ゴダイゴが旅をする理由――「西遊記」40周年記念-THE GREAT JOURNEY 2018- | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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 満員御礼、大入り袋も出たという。会場の東京・上野の東京文化会館大ホールは1階から5階まで、すべての席が埋まる。その景色は壮観だ。それだけでもここ数年間、ゴダイゴが積み上げてきたものの成果を感じる。

 

2017年の“『Dead End』完全再現ライブ”(『Godiego Concert 2017Dead Endから40年~』)の熱気が全国に伝播、ゴダイゴ再評価の機運が盛り上がり、新たな観客層の増加がもたらしたものと感じている。私自身、同公演の模様をリポートしたが、その反響は大きく、実際に手応えも感じていたのだ。

 

422日(日)に東京文化会館大ホールで開催された『ゴダイゴ with premium stringschoir -THE GREAT JOURNEY 2018-』は誰もが知る国民的なヒット・アルバムにして、日本の音楽史に残る名盤『西遊記』のリリース40周年記念公演、ストリングス(billboard classics premium strings )、クワイヤー THE SOULMATICS, TSM GOSPEL ENSEMBLE)、ゴダイゴホーンズ、サポート・キーボードの竹越かずゆき、そしてゴダイゴという総勢約100名におよぶ大舞台。基本的に2016年のデビュー40周年を記念した『Godiego with billboard classics premium strings 2016』の“再演”で、曲目、曲順なども一部を除き、重複している。

 

しかし、それは、ただの再演ではない。2年間の冒険と挑戦の成果とともに不断の努力、研鑽が成しえたもの。ミッキーによると、本公演の前にリハーサルを繰り返し、度々、修正点を指摘したという。常に楽曲の進化と深化を怠らない。それこそがゴダイゴの真価というもの。

 

2016年の公演は当然として、2007年から2009年まで東京・池袋の東京芸術劇場で開催された“TOKYO新創世紀”シリーズなど、ストリングスやクワイヤー、ブラスアンサンブルなどとの共演を見ているが、おそらく、今回の公演がその頂点ではないだろうか。当たり前だが、それらが添え物やお飾りではなく、攻め合い、対峙しつつも共鳴し、共振し合う。ストリングスやクワイヤーがそこにいることに必然性がある。ロックとオーケストラの共演などというと、古のロック史を遡ることになるが、ディープ・パープルもプロコル・ハルム、EL&P、リック・ウェイクマンも“実験”でしかなかったことを感じさせてしまう(ただし、プロコル・ハルムの2006年のデンマーク公演は除く。youtubeに動画あり!)。

 

ストリングスやクワイヤー、ブラスのアンサンブルの中をミッキーのピアノが縦横無尽に泳ぎまくる。改めて、ピアニストとして、キーボーディストとしての力量に感服。「Piano Blue」のジャジーなタッチなどは出色の出来映えである。

 

当然の如く、浅野孝已やスティーブ・フォックス、トミー・スナイダー、吉澤洋治などのインストゥルメンタルの演奏者としての確かな力量は言うに及ばず。トミーは「 Weve Got To Give The Earth A Chance」(地球を我が手に) 1999年のゴダイゴ再結成アルバム『ホワット・ア・ビューティフル・ネーム』収録のトミーとタケカワの共作曲)、『Guilty』(アルバム『FLOWER』収録曲。トミー作詞)では“和もの”を超えるシティポップなヴォーカルを聞かせ、タケカワのヴォーカルは最初から最後までぶれることも揺らぐことなく、たゆたうようなうねりのあるタケカワ節を堪能させてくれる。

 

吉澤を加え、 “ロクダイゴ”と通称されている彼らだが、私は竹越を加え、“ナナダイゴ”と通称したい。それだけ、竹越の演奏や歌唱によるサポートは単なるサポートを超え、新生ゴダイゴに新たな魅力を加味している。いまや、必要欠くべからずの存在感を放つ。いまのゴダイゴは“ナナダイゴ無双”状態であると言っていいだろう。

 

当日は、いわゆる国民的なヒット曲だけでなく、ゴダイゴの隠れた名曲までも披露している。ある意味、ゴダイゴの魅力は「Gandhara」や「Beautiful Name」、「Galaxy Express 999」などだけではないことを自ら証明するかのようでもあるのだ。「Pomp And Circumstance」(威風堂々)からいきなり始まったのは2016年同様、度肝を抜かれたが、また、「Somewhere Along The Way」(あの頃)を演奏してくれたことが嬉しかった。同曲はタケカワのソロ・アルバム『LYENA(レナ)』(1980年)のヴァージョンが有名だが、ゴダイゴのブレイク前のステージでは知る人ぞ知る名曲として愛されていた。元々はあおい輝彦に「サヨナラ・マイ・ラブ」として提供され、ミッキー吉野が音楽を担当したNHKドラマ『男たちの旅路』の劇中でも“人気ロックグループ”として、演奏もしている。その時代の雰囲気を再現しつつ、浅野のギター・ソロが『LYENA(レナ)』のまろやかなヴァージョンを踏襲していたのが印象的だった。

 

また、『INTERMISSION GODIEGO FINAL LIVE2』に収録された名曲「Great Sea Flows」に続き、2016年には披露されなかった「PORTOPIA」も演奏される。

 

さらにアンコールでは Beautiful Name」、「Galaxy Express 999」に続き、「Celebration」が披露された。

 

いうまでもなく、「Celebration」はアルバム『西遊記』のラスト・ナンバーである。当時のコンサートではアンコールを含め、フィナーレやハイライトで演奏されることが多かった。この日の締めに相応しいナンバーだろう。

 

『西遊記』は「The Birth Of The Odyssey~Monky Magic」から始まり、「Celebration」で終わる。かくも長いゴダイゴの“THE GREAT JOURNEY”の終わりと始まりである。まるで映画『砂の器』のピアノと管弦楽のための組曲「宿命」、『ネバーエンディング・ストーリー』の「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」を聞いているかのように様々な場面や風景が思い浮かぶ。同時に彼らが何故、旅をするのか、その理由を語っているようでもあった。

 

同じ曲を度々、演奏することに批判もあるという。しかし、ミッキーは、ただ、再演しているのではないと断言する。自ら磨きをかけ、新たな輝きを付加している。懐古や郷愁ではなく、楽曲の構造や骨格を維持しながらも更新し続けているのだ。おそらく、発表時には多忙ゆえ、そのような時間はなく、心残りもあったのではないだろうか。この時期だからこそ、敢えて手を加える。それも安易な自己を模倣した再生産ではない。むしろ、古典芸能の落語の名作といわれるものと同じように、繰り返し再演することで、こなれ、練られていく。名人といわれる領域に達する。同時に単発ながらゴダイゴならではの新曲なども確実に生み落としている。正式なオリジナル・アルバムは1999年以来、リリースされていないが、いろんな意味で、ゴダイゴの新たな旅の準備が整いつつあるのではないだろうか。『西遊記』の40周年を祝いつつ、ゴダイゴが劣化、退化することなく、問題意識を共有し、絶え間ぬ創造意欲を持って、活動を継続していることを自ら祝しているかのようにも思う。区切りかもしれない。来年、2019年は“70年代-僕たちの時代”を描いたコンセプト・アルバム『OUR DECADE』のリリースから40年。そろそろ、ゴダイゴの『OUR DECADEⅡ』を聞きたくなる。実は、同コンサートには奈良橋陽子も来ていた。ゴダイゴを愛するものの多くは、彼女とのアルバムでのコラボレーションを望んでいるはずだ。40年前に提示したことを、記念すべき2019年に新たに提示してもいいのではないだろうか。彼らの新たな冒険譚の誕生を予感する。そんな期待を抱かすものがいまのゴダイゴにはあるのだ。

 

なお、 その感動をツイ―トしているが、椎名林檎、スピッツ、GLAY、いきものがかりなどのプロデューサーとして知られる亀田誠治も会場に来ていた。インスタグラムにはミッキーとのツーショットを公開しているが、Jポップ界の大御所もまるでファンのよう嬉しそうに収まっているのが印象的。ゴダイゴの種子は世代を超え、引き継がれている。
 

 

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422日(日)東京文化会館大ホール

『ゴダイゴ with premium stringschoir -THE GREAT JOURNEY 2018-』演奏曲目

 

1. Pomp And Circumstance

2. The Sun is Setting On the West

3. We’ve Got To Give The Earth A Chance

4. Kathmandu

5. Leidi Laidi

6. Holy And Bright

7. Monkey Magic

8. Gandhara

9. Piano Blue

10.Somewhere Along The Way

11. Guilty

12. Millions Of Years

13. Dead End - Love Flowers Prophecy

14. Mikuni

15. Great Sea Flows

(ENCORE)

16. PORTOPIA

17. Beautiful Name

18. Galaxy Express 999

19Celebration