環境をふまえご判断くださいますようお願いいたします。

■チケット予約先行:キョードー東京チケットオンライン

□受付期間(先着):2024年7月10日(水)12:00〜2024年7月26日(金)23:59まで

□受付URL: https://tickets.kyodotokyo.com/onukitaeko2024sc_hp

■お問合せ:キョードー東京 TEL:0570-550-799

 オペレータ受付時間 (平⽇11:00〜18:00/⼟⽇祝10:00〜18:00)

 

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