紫陽花咲く、飛鳥山公園であがた森魚と「ラストタルホピクニック」と「フリーコンサート」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

■2024年6月16日、日曜日の印象Ⅱ

 

 

藤本国彦と本橋信宏『アンダーグランド・ビートルズ』発売記念トーク&サイン会を途中で抜け出し、高田馬場から王子へと急ぐ。午後1時30分から王子の飛鳥山公園(徳川吉宗や渋沢栄一の縁の地で、春は桜の名所として知られる)で、あがた森魚の「タルホピクニック」の最終回(!?)「ラストタルホピクニック」と、その後、2時30分から同公園の飛鳥山公園野外ステージ「飛鳥舞台」で「フリーコンサート」がある。このところ、足繁くというほど、通ってはいないが、ここ数年の彼の動向や音楽から目が離せないでいる。はちみつぱいとのコンサート(2017年7月1日のメルパルクホールで開催された共演アルバム『べいびぃろん(BABY-LON)』発売記念ライブ)、2022年9月22日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催された「あがた森魚 『50周年音楽會 渋谷公会堂』」も見ている。本2024年3月1日(金)、5月3日(金・祝)に原宿「クロコダイル」で吉田晴彦とSNARE COVERが主催したトークイベント「JAPANESE ROCKの夜明けから未来へつなぐもの」 に出演した際にも見ている。その度、衝撃を貰っているのだ。

 


「タルホピクニック」はあがたがコロナ禍の2020年6月に始めた、北区・王子の飛鳥山公園で楽器を持って練り歩くイベントである。この日は「タルホピクニック」が2024年6月で4周年を迎えるが、知らぬ間にこの日が最終回になった。初参加が最終回とはタイミングが悪いが、その後にはフリーコンサートもある。行かないわけにはいかない。おまけにその前は高田馬場にいる。高田馬場から王子へはJRや東京メトロで20分ほど、この前の予定が高田馬場というのもご縁みたいなものだろう。

 

 


待ち合わせ場所(飛鳥山モノレール「あすかパークレール」の「公園入口駅」)には待ち合わせ時間を10分ほど過ぎて到着(間違えて王子駅から山頂駅へ行ってしまった)すると、係の方が声をかけてくれ、既に練り歩きは始まっていて、紫陽花の小径を進んでいるという。その小径を行くと、紫陽花が咲き誇り、花の写真を撮る家族連れも少なくない。練り歩きの参加者はギターやウクレレ、パーカッション、エフェクターなど、思い思いの楽器を持って練り歩く。あがたはアコースティックギターを抱え、参加者を先導していく。好き勝手に演奏しているようで、脇を固める方がちゃんとリズムキープしている。アンビエント的なラジオノイズなども曲に合わせて、ぶち込んでくる。自由参加の人達も調子っぱずれのノイズを発しているようでいて、それらが何か、ひとつになっていく。特に歌詞はわからないが、それらはシュプレヒコールやエールとなる。晴天の青空へ吸収される。あがたは参加者(主催者発表何名とか、わからないが、想像よりも多く、のべで300名はいたのではないだろうか。あがたによると、最終回ということで、全国から仲間が駆け付けたらしい)を先導していく。JRの線路を跨ぐ橋を練り歩き、そこから公園と入っていく。遊園地になっている。小高い丘や都電などを出入りする。炎天下の中、ライブ会場になるステージに向かって、蛇行しながら、上り下りしながら練り歩いていくのだ。ステージに到着したのは1時間後くらいか。飛鳥山公園を年齢も職業も不詳の異形の者たちが行進していく。その姿はまるで寺山修司やフェデリコ・フェリーニの映画や舞台のようでもある。しかし、不思議なことに公園で遊ぶ子供達や家族達、老人達からは浮いていない。気づくと、新たに加わるものもいる。飛鳥山には、そんな包容力があるのかもしれない。

 


ステージにあがたとバンドメンバー(!?)が上がる。1時間、練り歩いたにも関わらず、休憩はなしで、そのままフリーコンサートになる。あがたは齢75。その体力、恐るべし。流石、楽器を持って練り歩く、トレーニング(!?)をしているだけある。こちらは楽器も持たず、ただ、後に付いていっただけなのにヘロヘロである。水分補給も既に炭酸水とスポーツドリンク、ペットボトル2本分を摂取しているのに汗はかき、喉は乾く、足腰も辛くなっている(完全な運動不足。情けない)。
ステージには50周年の渋公でもあったロケット基地があり、渋公やクロコダイルでもあったペーパーを使った演出もしている。最新作『遠州灘2023』を彷彿させるアンビエントな音響の中、あがたの歌が歌われる。その歌にはステージからだけではなく、客席などからは応援の音が被さる。反響し、共振していく。まるで飛鳥山公園を使った壮大な社会実験のようにも思える。炎天下で聞く、「赤色エレジー」、「大道芸人」、「俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け」は格別だ。録音されたものとは異なる趣きが加わる。「フリーコンサート」は1時間ほど、続いたが、誰も離脱することなく、完走している。誰もがやり切ったという顔をしてる。体力的には大変だったが(かなり高齢の方も参加していた)、誰もがいい笑顔をしている。

 


ここで一応(!)、お開きになるが、「フリーコンサート」が終わっても練り歩きは続く。ステージ袖に移動して30分ほどの休憩は取るが、今度は飛鳥山公園の対岸にある水無川公園(音無親水公園)へ練り歩くという。歩道橋を渡り、一般道の歩道を通り、同所を目指す。ただ、歩くのではなく練り歩く。一般道を大人数で通る。許可などが必要か、不必要かわからないが、特にトラブルもなく、水辺の公園へと至る。水無川とあるが、ちゃんと、水はある。川は流れている。石神井川の旧流路に整備された公園で、もみじやさくら、水車、公園を横切るアーチの橋などが見どころ。日本の都市公園100選にも選ばれているらしい。水辺と言うことで涼が取れる。あがたと参加者は涼みながらも音を止めない。本当に頭が下がる。音楽を旅とするものの強さかもしれない。

 


実はあがたを改めて意識しだしたのは、数年前に東北のとある蕎麦屋で彼のポスターを見かけたこと。店主に聞くと、そこでライブを行ったという。山奥だったが、そんなところまで、足を運び、歌を届けようとする。その姿勢に頭が下がった。有言実行の人である。とりあえず、そこでお開きになるが、2時間後には公民館で打ち上げがあるという。そこで本当のあがたが見れるかもしれないと、スタッフは脅かしてくる(笑)。申し訳ないが、体力の限界、そこで失礼させてもらった。
あがた森魚がしていることは娯楽か、余興か、実験か、冒険か、運動か――はわからないが、あがたはいつも新しい世界を見せてくれる。 それだけは確かだろう。75歳のロックンローラーは私達にいろんなことを教えてくれる。
「ラストタルホピクニック」と銘打たれていたが、しれっと、1か月後には再開しそうだ。その時は是非、駆け付けて欲しい。猛暑の時期には水分補給と帽子、サングラスなどは忘れずにしてもらいたい。あがたのピクニックはハードである。私も今度、機会があれば倉庫に眠ったままのアンプ付きのミニギターを持って参加したい。

 


https://pic.twitter.com/haOSZ2veEk